第190話 逃げられない相手
*
よし。
言うことは言った。
あとは逃げるだけ。
幸いここは森だ、身を隠す場所ならたくさんある。
エルとの闘いで消耗した魔力も回復した。
傷はまだ癒えてはいないがこの程度なら何の支障もない。
うん、いけるな。
それに最悪の場合は転移魔法で逃げよう。
転移先には限りがあるのが心配だな。
そうすると影移動の方がいいかな?
うーん。
けどあれってまだちゃんと狙った場所に出れないんだよな。
下手したら全く知らない土地に出る。
それでもここから、この人から逃げられるなら問題ない、かな?
まぁ、聖域に避難したっていいしな。
今の俺にはルナがいるからここからでも道をつなげるはずだ。
逃げる方法も避難場所も選びたい放題。
豊富にそろっている。
これはつまり俺がルイセントから逃げられないはずがないのだ。
そう思っていた。
その一言を聞くまでは。
「【何もするな】」
その言葉を発する瞬間、ルイセントの放つ空気が変わった。
全身から放たれるプレッシャー。
美しさに変わりはない。
ただそこに圧倒的な強さが加わった。
(あ、あれ?動けない。)
ルイセントのプレッシャーに飲まれることは回避できたはずだ。
なのに体が動かない。
逃げるにも魔法を使うにも指の一本、顔のすじ一本たりとも動かせない。
(なら無詠唱の魔法ならどうだ。)
なにも魔法を使うのに声を発する必要はない。
無詠唱でも魔力を練り上げ、脳内で構築すれば問題なく魔法は使える。
現に今まではそうしていたじゃないか。
そんなことに今更気が付くとかまだエルランドとの闘いが抜けてないのかもしれない。
あいつにつられてる。
「無駄な事はするな。いまお前は何もできないのだからな。」
リュースティアがこれからやろうとしていることを察したのかルイセントがそんなことを言ってきた。
だがそれがどうした?とばかりにガン無視を決め込み魔法を使おうと試みる。
すでに充分すぎる魔力は練りあがっており、構築も完璧だ。
いつでも放てる。
・・・・・・・。
(発動、しない?)
結果、リュースティアの魔法は発動しなかった。
「これで少しは話を聞く気になったか?【もういい】」
そしてそれは始まった時と同じように突然終わりを告げた。
ルイセントから放たれていたプレッシャーが消える。
それと同時にリュースティアの拘束も解かれる。
再び体に自由が戻ってきた。
「俺になにしたわけ?賢者様の魔法ってやつかよ。」
逃げるという望みが叶わなかったリュースティアはふてくされている。
だが魔法を使われたという感覚はなかったのも事実だ。
それに気が付かなかったにしろこうも一方的な魔法があっていいものだろうか。
相手の動きを封じ、魔法まで使えなくするなんて反則もいいとこ。
そんなの戦ったら絶対に勝てない。
「自分の魔法を説明するのは好まないがお前は特別だ、仕方ない。先ほどエルランドとお前にかけたのは始まりの魔法の1つ、”
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