第164話 闇風神

「あのさ、さっきから言ってるあの方って誰?」


どうせ教えてはくれないんだろうけど。

こうも連呼されると聞かないといけない空気ができちゃってるんだよね。

なんかスルーしたらしたで怒り出しそうだしさ。

めんど。

はっきり言ってかなりめんどい。

さっさと終わらせよう。

聞きたいことがあるけどそれは後でたっぷり聞く時間があるだろうしね。


「貴様にような下等な生物に教えるわけないだろう。貴様の耳にあのお方のお名前が入ってしまうと考えただけで虫唾が走る。それほどまでに高位な存在なのだ。」


完全に酔ってるよ、こいつ。

そのお方とやらと何があったかは知らんけど普通ここまで心酔しないだろ。

もはや洗脳されてるレベル。

仮に魔族九鬼門ってやつらがみんなこんなんなら引く。

それも全力で。


「あっそ、じゃあ自分でそいつ探すからいいよ。んでお前は俺の情報源になれよ?」


ドン引き中のリュースティアはもれなく攻撃を再開しました。

それもかなりスピードで連撃を繰り出していく。

その速度はすで常人では目で追えないほど。

だがそれでもロイスはそんなリュースティアの剣をことごとくいなしていく。

しかも隙をついて反撃までしてくる。

これでステータス自体はリュースティアよりも下なのだから驚きだ。


「芸がないな。貴様の攻撃など通用しないとさっき学ばなかったのか?」


「はぁ?そんなん俺が一番知ってんだよ。それに1つ勘違いしてるんぞ。俺の攻撃がさっきと同じだと思うか?」


「なに?」


リュースティアの言葉に訝し気な視線を向けるロイス。

だが半分は口から出た出まかせと思っているのだろう。

警戒はしているようだが甘い。


「ロイス、今俺と何回斬り結んだ?」


しかたがない。

よくわかってなさそうなロイスに説明でもしてやるか。

もう何をしたところであいつ詰んでるし。


「お前がその剣を媒介に自分自身に結界を張ってることはとっくに気が付いてんだよ。だからとりあえずはそれを封じさせてもらった。こっからはハンデなしだ。」


こっちだって無駄に攻撃をしていたわけじゃない。

十分に観察させてもらってたんだよ。

そのおかげで大体の種はわかったつもり。


「この剣を封じた、だと?そんなことできるはずがない、はったりだ。確かに貴様が言うようにこの剣を媒介に多重結界を付与してある。そしてそれは対象を俺にした攻守ともに最高の仕上げになっているのだ。もちろん対抗魔法アンチマジックも備えてある。そう簡単にこれらの結界が敗れるはずがない。」


まぁいきなりそんなこと言われても信じられんよな。

つか対抗魔法アンチマジックの結界も張ってたとかずるすぎない?


「別に無理に信じさせる気もわからせるつもりもないから信じないのは勝手。けど一つだけあるんだよ。対抗できるのがな。」


「・・・・・・影魔法、か。」


おっ、意外と物知りだな。

もう少し隠せると思ってたんだけどな。


「そっ、影はすべてを喰らいつくす。ロイスと同じように俺も剣を媒介に影魔法を使ってた。だから剣が交わるたびに俺の影に喰われてたってたんだよ。もうお前の剣には結界魔法の媒介としての機能は残ってないはずだ。」


そう、これこそがレヴァンさんに教えてもらっておいた奥の手。

影魔法だ。

影魔法の性質を利用して相手の優位を奪う。

戦いにおいては基本中の基本だがやはり基本は大事だ。


「だがお前の剣は魔剣なはずだ。それも風の性質。風の性質をもつ魔剣に別属性、しかも闇属性の影魔法を付与することなどできるはずがない。」


ん、珍しく驚いてるな。

能面みたいな表情が崩れてるぞ?


「いやー。この相棒はなかなか優秀でさ、多少の抵抗だけであとは素直に従ってくれたぞ?」


確かに初めにやろうとしたら風神に抵抗された。

すねられても面倒だったので風神の機嫌を取るためにただ影魔法をまとわせるだけじゃなくて剣そのものを進化させた。

風神自身も自分以外の存在を許容する気はないが自身にその存在を取り入れ強化することに関しては抵抗があんまりなかったしね。

あくまで共存ではなく自分主体なら文句がないらしい。


ってなわけで今の風神は今までの風神などではない。

影、つまりはその刀身に闇の属性を新たに取り入れ進化した。

名前を付けるならば闇風神あんぷうじんってとこか?

うわ、ネーミングセンスないわー。

まぁいい名前が思いついたら後で変えよう、うん。


「ってももう前の風神とは別物だけどな。さっき俺が作りなおしたから今は2属性持ちの魔剣だ。」



「なるほど、2属性持てるように作り直したと。・・・・・・・って、そんな簡単にできるかーーーー!」


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