閑話 道化師の仮面 1

「ふぁーー。リューっち次のげーむはぁ?」


リュースティアが自室で作業をしているとマルスがノックもせずにそんなことを言いながら部屋に入ってきた。

作業に集中しているリュースティアはマルスの入室に気が付かない。


「ねぇってばぁ!」


「うわっ!急になんだよ。部屋に入るなら声くらいかけろよな。」


「ちゃんと声はかけたよぉ?それよりもリューっち、今創ってるのってもしかして。」


なんだよ、リューっちって。

変な呼び名付けんな。

にしてもそんなキラキラした目されてもなぁ。

こいつホントにただのガキなんだよな。

いまだに魔族九鬼門の一人とか信じられん。

確かに悪い奴ではあるんだけど純粋な悪?無邪気?だから恨むに恨めん。


「ねぇ、ボーっとしてないでどうなのぉ?それってあれでしょ、アレ!」


「悪い悪い。そっ、これが前に話してたMMORPG(簡易版)だ。これに関しては俺もそんなに詳しいわけじゃないからなんかあったらその都度改良するよ。」


そう、アレとはゲームの行き着く先。

みんな大好きMMORPGである。

もっともリュースティアの記憶&知識を元にしているので完成度はそう高くない。

だがこの世界では画期的であることは疑いようがない。

現に実物を手渡されたマルスは説明を聞くうち目を見開いたまま硬直してしまった。

それほど衝撃的だったんだろう、って思うことにする。


「おーい、大丈夫か?とりあえず説明はこんなもんかな。あとはやって覚えてくれ。」


「うわぁ、うわぁ!すごいねぇ、ほんとに。僕びっくりしたよぉ。こんなモノがまだこの世界にはあったんだねぇ。」


この世界にってところは少々訂正を入れたいが。

言ったところでどうなるわけでもないし別にいいか?

それにしても、、、。


「なぁ、マルスって結局何者なんだ?そもそもお前、なんでアルのってか魔王たちについてたわけ?確かに魔族で、長命で、腹黒いし性格歪んでそうだけどそんなに極悪非道ってわけでもないし。全部見たわけじゃないから、知らない一面もあるんだろうけど、他の魔族とは違う気がすんだよ。って言ってもピンクモフモフとピ○○ュ○、ロイスくらいしか他の魔族なんて知らないけどな。」


ふと思いついたことをそのまま口にした。

前から疑問だったんだけどこの際だし、聞いてみたいと思った。

この先こいつとゆっくり話せる機会なんてあるかわかんないからな。

まぁ一番の理由はたぶんマルスのことをちゃんと知りたいんだと思う。

利害関係の一致した関係。

確かにそれは安全な距離だと思う。

その距離を俺が勝手に縮めようとしている。

俺がマルスを知りたいから。

ただそれだけだ。


「なぁに?そんなに僕の事が知りたいのぉ?僕は君も知っている通り、ただの道化。おもしろ可笑しくこの世界を生きているだけなんだよ?だから必要なのは笑いだけ、そこには僕っていう個すら必要ないんだぁ。だから僕は死ぬまで道化ピエロを演じる。それ以外の何者でもないよ。」


ほら、まただ。

またそういう顔をする。

笑顔の合間に見せる悲しそうな瞳。

きっとそれが道化の仮面がはがれた一瞬。

きっとそれが本当のマルス。


だけど俺にはまだ見えない。








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