第221話 好々爺
*
「さっきからなにを呆けている?」
スピネルの手を握りながら束の間の癒しを堪能しているとうしろからルイセントの呆れたような声が聞こえた。
確かに周りからみたら呆けているように見えるかもしれないけどこれは俺にとって大事な時間だ。
大事になるであろう戦いの前に娘に癒され、英気を養う。
最高じゃないか!
「ほんとにリュースティアさんは親ばかですね。」
「うるせえー。スピネルが可愛いんだからしょうがないだろ。リズだってスピネルには甘いくせに。」
ルイセントの後をついてきたリズが呆れながらも微笑ましいものでも見たような表情をする。
もしかして未来の家庭の姿でも重ねているのだろうか?
ごくり。
思わぬとこでプレッシャーを感じてしまったよ。
「私からしたらリュースティアもお姉ちゃんも、どっちもどっちだけどね。スピネルが親離れしたとき耐えられるのかしらね。」
そしてそれをさらに遠くから眺めるシズが二人を茶化す。
シズは子供が苦手だ。
嫌いではないしむしろ大好きなのだが子供との相性がども悪い。
子供の方がシズを遠巻きにしてしまうのだ。
そしてそれをシズ本人が一番気にして傷ついている。
「シズ、そんなに離れなくても大丈夫だって。」
「なっ、別に離れてなんか、、、。それに私が近くに行くのはスピネルが嫌がるでしょ。ほら、私って子供苦手だし。」
無理して明るくいうところがなんとも痛々しい。
ほんとにこいつって素直じゃないよな。
いつもは強気で馬鹿みたいに食いついてくるくせにさ。
「そんなことないって。そうだよな、スピネル?」
ったく、俺の自慢の娘は他人をしかも一緒に住んでいるお姉ちゃん的な奴の事を嫌ったりするわけないだろ。
「・・・・・嫌い、じゃない。・・・・・・好き。」
「嫌いじゃない、、、、、、私の事好きでいてくれるの? ぐすん。 スピネルぅぅー大好き!」
なにも泣くことないだろ。
スピネルが困ってる。
まぁその困りが顔も可愛いからいいけど。
スピネルがほんとにどうしようもできなくなったら助けてあげよう。
それまではこのつかの間の癒しを堪能させてもらおうか。
「ほっほっほ。いいのぅ、若さと言うやつは。」
「そうですねぇ。癒されます。・・・・・ってあんた誰だっ⁉」
ばかな。
俺の気配感知にまったく反応がなかったぞ。
こんなに簡単に背後を取られるなんて。
この爺さん、只者じゃない。
*
「ほっほっほ。そんなに警戒しなくてもいいわい。怪しいもんではないわ。おぉ、あの娘、いい足しておる。」
怪しいもんではないと言いながら目はまだ抱き合ったままのスピネルたちにくぎ付け。
しかもその目はエロじじぃのそれだった。
スピネルにそんな目を向けるとは、殺す。
「そう怖い目をするでない。減るもんでもあるまい。」
「きゃっ!」
じいさんか目を離したつもりはなかった。
だが気が付いた時には視界から消え、リズの後ろにいた。
しかもリズのお尻を触ったらしい。
完全にセクハラ爺だ。
うん、殺そう。
「ウカじぃ、悪ふざけもその辺にしてやれ。こいつらはこんなんでもこの国で有数の冒険者たちだ、ケガではすまんぞ。」
こちらの騒ぎに気付いたらしいルイセントが仲裁に入る。
その時点ではすでにリズは詠唱をはじめ、俺は風神を抜いていた。
完全に俺たち二人の中でこの爺さんは敵認定。
ケガではすまない、とは確かにその通りかもしれない。
「久しぶりじゃのう、ルイセント。相変わらず美人じゃな。しかし前からちっとも成長しとらんのう、お主の乳は。」
ブチ。
うん?
なにかが切れるような音が聞こえた気が、、、、、。
「死ね。【水の精よ 我の元に集え 彼の者に永遠の眠りを
あっ、ルイセントが切れた。
ってちょっと待て!
それ確か即死魔法だよね⁉
しかも範囲魔法!
えっ、俺たちも死ぬよ?
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