第177話 白熱の戦い

「とりゃぁーーー!これでどうだぁ!?」


マルスから必死の反撃が繰り出される。

自らの敗北は避けられない事を察したのか、一矢報いるかのような捨て身の攻撃だ。

ダメージ覚悟で相手の懐へと入り込む。

相手にたどり着くのが先か、HPが切れるのが先か。

そしてついに相手の懐へたどり着き、その無防備な腹部へと渾身の一撃が繰り出される。

マルス渾身の一撃は傍目には相手へのクリーンヒットかのように見えた。


だがしかし、現実派甘くはない。


「甘い!そんな捨て身の攻撃を受けてやるほどこの戦いは甘くない!」


リュースティアだった。

マルスの捨て身の攻撃を読んでいたのかカウンターを仕掛ける。

どうやら懐へマルスを入れたのも作戦の内だったらしい。

誘いこまれたなどと露ほどにも考えていなかったマルスはリュースティアのカウンター攻撃をもろにくらった。

鈍い衝撃音とともにじわりと広がっていく痛み。

ただでさえ削られていたHPがみるみるうちに減っていき、ついには0になる。


そして目の前が真っ暗になった。。。




「んー悔しいなぁ、なんで勝てないんだろぉ。ねっ、もう一回!」


ゲームのコントローラーを投げ出す。

もちろん本気で投げたりはしない。

壊れない程度で、だ。


「ゲーム初心者にはまだまだ負けねーよ。こちとら何十年の経験があるからな。」


そしてそんなマルスとは反対に得意そうなリュースティアはコントローラーをしっかりと握りしめたままだ。


そして両者の差はゲーム画面にも表れていた。

マルスの真っ暗になったゲーム画面は機械的な流れのままコンティニュー画面へと戻る。

一方、勝者であるリュースティアの画面ではいまだ勝利のパレードが繰り広げられていた。

マルスと同じ画面まで戻るにはもう少し時間がかかりそうだ。


そう、二人はリアルの戦いをしていたのではない。

2人が白熱の戦いを繰り広げていたもの、それは液晶ディスプレイの中。

対戦式のだった。


リュースティアが作ったもの、それは対戦ゲームのおなじみ格闘ゲームだ。

本当はMMO的な感じとか、ど〇ぶ〇の〇とかポ〇ケモ〇とか作りたかったがあれはさすがに複雑すぎてそう簡単にプログラムできない。

というかどうやってプログラムするのか全く分からなかった。

さすがの創造スキル様も異世界のモノに関しては完璧に再現できるわけではないらしい。

そこらへんは俺の知識に大きく影響するみたいだ。

つまり俺の前職がプログラマーじゃなくてパティシエである俺にはここらが限界、というわけである。


ってことで比較的簡単に創れたのが格闘ゲーム、というわけだ。

これでもこの世界にしては画期的すぎるくらいだからクオリティーに関して何かを言うのはなしだ。


そう、たとえキャラがみんな坊主頭かモヒカン、服は革ジャンだとしてもそれは仕方がないんだ。

仕方がないことなんだ、、、、。



「ねぇ、もう一回だよぉ!」


リュースティアの画面がコンティニュー画面に戻ったのを確認したマルスが再戦を望んでくる。

マルスはすでにコントローラーを握りしめ準備万端だ。


完全にはまったな、こいつ。

ゲームの虜、廃人となるのは時間の問題かな?


「わかったよ。俺とお前の格の違いってやつをを見せつけてやる。覚悟しろよ?」


「そう言っていられるのも今の内だよぉ?|道化のマルス《ぼく》にかかればすぐに君なんてコテンパににしちゃうんだからねぇ。」


そうして再び二人の戦いに火ぶたが切って落とされるのであった。

そしてそれは日が開けるまで続けられるのであった。


リュースティアはこの後、数回マルスと対戦してからマルスのもう一回を受け入れたことを後悔するのだが時はすでに遅し。


完全にスイッチの入ってしまったマルスから逃れる術はすでにない、、、、。



そして日は明けるのであった。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る