第219話 ガウ村

「なあルイセント、あれって村か?」


暑さに耐え抜くこと1時間。

前方に村らしき物が見えてきた。

この地の気候ゆえか木で作られた家はどれと窓が大きく取られていて風通しがよさそうだ。

もちろんどの家の窓も大きく開け放たれたまま。

エアコンなどないこの世界では当然なのかもしれないがいささか不用心な気がする。


「村?ああ、ガウ族だな。彼らは放浪の一族で南の大陸を転々としているんだ。会えるとは運がいい。」


さすが賢者様よく知っていらっしゃる。

それにしてもこんなくそ暑い大陸でよく放浪とかできるな。

いちいちあの家を壊して建てるんだろ?

熱中症で倒れそうだ。


「ガウ族か。あいつらガタイもよくて力もあるくせに温厚だから絶対に身を守る以外の戦闘はしねぇんだよ。つまらねぇ奴らだよな、まったく。」


「いい部族じゃん。ならちょうどいいし少し休ませてもらおう。次にいつ休めるかわかんないしさ。」


うんうん。

みんながみんなエルランドみたいな戦闘狂だったらこの世界はアルの手を借りるでもなく滅んでっから。

平和が一番。


「そうだな。彼らなら巨人についてもなにか知っているかもしれん。闇雲にこの大陸を探すよりはいいだろう。」


「そうだな。けどお礼になりそうなの持ってないや。さすがにただでって訳にはいかないよな。」


人として。

他人の優しさに付け入るようなことはしたくない。

とはいえお金もあまりないし渡せるようなお菓子もない。


あーあ、最近おかし作ってないなぁ。

俺の本職は一応パティシエなんだけどな、、、、、、。

副業で冒険者。

副業で次期領主。

副業で魔王討伐。

副業で世界を救います。


思ったんだけど副業いろいろと重くね?

気楽におかしだけを作る生活がしたい、、、。

俺の異世界生活はいったいどこから間違えたんだ?

平穏無事をモットーに生きてきたはずなのにいつの間にか生活の中で戦いの比率が多くなってる気がするには気のせいじゃないはずだ。

さっさとアルを何とかして平和な生活に戻ろう。



ガウ村という村が見えてしばらくすると門らしきものが見えてきた。

門と言っても周りが木の塀で囲まれただけの敷地に一か所だけ空白がありそこに体躯のいい男が立っているだけだ。

簡易なつくりなので移動の際の取り壊しは簡単そうだがこれは門、というか柵の意味はあるのか?


「いきなりすいません、旅の者なんですけど少し休ませてもらっていいですか?」


とりあえず勝手もわからなし門番らしき男性に話かけてみる。

温厚な部族って言ってたし問答無用で斬られるようなことはないだろ。


「:+*@#$/。"+***#$#%&!+$%"#*?」


はい、まさかの出来事。

何を話しているのかまったくわからん。

普段話している言葉は神様翻訳がかかっているから俺でも理解できるがその神様翻訳が機能していないとこを見るとこれは部族言語ってとこか?


まくしたてるようにして話す語調のせいか何か怒っているように感じてしまう。

その話し方とは別にまず見た目からして怖い。

黒く日焼けした肌に筋骨隆々な身体つき。

そして何より獲物を鋭く射抜くようなその目が怖い。

ならば俺がとるべき行動は一つ!


「ルイセント、あとは頼んだ。」


ここは人生経験が長く、かつこの部族の事も知っていたルイセントに丸投げの方式をとろう。

だって賢者でしょ?

これくらい余裕だよね。


「##? #$%&#"。&'+"#%6&$#*"&*。」


はい、余裕でしたーーー。

うっわ、その得意げな表情なんかむかつく。


「リュー、ルイの数少ない見せ場なんだ。そう怒ってやるな。」


「エル、そっか。そうだよな。この駄賢者のたまーーーーにしかない見せ場だもんな、おおらかな気持ちでいよう。」


エルランドの言葉を聞いてつい納得してしまった。

ルナとのやり取りとか過去の話聞いたらやっぱり、ね?


とか何とかを話している間にどうやら話が付いたらしく門番の男性がどこかへ去っていった。

偉い人に話でも付けにいったのだろうか?

とりあえずもう少しここで待たされそうなことだけは確かだな。

そんなことを考えながらぼーっとしていたら不意打ちにルイセントが振り返る。



「貴様ら、ずいぶんと楽しい話をしていたな?今晩あたり私は魔法の練習をするが私はだからな、間違えて二人を屠ってしまうかもしれん。貴様らも言っているようにだからな。それを知っている貴様らなら魔法が当たって死ぬようなことがあってもこのを許してくれるだろ?」




駄賢者こえー。








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