第198話 規格外

状況は理解した。

かといって受け入れられはしないけど。

俺たち、というか俺に世界の命運がかかってるとか言いだしそうで怖いよねー。

それだけはマジ勘弁。

荷が重すぎる。


つかさー、これって下手したら厄災として俺も撲滅対象にならないか?

どちらかというとそっちの方が可能性が高そうだ。


「あー、つまりルイセントは俺たちのせいで世界が滅ぶと思ってるってことでいい?そんで俺がアルの正体についてなにか知っていると思った。それを確かめるためにエルランドに便乗してここまできた。話の流れとしてはこんな感じか?」


まずは1つずつ事実確認しないとね。

お互いに思い違いとかあるかもしれないし。

可能性は低いがルイセントが見た人物が俺とは限らないわけで。


「ああ。だが一番の目的は貴様の人となりを知りたかった。私が見た未来で貴様はアルフリックと戦っていたが貴様が善人とは限らないからな。それこそ世界の覇権を奪い合っていただけかもしれない。」


なるほどねー。

その考えはなかったわ。

終焉に向かうだけの世界の支配権とかいらないよね、普通。

どうせならきれいなお姉さんがたくさんいるお店の覇権がほしい。


「で、ルイセントはどう見たん?俺の事。」


そんなやましい考えは置いといて。

まずはルイセントが敵になるか否かが重要だよね。

戦っても勝てなくはないと思うけど“始まりの魔法”は厄介だし知識や経験が豊富のルイセントは味方の方が心強い。


「潔がいいな。俺は悪人じゃないとは言わないのか?」


「いや、だって俺が今から何言ったって遅いだろ。ルイセントが俺を観察する時間は十分にあったんだし。つかエルとの戦闘中もわざわざ気配消して近距離からしっかりと見てたしな。」


ちょい賢者さんが面白そうにしているのが引っかかるが気にしないでおこう。

それに今までスルーしてたけどエルとの闘いの最中にすげー見てたもんね。

気配消してたから言っていいものなのか迷ってたんだ。

エルは戦いにのめり込みすぎて気が付いていないみたいだったし。

理由が分かってよかったよ。


「・・・・・・。貴様、自分がおかしいことを言っていることに気づいているか?」


「ん、何が?」


あれー?

さっきまで含み笑いで面白そうにしてたのに今度は頭を抱えこんじゃった。

賢者って考えること多くて大変そうだよね。


「貴様は当然のように観察していた私に気づいていた、そう言っているんだそ?」


ん?

いくら気配を消してたって空間の揺らぎとかわずかな呼吸音とかでわかるだろ?

上級者ならできて当然の索敵能力だと思うんだけど。

それに今回はマップチートは使ってないぞ。


「それが?Aランク以上なら普通だろ。エルだってあそこまで頭に血が上ってなかったら気が付いただろうし。」


えーっと。

なんとなくオチが見えた気がする。

ルイセントの顔がすべてを物語っております。


「はぁ、なるほどな。エルランドがぼやいていた気持ちがよく分かった。貴様という人間がいかに世間知らずかがな。」



はい。

自分が普通にできて当たり前だと思っていた事が実はすごい事だったと知った時、周りはすごいともてはやしますが自分では何がすごいのかわかりません。

なんせ自分では当たり前のことなのですからね。

でも一番まずいのはなにがまずいのかもわからないことだと思います。



「えーっと、俺なにかまずいことした?」


ずっと下を向いたままの賢者さん。

心なしか肩が震えています。

笑いなのか、怒りなのか、判断が難しいところですね。

まぁ、どっちにしろ俺にとっては変わりのない結末をむかえそうです。


「一回死んで常識を学んでから生まれなおして来い。」


正解は両方でした。

額に怒りマークを浮かべながら満面の笑みで言いました。


一回死ぬとか俺にとっては笑えない冗談だよね。

またあの神様に会うとか御免だし。











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