第162話 カマかけ
*
「はっ!どうした⁉威勢がいいのは口だけか!」
「そう焦んなって。生き急いでも死ぬのが早くなるだけだぞ?」
ロイスが消えた先。
そこではすでに激戦が繰り広げられていた。
ロイスが消えた理由、それはリュースティアが仕掛けた時限式の転移魔法によるものだ。
レヴァンさんから聞いたように、結界が罠に適したものだというのであればこの屋敷で戦うのは賢明な判断とは言えないだろう。
この屋敷のどこに結界がしかけられているか分かったものではない。
ゆえにリュースティアはホームグラウンドで戦うことにした。
シルフの森。
ここならば管理者であるリュースティアの知らないうちに結界を張ることは不可能だ。
何か変化があればすぐにわかる。
なにせ俺だけじゃなく森も警戒してくれてるからな。
それに最悪の場合、管理者特権でこの地に住むものに助けてもらえる。
何よりあの結界から出てしまえば念話が使える。
つまり最強の幼女トリオを召喚できる。
まぁ、呼ぶ気ないけどね。
これは俺の戦い。
*
なんだ?
こいつやりにくいな。
戦闘場所を変えたことで結界魔法は封じたはずだ。
やつの最大の強みを消した。
にも拘わらず奴は全く焦った様子を見せない。
それどころか余裕すら感じる。
違和感。
なんだ?
「なにかおかしい、そんな顔してるな。結界さえ封じれば余裕で勝てると思ったか?」
このままではまずい、そう思ったリュースティアは距離をとる。
視線は相手に固定したまま。
次の手を考えているとロイスの方から声をかけてきた。
声も態度もまだまだ余裕そうだ。
それがなんとなくむかつく。
「別に。さっきも言ったでしょ?準備運動中だって。」
口ではこう言っているが実際のところどう戦闘を組み立てていけばいいか全くわからない。
こちらからの攻撃は簡単にいなされるし、何より攻められるような隙を見つけられない。
それなのに向こうからの攻撃は休みなくノンストップだ。
風神で受け止めているだけで精いっぱい、ロイスの攻撃をかわしながら魔法を使う余裕などない。
にやにやしながら大剣振り回しやがって。
そもそも大剣ってそんなに振り回せるもんじゃないだろ。
筋肉達磨め。
それにしてもマジで攻撃が通らない。
何かスキルでも使っているのだろうか?
魔法やスキルをつかっている気配はないが感知できないタイプもあるからな。
警戒しておいた方がいいな。
「言っておくがスキルや魔法は使っていない。お前は俺が結界魔法だけでここまで生き抜いてきたとでも思っていたのか?」
リュースティアの思考を呼んだかのようにロイスがそんなことを言ってきた。
その言い方がまたむかつく。
まるで出来損ないのガキを相手にしているかのようだ。
「おっさんには興味ないんでね。あんたが今までなにしてたかなんて知らないし聞く気もないっ!」
ロイスの言い方があまりにも馬鹿にしていたので返答ついでに瞬光を使って後ろに回り込み風神を振り下ろす。
もちろん風神は開放済み。
プラスαで魔力もかなり強めに流しているので切れ味は抜群。
「青いな。だが俺とて傭兵として様々な死地を潜り抜けてきた。お前の攻撃なんぞ当たらん。」
完全に死角からの攻撃だったにも拘わらずかわされた。
しかも今の動きはこちらの剣すじを予測していたかのようなかわし方だった。
こいつ、先読みのスキルでも持ってんのか?
俺も持ってるけどここまで完璧に読むことはできないはずだ、やっぱりなんかあんのか。
「逃げてばっかだな。そんなに俺の剣と斬り合うのが怖いのかよ?」
こうなれば挑発でもなんでもして相手のリズムを狂わせるか。
頭に血が上るタイプでもなさそうだけど奥の手の準備ができるまでの辛抱だ。
「安い挑発だな。そんなもの戦場ではクソの役にも立たん。だからお前は青いんだ。」
あちゃー、だめでした。
まぁそうだよね。
俺だってこんな挑発されたくらいじゃ乱されない。
ってなるとここはカマかけとくか。
とにかく動揺がしてほしい。
ここまでくると攻撃のためとかどうでもいい。
ただ動揺した顔が見たい。
「そら俺はまだまだ青いチェリーですよ。お前ら魔族に比べたら、な?」
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