第182話 暗雲の予感

「いいなぁ、、、。ねぇリューにぃ、私も欲しい!」


うわー、いい空気だったのに。

やっぱり空気読めないのな。


「いや、お前に創るわけないだろ。創ってほしかったら金払え。てかまず自分で作った借金返せ。」


「ちょっ、スピネルと扱いが違すぎない⁉それに借金借金ってあれはもう領主様が立て替えてくれたじゃない。」


「なにを当たり前の事言ってんだ?かわいいかわいい俺の愛娘となんの役にも立たない居候の脳筋バカ、扱いが同じなわけないだろ。それにたしかに残ってた借金はラウスさんが立て替えてくれたけどその前に俺が立て替えてるの忘れるな。しかもラウスさんは俺のために払ってくれたんだからな?」


忘れてもらっては困る。

確かに借金は俺がラウスさんの養子になることによってチャラになった。

商業ギルドにも手をまわしてくれたおかげでお店も営業停止が明ければ通常通りに営業ができる。

一見するとすべてが丸く収まっているように見えるが大事な事が一つ。

俺が払った分のお金、返ってきてないよ?


「うっ、確かにそうだけど、そうだけど!私だってリューにぃの婚約者なのよ!夫婦はやっぱり共同私財じゃない?」


何を偉そうに。

そんなんただの借金の踏み倒しじゃないか。

それにそもそもの前提が間違っている。


「なんか勘違いしてるようだから言っておくけど、俺はお前と婚約した覚えないぞ?」


「、、、、、え?」


「なに驚いてんだよ。ルノティーナが一人で騒いでただけで俺は一回も承諾なんてしてないぞ。」


「、、、、ほんとに?」


「ホントに。」


「冗談じゃなくて?」


「本気だ。」


「かーらーのー?」


「かーらーのー、じゃねえよ。お前の中でいつどこのタイミングで俺がお前と婚約する流れになったんだ。」


「そんな、、、、。ひどい!あんなことしておきながら、私はしょせん遊びだったのね。」


「バカ!なにわけわかんないこと言ってんだ。スピネルが変な誤解するだろ。それにあんなことってなんだあんなことって⁉」


「何って、、、。一昨日、あんなになるまで激しく攻めるんだもの。」


「一昨日?、、、、ってそれただの模擬戦じゃねぇか!なにあたかも既成事実みたいに言ってんだよ!それにその模擬戦もお前が土下座してまで頼みこんでくるから仕方なく付き合ったやつだろ。」


「私にささやいてくれた愛の言葉も偽りだったのね、、、、。」


「それ夢の中ってオチだろ。」


「、、、、、、。」


「、、、、、、。」


「ちっ、思ってたよりガードが堅いわね。事実をうやむやに作戦は失敗か。こうなったら正妻たちの手を借りるしかないわ。」


「全部聞こえてるから。はぁ、しょうもないことにばっか頭使いやがって。つかお前、まさかとは思うけどその勘違い言いふらしてたりしないよな?」


ったく、こんなしょうもないことにばっか知恵を働かせるような奴と誰が婚約するんだよ。

黙ってれば見た目はそこそこタイプなんだよなぁ。

あとアクティブだし。

ただこんな後始末のことばかり心配しなきゃいけないような嫁は嫌だな。

借金が増えていろんな人に謝っている未来しか思い浮かばない。


「うん、いくら私だってそんなすぐにみんなに言ったりしないわよ。それにこの辺りには知り合いも多くないしね。」


あー、そういえばルノティーナはもともと王都から来てたんだっけ。

生まれた町とかも友達の話とかも特に聞いた事ないし、俺って意外とルノティーナの事知らないかも。


「じゃあいっか。それよりももう変な事言うなよ?」


「それは約束しかねるわね。、、、あっ!」


おい、そこはきちんと約束しろよ。

ってなに?

その感じ嫌な予感しかしないんだけど。


「な、なんだよ、急にでかい声出してんじゃねえよ。」



「私お兄ちゃんに手紙でリューにぃと婚約したって書いちゃった!」


「・・・・・は?」









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