第209話 我が家の日常

「来たぞ。と言いたいところだがいつもこうなのか?」


約束通り次の日に屋敷を訪れたルイセントの第一声がそれだった。

まぁ無理もない。

昨日ルイセントたちが来たときは問題児たちがいなかったからな。

今はそれこそ上へ下への大騒ぎ。


理由?

おやつに出したケーキの取り合い。

食欲を優先させたうちの子たちらしい理由だよね。

なんかヒートアップしすぎてストレージからおかわりを取り出すタイミングを失ったし。


「いつもはもっと穏やかだって言いたいとこだけど大体こんな感じだな。この2人はもう知っていると思うけどリズとシズ。フローウィス伯爵家の令嬢で名目上俺の婚約者ってことになってる。」


ルイセントに表面を取り繕っても意味ないしね。

リズたちは面識はあるらしいけど礼儀として一応紹介しておく。

元パティシエだろうと社会人だ。

ビジネスマナーにはそれなりの心得はある。


「そこは名目上じゃなくて名実ともに、とか愛する奥さんとか言ってほしいですね。ルイセント様、お久ぶりです。」


「お姉ちゃん!ルイセント様の前でなに言ってるよ。すいません、お姉ちゃんなりの冗談なんです。」


「あら?私は真面目よ。シズは愛する奥さんって言われたくないの?」


「わ、私は別に、、、、。」


「妹をからかうのはその辺にしてやれ。二人とも元気そうで何よりだ。最後にあったのは王城で開かれたパーティ以来か?」


よかった。

どうやってこの流れを終わらせるか考えてたんだけど下手に介入すると俺に返ってきそうだったから手出せなかったんだよ。

そもそもルイセントは婚約者云々には興味なさそうだし。

さすが賢者様、俗離れしてらっしゃる。


「それよりもお前たち、どこまでいった?双子だとやはりまとめてなのか?」


俗物!!!




「とりあえず話を進めるぞ。あれ?そう言えばエルは一緒じゃないのか?」


なんかいろいろインパクトあってすっかり忘れてた。

いやに静かだな、って思ってたら戦闘マニアがいなかったよ。

まさか昨日の今日でなにかあったなんて言わないよな?


「ああ、妹と話があるとか言っていた。どこかで落ち合うつもりらしい。ルノティーナだってもう家を出ているだろう?」


「「「、、、、、、、。」」」


なるほど。

そういうことですか。


スー、ハー。


「誰かあのバカルイセント起こしてこい。」


あいつ何が今日は疲れたからお昼寝してくるわ、だよ。

完全にエルと会うこと忘れてないか?

あーあ、こんな妹を持ったエルの苦労がうかがえるな。

まぁあんな兄を持ったルノティーナもルノティーナだけど。

持ちつ持たれつの関係ってやつか。


リズがルノティーナの部屋に行ってから数分後、上の階から悲鳴、けたまし物音。

そして階段を駆け下りてくる音が聞こえた。

どうやらほんとに忘れてたらしい。


「やばっ!完全に忘れてた!お兄ちゃん絶対怒ってる。あっ、ルイセントさん久しぶりー、今急いでるから!」


そして嵐のように去っていった。


「、、、、、、。いつもこうなのか?」


「すいませんでした。」



我が家の嵐はしっかりとその爪痕を残していった。

髪を逆立たせテーブルクロスを頭からかぶったルイセント、という形で。





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