第176話 ゲーム機1号

真夜中の少し手前、リュースティアの部屋にノックの音が響いた。

こっちの世界の人々は基本的に昼型なので夜中に屋敷に住んでいる誰かが部屋に来ることなどまずない。

何なら初めての事かもしれない。

まさか夜這い、、、?

そんなやましい事を考えながらわずかな期待を心の奥底に秘め、普段と変わらない様子を繕い部屋の扉を開ける。


「誰?こんな時間にどうかしたのか、、、、、、ってお前かよ。」


部屋の扉を開くとそこにはマルスがいた。


俺の期待とドキドキを返せ。


「女の子じゃないからってがっかりしないでよぉ。何なら僕が相手しようかぁ?」


「いらねぇから!余計な気をまわすんじゃない。で、どうかしたのか?」


ほんといらんことで気を回さないでほしい。

俺、そういう趣味ないし。

冗談だとわかっていてもヴァンの前例があるから身構えちゃうんだよね。

マルスはマルスで典型的なショタだしさ。

そっち系のヒトにマジで人気ありそうだから冗談を言う相手は選んだほうがいいな。

うん。

って俺はなんの心配をしてんだ、、、、。


「うーん、僕は本気にしてくれてもよかったんだけどなぁ。まあいいか。えっとぉ、僕ごはんの後すぐに寝ちゃったでしょ?そのせいで寝れなくなっちゃったんだよねぇ。」


ちょっと聞き捨てならない発言が聞こえたがここは聞こえなかったことにしよう。

わざわざ自分から地雷を踏む必要はない。

うん、今日もがんばれ。

俺のスルースキル。


「いや、だから何だよ。俺に子守唄でも歌ってほしいわけ?」


「ちがうよぉ。僕が眠くなるまで僕と遊んでほしいなぁって。」


ちら。

ちらちら。


はいきましたー、ここで上目遣い。

いやさ、確かにその動作、漫画とかで見たことあるようなやつなんだけどさ、効くやつにはイチコロなんだろうけどさ。

俺、マジで興味ないし。

何よりマルスの性格はもうある程度わかってんだよ。

お前さ、もうすでに俺で遊んでんだろ?


「悪いな、俺は忙しいんだ。他のやつらに頼んでこいよ。お姉ちゃんたちが遊んでくれんだろ。」


そうそう、めんどい事は全部リズたちへ。

いつもこちらは迷惑をかけられてるからな。

こういいうときくらい良いところを見せてもらいたいもんだね。


「だからぁ、僕もさっきまではお姉ちゃんたちと遊んでたんだよぉ?だけどお姉ちゃんたちがもう寝るからあとはリュースティアに頼みなさいっていうんだぁ。」


くそが!

先を越された。

ってことはあいつらもう寝てんのか。

良いご身分だな、くそ。

俺の仕事次第ではアルフリックの急襲ってパターンも考えられるんだぞ?

というかそうだよ。

俺がゲーム作ってんのってそもそもこいつを懐柔するためなんだよな、、、。

まぁ最終的には俺のためでもあるんだけどさ。


それはとりあえず置いておくとして。

こいつうちになじみすぎじゃね?

だんだん懐柔する必要を感じえなくなってきたんだけど、、、。





「じゃあこいつでもやってみるか?」


仕方なくマルスを部屋にあげ、完成したゲームを見せつける。

これはさっきまで作っていた試作機。

元の世界のテレビゲームに似せてある。

もちろんこっちにはテレビなんてないから魔水晶をテレビの代わりにする。

ちなみに魔水晶とはこっちの世界で遠距離で通信をする際に使われているものだ。

魔鋼に特殊な魔法式を組み込み、加工をしたものでかなり高価。

何しろ、製造方法が分かっている数少ないアーティファクトの一種だ。

基本的には国のお偉いさんたち専用のアーティファクトとしてすべて国が管理している。


じゃあなんで俺が持ってるかって?

開花した創造スキルで魔鋼を解析したら使用例の一つとして出てきた。

後はもう簡単な作業だった。

スキルが命じるまま作業を進め、最終的に国が持っているアーティファクトなど軽く凌駕するほどのものができた。

まぁ、バレなきゃ問題ないだろ。


ってことで液晶ディスプレイはOK。

後はゲームの内容をプログラミングしてあげればいい。

ここら辺もスキルのサポートを受けなんなくこなす。

なにもかもが頭の中でイメージしたまんまできていくんだからすごいを通り越してもはや恐怖だ。


ホント、今更ながら俺のスキルってチートだよな。










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