第193話 始まりの魔法と賢者
*
パク。
「・・・・・・・・。」
パクパク。
パクパクパクパク。
一口食べ。
二口食べ。
三口と続く。
一切しゃべらない。
説明する気があるんだろうか?と疑いたくなるほど無言でお菓子を食べ続ける賢者さん。
いや、まあいんだけどね。
パティシエとしては目の前でおいしそうに?食べてくれるのはすごいうれしいんだけどね。
優先順位ってものがあると思うんだ。
「説明する気になりました?」
ルイセントがお菓子を食べ終え、一息ついたタイミングで声をかける。
するとなぜか驚かれた。
俺がいることも忘れてお菓子に熱中してたのか?
で、今声をかけられて我に返ったと。
賢者さん?
「うぉほん!では本題に入る。けぇきは大変美味だった。」
取りつくろうように大きな咳ばらいをし、本題に入ろうとするルイセント。
本人は取り繕えているつもりかもしれないが長い耳が真っ赤だ。
それにさっきから傾けているマグはずっと前に空になっている。
賢者=冷静沈着みたいなイメージがあったのだがここは認識を改めておこう。
案外これがルイセントの素かもしれないしね。
※
「
いや、予想はしてたけどさ。
それはさすがに
「もちろん問答無用で作用するわけではない。」
リュースティアの思考を読んだのかルイセントが追加説明を入れてきた。
いつの間にか最初に会った時のルイセントに戻ってる。
耳も赤くない。
なんかちょっと残念だ。
「まずはレベルだ。レベル差がありすぎるとレジストされる可能性が高い。複雑な強制もそうだ。わかりやすく言えば静止はたやすいが動かすことは難しいということだな。当然ながら大量の魔力と精密な魔法構築の技術が必要になってくる。」
なるほど。
つまり難易度高め、普通の人には使えない理由はここにあるってことか。
ルイセントに言われて思い返してみると、確かに彼女が使ってた
けど静止以外も難しいってだけでできなくはないってことだよな。
まぁただでさえ激ムズの魔法らしいかわからんけど。
「あとは同じ相手に使用すればするだけ効果は薄くなる。強制される状況に慣れることが原因だな。」
「それってあんま関係なくね?そもそも敵ならだいたい初見だろ。それこそ何回も戦う場面なんてなさそうだし。」
わざわざ身内に魔法をかける意味はないし、デメリットか?
そんな俺の疑問への答えは一言。
「エルランドのような奴がいるからな。」
納得。
*
「とりあえず
とりあえず
残るはたかが数百歳のエルフが“始まりの魔法”を使える理由だ。
これが分かれば俺も“始まりの魔法”が使えるようになるかもしれない。
創造スキルがあれば必要ないとも思うが使える手は多いにこしたことはない。
「それは私が賢者だからだ。」
マグに新しく淹れてあげた珈琲をすすりながら。
あっ、少し顔をしかめた。
やっぱり珈琲にはなじみがないんだね。
無理してブラックで飲まなくてもいいのに。
ってそれは置いといて。
賢者だから?
ちゃんと説明してください。
「賢者はその名の通り賢い者の事だ。ゆえに賢者はより賢く、より狡猾に、より強く、より優しく。いつかはるかなる高みに届くよう転生を繰り返す。」
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