第170話 マルス
*
「あれぇ、どうしちゃったのぉ?急に固まっちゃってさぁ。」
突然の出来事にただ立ち尽くし、目の前に現れた男を見つめるリュースティアたち。
そしてそんなリュースティアたちを面白そうに見つめる男が口を開いた。
見た目通りの軽い口調、笑いを含んだ話し方だった。
「マルス、、、、、。」
「あは、ようやく口を聞いてくれた。よかった、無視されてたわけじゃないんだぁ。」
呆然とその場に座り込んだままロイスがつぶやいた。
つまりこいつがさっきまで話に出ていたマルスってやつだろう。
はぁ、まためんどくさそうなやつがでてきやがったな。
「マルス、どうしてここに?お前の仕事はここにはない。」
「そんなつれないこというなよぉ。面白いことがあるところに僕はいるんだぁ。今はここが一番面白そうだしねぇ。」
そんなことを言いながら懐に手を伸ばす。
武器でも取り出すのか?
そう思った一行は警戒を強め、戦闘態勢をとる。
だが男が懐から取り出したのは武器などではなく3つのボール。
そして何を思ったのか3つのボールを使ってお手玉を始めた。
あっけにとられて見ているといつの間にかボールが4つに。
5つに、6つに、7つに。
「
そんな様子を見ていたレヴァンさんがつぶやく。
どうやらレヴァンさんもこいつの事を知っているらしい。
つまりここでも俺だけがのけ者。
はい、そうですよね。
知ってます。
「あは、うれしいなぁ、君も僕の事知っているんだぁ。そうだよ、僕が九鬼門の第3席、
げっ、こいつ3席かよ。
ってことはロイスよりも強いのか。
めんどくさいな、なるべく刺激しないようにしないと。
「そんなに警戒しなくても何もしないよぉ。楽しくおしゃべりしようかぁ。」
「けっ、よく言うよ。目は全く笑ってないぜ?本当の目的を言えよ。」
悪いけど怪しいやつの言葉を真に受けるほど素直な性格してないんだよ。
ふざけてるくせに目だけは油断なく光ってる。
それにその目には一切の温かみがない。
生まれながらの殺人者、って感じだな。
「あは、いやー、さすがだなぁ。まぁもともと隠すつもりもなかったんだけどねぇ。けど楽しくおしゃべりしようって言うのは本当だよぉ。」
いつの間にかボールが消えていた。
そして新たに、その手に握られていたのはクッキーだった。
クッキー?
「お前、そのクッキーどこで手に入れた?」
店がやっていない今、クッキーを買える場所などないはずだ。
俺も最近は作れていない。
今、クッキーは俺のストレージにしかない。
「さぁ、どこでだろうねぇ。うん、おいしい。そうだねぇ、これのお礼に少し話でもしようか。」
クッキーのお礼?
ってことはやっぱり俺のストレージから盗みやがったな。
いったいどんなスキル使いやがったんだ。
「お前は現王派ということでいいのか?」
あれ、レヴァンさん?
今は俺のターンでしょ。
少しくらい自重してくれ、このイケメンが。
「うん、そうだねぇ。僕は面白そうな方につく。前王の考え方はもう古くてねぇ、面白くないんだよぉ。」
「き、貴様!前王を愚弄する気か!それ以上、、、、、、、、。」
はいはい、ちょっと黙ってってくれな。
これ以上俺の見せ場取らないでくれよ。
ってことでとりあえずロイスは転移魔法で俺の屋敷まで転移させる。
シルフたちに念話を送っておいたからたぶん丁重に扱ってくれるだろう。
「あれぇ、ロイスは退場させちゃうのぉ?」
「よく言うよ、あいつのこと殺る気だったくせに。」
さっきから隙を伺ってたからな。
ロイスは殺らせない、俺のパシリとして一生、馬車馬のごとく働かせてやるんだからな。
「あはははー。抜け目ないなぁ。そうだよぉ、ロイスを始末するのが僕の目的の一つ。現王は厳しくてねぇ。人使いも荒いし。あっ、今のは内緒だよぉ。」
「いいのか?ロイスに逃げられたままで。その厳しい現王様に怒られちゃうんじゃねーの?」
「まぁねぇ。けどロイスは後で始末するからいいんだ。それよりも今は君とのおしゃべりの方が楽しいからぁ。現王も僕には甘いんだ。」
ったく、つかみどころのないやつだ。
どういうつもりなのか本心がまったく見えない。
「はいはい、で、いい加減その現王ってやつの名前を教えてくんないか?」
「ああ、そうか。そういえばまだ教えていなかったねぇ。今の僕たちの王、その人は全能者ハリストス。世間にはアルフリックって名前の方が分かりやすいかなぁ。」
アルフリック、か。
やっぱりと言った方がいいんだろうな。
何となく予感めいたものがあったんだ。
アルフリック。
あいつはまだ独りで膝を抱えているのだろうか?
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