閑話 双子の憂鬱

「ねぇ、シズ。」


リュースティア宅の一室。

双子の部屋に重い空気が流れる。

真っ昼間にも関わらず部屋は薄暗く、その重い空気に共鳴しているようだった。


「な、なによ。そんなに真剣な表情して。」


真剣な姉とは違い妹の方は普段と変わらない。

姉のおやつをつまみ食いしたのがバレたのか、それだけが心配の種だった。


「シズはなんとも思わないの?」


抑揚のない声。

冷たい汗が背中をつたる。


「な、なにがよ!私お姉ちゃんのお菓子なんて食べてないわよ。」


はっ、つい圧に負けて言わなくてもいいことを言ってしまった。。。


「シズ!また私のおやつ食べたのね!」


「あ、あれはいつまでも取っておくお姉ちゃんが悪いのよ!時効成立であれはもうお姉ちゃんのじゃありませーん。」


重苦しい空気はどこへやら。

低レベルの争いへと降格しました。


「そんな理屈が通じるわけないでしょ!あれはリュースティアさんからもらった最後の1つだったのよ。」


「またもらえばいいじゃない?」


「またもらうなんて。そ、そんなはしたない真似出来ないわよ!」


顔を赤らめるリズ。

彼女の羞恥の基準が妹であるシズにもいまだにわからない。

平気で婚約を迫ったりしてるくせにお菓子をねだることが恥ずかしい?


「そんなに言うなら私がもらっておいてあげるわよ。」


もちろんお姉ちゃんが食べたいからだと言うようなへまはしません。

それにリュースティアならお菓子ならいくらでも作ってくれるしね。


「だ、だめよ。そうしたらリュースティアさんと話せないじゃない。」


どっちよ!

まったく、我姉ながらめんどくさいわね。

話したいなら話せばいいのに。

いつも普通に話してるじゃない。

それもかなり恐い一面出してるわよね?


「はぁー、もう好きにして。私は知らないわ。」


「もう、シズったら相変わらずなんだから。ツンツンするのもいい加減にしないと愛想付かされるわよ。」


「お姉ちゃんには関係ないわよ!」


今度はシズが赤面する番だ。

好きでツンツンしてる訳じゃない。

上手く甘えられないだけだ。


「ふーん?って違うわよ!こんなこと話そうとしてた訳じゃないの!」


「えっ違うの?じゃあ何を話すつもりだったのよ。」


まさか違うとは。

完全に墓穴を掘ったシズ。

これでバレてもいなかった罪を自ら自白してしまったことになる。


「、、、、、、じゃない。。。」


「えっ?」


「だから、、、、、、じゃない。」


「えっ、だからなによ?」


「だから!私たち最近存在感無さすぎじゃない!?婚約者よ婚約者!リュースティアさんと過ごす時間も少ないし、話しにも出てこないのよ。最近はティナやルイセントさんばっかだし、かなりのキーマンよね!?私たち何話分が空気だったと思ってるのよーーー!」


「ごめん、お姉ちゃん。後半は何を言ってるのかさっぱりわからないわ。けど最近リュースティアも忙しいみたいだし仕方ないんじゃない?婚約者だからといって常に一緒にいられるわけでもないし。」


お互いに大人だから仕方のない部分はあると思う。

だからレベルの上がった腕力でクッションを振り回すのはやめて。

家具が限界みたい。


「それはわかってるけど、、、、。それにしたってリュースティアさんはほっときすぎです!ティナやルイセントさんには構うのに。」


「まぁまぁ今はルイセントさんの話とかティナの状況の方が重大だし。。。。けど、お姉ちゃんの言い分もわかるのよねー。」


確かにシズもちょいちょい出番が少ないことを気にしてはいた。

けれどそれはどうしようもない。


「「はぁーー。」」


故に二人は重いため息をつくしかない。

双子の部屋には今日も重たい空気が充満しているのであった。



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