第173話 取り引き材料その2

「うんうん、でぇ?君の言う二つ目っていうのは何なんだぃ?」


さっきよりもいくぶん前のめりな様子のマルス。

どうやら1個目の取り引き材料がかなり好感触だったらしい。

そうだよなぁ。

お菓子は魅力的だよな。

分かる、分かるぞ?

うんうん。


「ふっ、ふふふ。聞いて驚くな?俺が提示できる2つ目、それはお前が今までに見たことのない遊戯、娯楽だ。」


「僕が見たことのない遊戯、ねぇ。君、本気で言っているのかぃ?」


2つ目の内容を聞いてきた時とは打って変わってつまらなそうな様子のマルス。

セリフも棒読みだし完全に興味を失っている。

それに嘘だと思っているのが丸わかりだ。

自分の事を大人だというのならそこらへんはもう少し相手に気を使ってほしいんだが?

だがそんなことでめげる俺ではないのだよ。

なにせ今回の取り引きには絶対的な自信があるからな。

俺には娯楽にあふれた前世の記憶がある。

この娯楽のない世界に生きる人たちにはそれこそ想像もできないようなものが、な。


「ああ、本気も本気。俺はお前が持っていないモノを持ってるからな。」


前世の知識ですが。

あとついでにすべてを創造できるスキル。


「ふーん。例えばどんなものがあるんだぃ?」


どんなもの、か。

うーん、なんだろ。

テレビゲームとかはそもそもテレビがない。

いや、魔石と魔力で代用できるか?

まぁ、そこらへんは後々やっていこう。

とりあえず今はすぐにでも提案できるものにしておくか。


「トランプとかボードゲームとかかなぁ。今すぐに作ってやれるのは。」


なんの娯楽もないんだ。

トランプやボードゲームだって十分すぎるごらくだろう。


「もしかしてとらんぷっていうのはババ抜きとか七並べとかができるやつぅ?それでぼーどげーむっていうやつは将棋とかちぇすのことかぃ?」


なっ、なんだと⁉

トランプとボードゲームを知っているだと、、、?

どういうことだ?

なぜ前世の娯楽がこっちの世界にもあるんだ?

けどちょっと待て。

どうしてマルスが地球のゲームを知っているのにこの世界にはそう言ったゲームが一切普及していない?


「なんで知っているんだって顔してるねぇ。」


「ああ、どうしてお前がその知識を持っているんだ?この世界、いや、お前は知らないはずだろ?」


マルスの得意げな表情を見てたらついむかついて語尾が荒くなってしまった。

これじゃあマルスのことをお偉そうに言えないな。

落ち着け、落ち着け。

俺は大人だ。


「あは、そんなに気になるのなら教えてあげるよぉ。簡単な事だしねぇ。王様が僕に教えてくれたんだぁ。王になる前だったかなぁ、僕が王になってすべてを破壊したらもっと面白いものを見せてやるっていってたなぁ。」


くっ、犯人はアルか。

確かにあいつも前世の記憶持ちだったな。

それにスキルがなくてもトランプやボードゲームくらいの簡単なものなら作れただろうし。 


ん?

ってことはもしかしてヴァンの屋敷作ったのってアル?

さすがに作ったってことはないにしろ設計に携わったのはまちがいないだろう。

だからヴァンの屋敷はあんなに日本風だったのか。

それにこれで遊戯室の謎も解けた。

今思えばヴァンの屋敷にあった遊戯類も難しい仕組みなどまったくない。

知識さえあれば誰にでも作れるようなものばかりだった。


「あれぇ、黙り込んじゃってどうしたのぉ?もしかして君の言っていたものってその2つだけなのかぃ?だとしたらがっかりだよぉ。」


うっ。

これはもしかして、もしかしなくてもかなりまずいんじゃないか?

頼みのつなの前世の娯楽がだめってなると。

えっと。

えーっと。

うーんと。


やべ、どうしましょ、、、、。






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