第211話 精霊とエルフ

「何か用かしら?と言いたいところだけど話はちゃんと聞いてたわ。そこの馬鹿エルフ、この子の話は本当よ。この子を疑うということは私を疑うことだと思いなさない。」


うん?

なんか機嫌悪くない?

確かにルナって他人に対して上からなところがあるけどさ。

なんでそんなに角が立つような言い方するのさ。

間を取り持つこっちの身にもなってほしいよ。

ルイセントもプライドが高い賢者様だしさぁ、絶対不快に思てるよ。

なんならぶち切れて冷戦に突入するかもしれない。


「馬鹿エルフ?」


あー!

もうほら!

ルイセントが怒って、、、、、ない?

いや、むしろ笑って、、、、。

ちょっ、泣いてる⁉


「エルフは冷静で感情表現が苦手な種族というのは私の勘違いだったのかしら?」


おいこら、煽るんじゃない。


「ああ、確かにあなたは光の精霊だ。再びその姿をこの目に移すことができるとは。光の精霊、古の大地の女神。」


ん?

もしかしてルイセントってルナと会った事あるのか?

まぁ記憶を引き継ぐ転生をしてるならそも可能性もなくはないけど。

ルナの方は間違いなく覚えていないだろうし仮に覚えていたとしても今のルイセントとは姿かたちが違う。

わかるわけないか。


「光の精霊、光の精霊うるさいわ。今の私にはルナって名前があるの。わかったらそのうざったらしい表情を何とかしなさい、馬鹿エルフ。」


うっわ、きつ。

もしかしてルナってエルフきらいなのかな。

どうでもいいけどそろそろ俺の存在思い出してほしいな。

さっきから空気感はんぱないし突っ込むに突っ込めない。


「あのー、そろそろいいか?とりあえずルナはまずその喧嘩腰の態度をやめてくれ。ルイセント、、、お前は鏡見てこい。」




「なるほど、貴様の話は本当のようだ。まさか再びこの目でこのお方を見ることができるとは。」


一度洗面所で顔を洗い気持ちを落ち着かせてきたルイセントが賢者様らしく言うがもう遅い。

醜態をさらし終わった後では威厳も何もない。


「ルナは俺の命の恩人なんだ。今は利害の一致でルナとは契約してもらってる。それよりもルイセントはルナのこと知ってるのか?」


「私はこんな馬鹿エルフ知らないわ。」


だーかーらー!

喧嘩を売らない!


「ああ、忘れもしない。かつて神々が支配していた世界であれほど気高く美しい存在を忘れるものか。それに我々エルフは精霊の子孫とも言われている。」


「精霊の子孫、、、?まさかルナ、お前、、、、「ちっがーーう!!!」」


おっと、ずいぶん食い気味に否定してきたな。

食い気味に否定するってかなり疑わしいぞ?


「我々エルフの里に口伝でしか伝わっていないことのだ、本当のことはわからないがエルフが精霊の血を引いているのは間違いない。」


ホントのことが分かんないのに何で断言できるわけ?

というかルイセントって今エルフだけど当時は違うんだよなぁ。

いろんな種族の秘密を知ってるって結構ずるチートな気がする。


「えーっと、賢者さんはこう言ってるけど弁解があるならどうぞ。」


「ちょっと、そいつ賢者だったの?ってことは魂の引継ぎをしてるのかしら。」


「魂は知らんけど魔法とか記憶の一部は引き継げるらしいぞ。だから過去の賢者としてルナと会ったんじゃないの?それよりエルフの先祖さん、弁明をどうぞ。」


「誰がエルフの先祖よ。つまりこの馬鹿エルフは、、、、。はぁ馬鹿ゲリュオンってことじゃないの。益々嫌気がさしたわ。」


ゲリュオン?

昔のルイセントの名前か?

てかやっぱり知り合いじゃん。


「ルナ様!覚えていただいていたとは光栄です。」


もー、ほら。

またルイセントの表情が崩壊しちゃうからささと次いこう。

はい、エルフの件説明してください。


「わかったわよ。ちゃんと説明してあげる、っていってもそんなに話すことはないけどね。神代の時代に死にそうな男がいた。だから私はそいつに自分の血を分け助けてあげた。以上。」


「おい。」


いくらなんでも簡潔すぎるだろ。

血を分けただけでエルフになるとかあり?


「うるさいわね。けど実際そうなんだから仕方ないじゃない。血を分けた相手はその体に精霊の力を宿し魔法を使えるようになったの。それから代を重ねるごとに魔法に秀でたエルフという種族へと変化したってわけ。他にも血を分けたことはあったけどこうなったのは後にも先にもこの一例だけ。だから私にだってわからないのよ。」


ふーん、だから先祖っていうのもあながち間違っていないってことか。

まぁヴィルムの話を聞いたあとだしな、高位の存在の血は毒にも薬にもなるって言うのは理解できる。


「でもそれだとただのエルフの始祖だよな。敬うのはわかるけどさ、なんでルイセントは顔面崩壊するほど感激してんの?」


転生していろんな種族になるならなおさら敬う気持ちは薄いはずだ。

それに世界の理を知っているルイセントが何かを崇拝しているって言うのは違和感

がありすぎる。


「、、、、、、が、、だったからよ。」


「なに、なんだって?」


「だ・か・ら!私が血を分けた相手が昔のこいつなの!!」







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