第171話 面白いを味方に
*
「やはりアルフリックが現王だったのか。それならばフェゲルニアが引いたのもうなずける。奴は無駄な犠牲を好まない。」
さっきからちょくちょく出てくるフェゲルニアって人?元魔族の王にしては悪者っぽくないんだよな。
義を通してる感じするし。
まぁレヴァンさんが慕ってる以上、敵ではなさそうだ。
もっとも100%味方とも言い切れないけど。
「あー、まあそうだよな。なんとなく覚悟はしてたし。で、マルス、お前の本当の目的は?」
「君。まっ、本当は君じゃなくてこの周辺にいる冒険者を調べることなんだけどねぇ。たぶん君で正解だ。」
初めから俺を探していたわけじゃないのか。
ってことはまだあいつは俺が生きていることを知らない。
よかった。
こいつの口さえ封じておけば俺の存在はまだバレない。
つまりもう少し自由に動ける。
「アルフリックはこの周辺の冒険者を調べてどうするつもりだ?」
「さぁねぇ。僕も王の事はよくわからないんだぁ。けど王はこれからやる計画に邪魔になりそうなやつを探せって言ってたよ。それより、君さ、不死の王の城で王と戦ったやつだろぅ?てっきり王に殺されたんだと思ってたんだけどねぇ。」
っつ、バレたか?
こうなれば殺るしかない。
いくらこいつが3席だとしてもレヴァンさんと二人でかかればなんとかなるだろ。
(レヴァンさん、いいな?やるぞ。)
こっそり隣にいるレヴァンさんに目で合図を送る。
そしてその視線を感じたレヴァンさんが首を縦に、、、振らない。
静かに横に振りやがった。
アレー、なんで?
(まだだ。リュースティア様、まだ時ではない。)
レヴァンさんの視線がそう言っていた。
レヴァンさんの協力なしで一人でこいつを抑えるには骨が折れそうだしな。
ここはレヴァンさんの意見に従っておこう。
「ん?殺らないのかぃ?けどそうだねぇ、そっちの吸血鬼のお兄さんの意見は正しいと思うよぉ。」
ちっ、すべてお見通しってわけかよ。
マジでくえねぇな。
「はいはい、で、お前はどうすんだ?俺の事アルフリックに言うのか?」
「うーん、どうしようかなぁ。一応僕の任務なわけだしぃ、言うのが義務なんだろうけどねぇ。どうしようかなぁ。」
何なんだ、こいつは?
「お前は何がしたい?お前はアルの配下だ、お前らの王を裏切るつもりか?」
「さっきも言ったろぅ?僕は面白い方につく。僕は道化、自由なピエロだ。だから君の方が面白いなら僕は君の味方だよぉ。ふふふーん。」
今度はいつの間にか取り出したバランスボールのようなものに乗っている。
ったく、こいつどっからモノを取り出しているんだ?
しかも次から次へとこっちをおちょくるようなものばかり取り出しやがる。
こんなのノーフェイスとか言ってたロイスなんかより全然表情が読めない。
「アルはお前に何を与えたんだ?」
「すべてだ。王は世界を破壊した後、僕にすべての娯楽を与えると約束したねぇ。好きなように遊戯に明け暮れて好きなように人間で遊んでいいんだってさぁ。王も粋だよねぇ。そんなに僕に与えてさぁ、自分は何をとるつもりなんだろうねぇ。」
すべて、か。
あいつはこの世界を破壊した後に興味はないってことか。
あいつは破壊のためだけに生きている。
まっ、俺がいる限りそんなことさせないけどな。
ってことは俺が今できることはただ一つ。
マルスを懐柔すること、だな。
「じゃあマルス、俺と取り引きしよう。俺がお前に今までにない娯楽を提供してやるよ。アルフリックが提示した破壊後の世界より面白いものを、な。」
「へぇぇ。面白いねぇ。君はいったい何を提示してくれるのかなぁ。破壊後の世界よりも楽しいものかぁ。楽しみだなぁ。」
にやり。
二人の視線が空中で交差する。
そしてリュースティアの口から交渉の内容が語られた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます