第195話 ローズティー

とりあえずルイセントにいろんな疑問をぶつけてみた。

神代の事とか。

精霊の事とか。

他種族の事とか。

歴史云々だ。


意外とこの世界の歴史も深かったが特に興味を惹かれるほどでもなかった。

というのも、ルイセントが語ってくれた内容は普通に歴史書に乗っていそうなものばかり。

賢者ならではのお話はなかった。

歴史の闇、とか面白そうだったのに。

けどさっきからルイセントがを話したそうにしては思い直したように口を閉じる。

といった行動を繰り返しているのが気になる。

もしかして歴史の裏でも話してくれんのか?

せっかくならアルが世界を滅ぼしたあたりの話しとか古の魔王の話しとか聞きたいよね。

昔の事過ぎて今じゃほとんど資料は残っていないらしいし。



「ほら。」


話が長くなりそうだったので、キリのいいタイミングで飲み物のおかわりとお菓子の補充をしておく。

お菓子は無難にクッキーとチョコレート。

ストレージにあるカカオが少なくなってきたら今度時間を見つけて狩りにいこう。

このカカオもどきはヴァンの城からの帰り道で寄った村で見つけたものだ。

村の人に聞いたところただの雑草と変わらない扱いだったので不自然にならない程度に狩ってたのだ。

村人からは変人認定されたが気にしたら負けだと思う。

チョコレートはうまいんだよ。

久々のチョコでテンションが上がり、ヴァンの城から戻った後はチョコレートものばかり作ってた。

おかげでお店のラインナップも充実したし文句なし。


「あれ?もしかして苦手だった?」


チョコとの出会いについて回想をしていたのだがルイセントはなににも手を付けていなかった。

おかしいな。

今回は苦手そうにしていた珈琲じゃないのに。


「いや、初めて見るのでな。これはお茶、なのか?」


若干、戸惑った様子で目の前のカップを見つめ、中に入っている花びらを添えてあったスプーンでつつくルイセント。

しまいには一枚手に取りだしてまじまじと観察している。

はたから見たらファミレスにいる子供だ。

そのうちお母さんに怒られるよ?

意外とかわいいところもある賢者さんなのだがその可愛さを理解できるのはきっとこの世界で俺だけだろう。

共有できない悲しみがここに、、、、。


「ローズティーっていうんだけど食用バラをお茶にしてんだよ。王都にはないのか?」


そう、今回ルイセントに出したのはローズティー。

俺はあんまり良さがわからないんだけど女性受けがいいから出してみた。

どうやら味というより花びらが浮いている、というところが女性の琴線に触れたらしい。

今度バラ風呂でもやってみようかな。

けど見た目だけじゃなくて、リラックス効果とかあるし体にもいいんだよ?


「見たことはないな。薬草などをすりつぶしてお茶に混ぜる薬茶なら知っているがそれとは違うようだ。薬茶はこんなにも透明ではなかったし、いい香りもしなかった。何よりもこちらの方が何百倍もおいしい。」


お口にあったようで何よりだ。

それよりも薬茶とかいう方が気になりすぎる。

罰ゲーム?的なやつだと脳内が警報を鳴らしている。

というかいつかのお仕置きスムージーが記憶から思い起こされた。

勝手な想像だがたぶん同じモノのような気がする。


「今回使っている花はリラックス効果と安眠効果があるから寝る前に飲むのがおすすめ。これでだいぶ落ち着いたろ?最悪の部分、聞くよ。」


ルイセントは自分が何かを話そうとしていたことを気が付かれていないと思っていたらしく驚いている。

いや、あんなにわかりやすかったら誰でも気が付くって。

賢者さんの無表情スキルはまだまだだな。

持ってるのか知らんけど。






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