南の大陸

第218話 締まらない馬車道

「あちぃ。溶けるぅ。。。」


南の大陸に向かう馬車の中リュースティアの情けない声が響く。

4日前にメーゾルを出たリュースティア一行は南大陸の目前まで来ていた。


「あちぃって言うから暑いんだよ。リュー、ちょっとは黙れ。」


馬車の後ろに陣取ったエルランドが滝のように流れる汗をぬぐいだるそうな声をあげる。

防具は脱ぎ捨て帯剣していた相棒も横に下ろしてある。

これが天下の炎竜王かと思うと幻滅するくらいには情けない姿を晒している。


「さっき出した氷で少しは我慢しろ。」


そんなエルランドとは対照的に普段と変わらない様子なのは賢者ルイセント。

いつもと同じローブを羽織り汗の雫など一滴も見せない。

ルイセントの言う氷とは先ほどルイセントが魔法で出した氷塊のことだ。

その氷塊を馬車の中心に置きシルフの風で冷たい空気が馬車の中を通るようにしている。


「そうは言うけど暑いんだからしょうがないだろ。つかなんでエルたちがいるわけ?」


湧き出る汗をぬぐいながらリュースティアが力なく問う。

今回のメンバーに二人はいなかったはずだ。

というか今回は1人で行く予定だった。


「私たちだけではないだろう。」


「そうだぜ、気にすんな。」


全く悪びれる様子もなく二人は後ろに付く2台目の馬車を振り返る。

その2台目には置いてきたはずの者達がいるのでリュースティアとしてもなにも言えない。

というか暑すぎて口論する気力もない。


馬車の中にはリュースティア以外にエルランドとルイセントの勇者組。

問題の馬車である後続にはリズにシズ、スピネルの家族組。

シルフにウンディーネ。

以上、濃いメンバーもとい全員集合となっている。


なぜこうなったかというと出発したリュースティアとルナを追いかける形で2台目が生まれた。

一人で行くことを素直に受け入れてくれたので油断してたせいか敵じゃない彼女たちの接近に情けなくも気がつかなかった。


そして仕方がないとため息をついた時、なぜかルイセント達が馬車に乗っていた。

出発したときには乗っていなかったことは確かなのでルイセントの転移魔法かなにかだろう。

というかいくら敵じゃないにしろここまで簡単に接近を許すとさすがに自分の索敵能力に不安をおぼえる。


「気にするな。認識阻害付きの特性魔法だ、それこそ神代から存在するもの位しか見抜けない。」


そんなリュースティアの内心のため息を読んだかのようにルイセントのフォローが入る。


やっぱり女の勘っていいよねっ!


えっと、

ルノティーナはどこかって?


馬車を必死で追走している後方の土煙の中にいる。

いまだに追い付けず全力で馬を走らせている。

どうせならこのまま追い付かなければいいのに、、、。


なぜこうなったかなんて説明するまでもない。

朝の鍛練後に二度寝をしてそのまま寝過ごした。

それならば大人しく留守番していれば良いものを、諦めの悪いバカは自身の召喚獣に乗って追いかけて来やがった。

召喚獣?

シルフに加護をもらった駄馬、風太だ。

遠目で見る限り何時間も全力で走らされすでに死にそうな表情をしている。


哀れ。。。。

それがお前の主だ。






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