第207話 束の間のヒトトキ

「ごちそうさまでした。」



シルフが文句を言うからちゃんとしたご飯を作る羽目になった。

少し帰るのが遅くなっただけじゃないか。

まったく。

焼き鳥でも一応魔王を倒したんだから少しくらい労ってほしい。


魔王倒して何事もなく夕飯の下ごしらするのなんてたぶん俺くらいだぞ?


「今日もおいしかったです。片付けは私とシズがやりますね。」


前までは片付けまで自分でやっていたのだがここ最近は双子がやってくれるようになった。

本人曰く花嫁修業らしい。

どうせなら料理のレパートリーを増やしてくれるとありがたいんだがどうやら諦めたらしい。

俺としても食事で死ぬのだけは嫌なので無理強いはしない。


精霊組&ルノティーナが片付けに携わらないのはもちろんお皿を割るからだ。

スピネルは準備を手伝ってくれるから片付けはあまりやらない。

今は食後の読書中。

本当に本読むの好きだよね。


「スピネル、悪いけどシルフたちとお風呂に入ってくれないか?」


「・・・リューも?」


それはちょっと。

幼女趣味ロリコン認定されてしまいそうなので遠慮したい。

何も思わないけどさ、周りの視線ってあるじゃん?


「ごめんな、俺はルノティーナに話があるんだ。シルフが完全に寝ちゃう前に連れてってくれ。」


「・・・・エッチ?」


「ちげーよ!!」


まったく、どこで覚えてくるやら。

そういうのが気になる歳なのか?

だけど安心してくれ、ルノティーナ脳筋相手に発情するほど飢えてない。


「ルノティーナ、話がある。俺の部屋に来てくれないか?」


「エッチ?」


お前もか、、、、。

というかスピネルもお前が原因じゃないだろうな?




「もう、リューにぃってばそうなら早く言ってくれればいいのに。けど、その、、、、優しくしてね?」


部屋に入って早々、衣擦れの音に反応し振り返ると案の定というか、なんというか。

ルノティーナが服を脱ぎ始めていた。

幸いまだ上着を脱いだだけ、被害はない。


「いや、勘違いすんな。まじでそっちには興味ないから。話があるって言ったろ。」


「ちょっと!目の前でこんなかわいい美女がウェルカムしてるんだからそこは男を見せなさいよ。」


誰がかわいい美人だ。

見た目だけで抱けるほどルノティーナとの付き合いは浅くないんだよ。


「男を見せてるから選択外なんだろ。それよりも真面目な話だ。」


いつまでもルノティーナのおふざけに付き合っているわけにはいかない。

声のトーンを落とし、なるべく静かに話を切り替える。


ルノティーナもリュースティアの雰囲気が変わったことを察しておちょくるのをやめたようだ。

その表情もSランク冒険者のものらしく引き締まる。


「ヴィルムについて、聞いたよ。昔何があったかも、その血にかけられた呪いについても全部聞いた。」


「そっか、、、リューにぃ聞いたんだ。」


彼女から発せられた声は今までに聞いたどんな声よりも落ち着いていた。

この世に生まれた瞬間から定められていた運命。

十何年かけて受け入れてきた自らの死。

それは抗うことをやめた声だった。




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