第172話 取り引き材料その1

「で、君は何をくれるのかなぁ?」


リュースティアが持ち出した取り引きに興味をそそられたのか、いつの間にかバランスボールの上で寝っ転がっていたマルスは飛び起きた。

そしてその上に立ち、跳び跳ねながら近づいてくる。


器用なやつだな、、、、。


「俺がお前に与えられるものは2つ。アルが与えるといったものより規模は小さいし、そんなたいそれたものでもない。だがあいつには絶対に与えられないものだ。俺が思うにそれは確実にお前の道楽に対する飢えを満たしてくれる。」


さすがに世界をやる、なんて言えないしね。

そもそもアルが与えるつもりのものを取り引きに使っても絶対にマルスはなびかない。

それに借金まみれの俺だ、金銭や高価なものも無理。

面白いと言う点なら、あの神様くそじじいでもあげたいところだがこちらへの呼び方がまだわからない。


ならどうするかって?


俺の持てる力を遺憾なく使って、持てる限りの知恵を注ぎ込む。

ただそれだけだ。


「勿体ぶらないで早く教えてよぉ。早く教えてくれないと我慢できずに王に緊急信号おくっちゃうよ?そしたら君と君、まずいんじゃなぃ?」


おわっ、こいつしれっと怖いこと言うな。

焦らしたつもりはなかったんだが、、、、。

下手なことされてもまずいしさっさと教えてやるか。


「俺がお前に与えられるものの1つ目はお前が今まで食べたことも見たこともないような旨いものをいく


らでも食べさせてやる。」


何せ俺はパティシエだからな。

お菓子で世界を救う!何て言うつもりはないが美味しいものには武力に劣らない力がある。

それに甘味のないこんな世界だ、甘いは正義にもなりうる。


「僕が見たこともないものかぃ?こう見えてもぼくは長生きだからなぁ。あっ、もしかしてさっきのくっきーとか言うやつのことぉ?」


こ、こいつが長生きだと?

見るからに子供のような姿なんだが。

それに言動も、、、、、。


「君、見た目で人を判断しちゃだめだよぉ。ほら、吸血鬼のお兄さんもなんか言ってあげて。」


しまった、顔に出てたか。


「、、、、。リュースティア様、確かにマルスは長命な一族の出だ。出生からの年齢でいえばおそらく私よりも上だろう。だがそれが必ずとも精神年齢とは言えない。」


「ちょっとぉ!余計な事は言わなくていいんだよぉ。」



レヴァンさんより上ってまじか。

それは長生きというかむしろ生きすぎな気がする。

というかちゃっかり相手をディスるレヴァンさん、さすがです。


「まぁ、お前が長生きなのはわかったってことにしとくから。」


「うーん。なんかその言い方引っ掛かるなぁ。」


いや、だからそうやって口を尖らせるとこが子供なんだってば。

俺の娘と同じよ?


「まぁまぁ、そう気にすんなって。で、どうだ?クッキーとかケーキとか旨いもん食わせてやるぞ。」


「そうだなぁ、クッキーは美味しかったもんねぇ。けど別にわざわざ君と取り引きしなくたって手に入るんだよねぇ。君のストレージにまだあるんだろう?」


てめぇ、やっぱり俺のストレージからパクりやがったな。

あとでしっかり問い詰めさせてもらいたいが今は我慢。

まだこいつは交渉相手だからな、下手にでないと。


「確かに俺のストレージにはまだお菓子はたくさんある。けど全部ってわけじゃない。それにお菓子にはアシェットってのがあるんだよ。味はもちろん魅せるお菓子だ。それはまだしらないだろ?」



「あしぇっと?なんだい。気になるなぁ。見てみたいなぁ。うんうん、興味出てきたよぉ。ってことで2つ目、教えて?」



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