第192話 パティシエの誇り

さてと、俺の無駄な悪あがきも考えている段階で釘を刺されてしまったしそろそろ襟元を正すか。

真面目には聞く、と思う。

ルイセントの望みをかなえられるとは限らないが。

というかめんどそうなら断る。

あくまで俺ができる範囲&ついでにできる事象に限るからな。


よし、そのスタンスでいこう。

バッチコーイ、、、、、。

その前に正座やめていい?


「ああ、楽にしてくれ。だが森の中というのもなんだしな、場所を移そう。」


ええ、なんせ戦闘跡地ですから。

火は出ていないとは言え辺り一面焼き野原。

かろうじて立ってる木が数本。

確かに大事な話をするには不適切な場所だ。


というかルイセントがすでに転移魔法らしきものの構築を初めているし、どっか彼女の行きつけとかに連れて行ってくれるのだろう。

もしかしたらエルフの自治領とかかな?

それならぜひとも行ってみたい。


なんせこの世界に来てからいまだに2都市しか見ていない。

しかも行ったのは辺境の地だけ。

メウ王国の王都にすら行ったことないんだよね。

話はいろいろと聞いたけどさ。


暇ができたら世界一周とかやってみよう。

資金は心元ないがまぁ何とかなる。

ついでと言っては何だがお菓子をこの世界にもっと広めるのもありかもしれない。

メーゾルではだいぶ食べられるようになってきたけどまだまだ世間一般には程遠いしな。


とかまぁそんなことを妄想していたらルイセントととも青い光に包まれた。

そういえばルイセントって詠唱してないよな?

魔法名すら言っていないし。

そもそもこの青い光ってなに?

こっちの世界に来て魔法にはだいぶ慣れたが魔法発同時にこんな淡い青色を放つものなんて見たことがない。

大体が白で多くは暖色だった。


うーん、これはさすがに鈍い俺でも気が付く。

ルイセントってなんかおかしい。



2人を覆っていた青い光が消えた。

転移が終わったみたいだ。

体感でわずか数コンマ、ってとこか?

魔法の移動だから正確な事はわからないがそう遠くではないはずだ。


エルフの自治領って意外と近いんだな。

ならこんど遊びにでも行ってみよう。


そんなことを思いながら周囲を見渡す。

期待を込めて。

初めて見るであろう景色にわくわくしながら。



「ここがエルフの自治領、、、、、?ってうちじゃねぇか!!」


我が家のリビングでした。

はい。


「エルフの自治領?人族が簡単に入れるわけないだろう。それに連れて行くなど一言も言っていない。」


ですよねー。

期待した俺がバカでした。

でもさ、少しくらい夢を見させてよ。。。。


「まぁいいや。次の機会にでも連れて行ってもらえば。さっ、強制について話してくれ。」


もうこうなりゃさっさと終わらせよう。

それっきゃない。


「そう急くな。まずは客人に茶を出すのが礼儀というものだろう。ついでにお茶菓子もな。」


そんなことを偉そうに言いながらソファーに腰掛ける賢者様。

女性って甘いもの好きだよねー。

ここに来た目的ってお菓子でしょ?


というかここに連れてきたのあんたでしょうが。

確かにここは俺ん家だけどこの場合の客って俺じゃね?

とか思ったけど反論するのもめんどくさい。

それにお茶もお菓子もトレージに入ってるし出せばいいだけだから大した手間でもないしな。




「はいはい、賢者様の仰せのままに。どーぞ。最近は新しいもの作ってないからガトーショコラとレーズンサンドな。」


数分リュースティアが席を外したと思ったらそんなことを言いつつ。お皿を二枚もって来た。

一つにはガトーショコラ、もう一つにはお茶が乗っている。


なんだかんだめんどくさそうにしながらもリュースティアが持て来たガトーショコラにはバニラアイスが乗っている。

しかもクネルで。

さらに横にはシャンティとミントらしき葉っぱ。

さらにフランボワーズらしきソース。

短時間で仕上げたとは思えないほど豪華だ。

簡単に言えばインスタ映え間違いなし、といったところか。

堅物っぽいルイセントですら目を奪われている。


いくら気が進まない相手だろうと商品を出すである以上手を抜けない。

それがパティシエの誇りなのだから。




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