第160話 影の使い手
*
「レヴァンさん?えっ、いつから?というかなんで俺の影に?てか結界は?」
久しい顔を見た喜びももちろんあるがそれよりも驚きと疑問の方が強い。
口をついて出てくるのはあいさつでも無事を喜ぶ声でも労いの言葉でもなくただ状況についていけない内心のテンパりを表すだけのものだった。
「リュースティア様、少し落ち着け。今は順を追って説明している暇がない。とりあえずリュースティア様、現状を説明を。」
どうやら察するにレヴァンさんはレヴァンさんでこの屋敷にたどり着いたらしい。
つまり故意にリュースティアを助けに来た、というわけではない。
アレ、なんか俺って、、、、、、。
泣いてなんかないもんな!
*
リュースティアはむなしい気持ちを抑えとりあえずここまでの経緯と現在置かれている状況をかいつまんでレヴァンさんに説明する。
その間もレヴァンさんはリュースティアの影に潜んだまま出てこようとはしない。
「なるほど。で、リュースティア様はいつそこから出るおつもりですか?」
くぅっ。
この有能イケメンめ。
簡単に言いやがって。
そんな簡単に出れるならとっくに出てるっつうの!
「いや、だからさ、でらんないのよ。俺。」
「はぁ。」
っておい!
目の前で思いっきりため息ついてんじゃねぇよ。
分かってるよ、ごめんな簡単に罠にはまって。
ごめんな、無能な主で!
「えっと、助けてくれません?」
*
いやー、マジでレヴァンさん有能。
さすが不死人は経験が違うねー。
うん。
あの後、レヴァンさんから回復薬をもらい体力、気力ともに回復した。
ついでに食料ももらったので飢餓も脱した。
もう残すところはこの結界から逃げだすだけ。
それもレヴァンさんの手を借りれば影を通って出られるので造作もない。
小悪党に付き合うのにも限度がある。
何より俺は忙しい。
「ってことでさっさとずらかりますか。・・・・・・・・。って、んなことできるわけねぇだろ。」
ここまでいいようにやられて逃げるってダサすぎる。
というかあの男、ロイスのどや顔というかしてやったり顔を崩してやりたい。
俺の慢心が招いた失態。
戒めにするためにも俺自身でけりをつける。
「レヴァンさん、結界師って聞いたことある?」
逃げるにしろ戦うにしろ結界師がどういう者なのか全く知らない。
そんな状況で仕掛けるにはあまりにも不利だ。
というより不安要素がでかすぎる。
「結界師?確か小国に伝わる秘術だ。」
さすが不死、博識だな。
ロイス自身もマイナーみたいなこと言ってたのに。
「そう、その秘術なんだけどどういうもんか知ってる?」
「詳しくは知らないが確か罠や相手を足止めするのに適した範囲魔法の一種だったはずだ。」
罠や足止めか。
ってことは直接向かい合ったら結界は使えないのか?
「それってどうやって戦うんだ?」
「そこまではわからない。だが結界師という性質上近接には弱いはずだ。もっともその弱点を本人が自覚していないとは思えないが。」
まぁそれはそうだよな。
自分の弱点を知らないわけないか。
ってなるとあからさまな近接はNGだよな。
「なんかいい攻略法ない?そもそもなんで結界内なのに影魔法使えてるわけ?」
「それならおそらくこの結界はリュースティア様のみに対応しているものだからだろう。その結界師もそのような事を言っていたのではないか?」
あー、確かにそんなようなこと言ってたわ。
俺以外には何の効力もないとか。
「取り合えず戦ってみるしかないか。」
「一つ言えるとすればリュースティア様はすでに調べられている。戦うのであれば新たな魔法を構築すべきだな。」
新たな魔法の構築って簡単に言うなぁ。
ん?
てか作らなくても新しい魔法を覚えればいいんじゃね?
創造スキルで魔法を構築するのはできなくもないけど初めてやるには適した場面とは言えないだろう。
「あとは自分で考えることだな。では私はこれで。」
もう伝えるべきことは伝えた、とでも言うように影の中に沈んでいくレヴァンさん。
そんな様子を見ていて良い事を思いついたリュースティアはその手を伸ばす。
そしてつかんだ。
「レヴァンさん、俺に影魔法教えてくれ。」
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