第159話 久しぶりの登場
*
「あー、これまじでどうすっかなぁ。創造スキル全く使えないし。解析もできないから造り替えることもできないし、無理ゲーすぎる。つか手紙ちゃんと届いたかな?。」
リュースティアが結界に囚われてからすでに半日が過ぎた。
その間にロイスとナギが笑顔で腹の探り合いをしていたなど、リュースティアは知る由もない。
もっともナギがクラウドの屋敷に来たのはリュースティアが言う手紙によるものなのだが。
リュースティアはここに来る前に召喚獣を使いラウスに手紙を出した。
それには事の成り行きと自分がこれから向かう先について簡単に書いておいた。
これは昨夜の出来事からラウスたちが何か企んでいると推測し、利用されてやるという宣言の意味と万一の場合に備えた保険という意味がある。
その保険を自身のために使うことになるなどとは夢にも思っていなかったが。
つまり今のリュースティアは手紙が無事にラウスに届いたと信じ、ラウスが救出に来てくれるものだと思っているのである。
そう思っているからこそ危機感が全くなく、囚われているにしてはくつろいでいるのだ。
笑止。
リュースティアは知らなかった。
ラウスがそんなに甘い人間ではないことを。
ラウスは知っていた。
リュースティアならば放っておいても自力で何とかするだろうということを。
この違いが両者の行動を分けた。
そしてそれがやがて大きなひずみを生む。
*
「は、、、、はら、へった。」
リュースティアがとらわれて2日。
満足な食事すら与えられず結界の中で初めて明確な命の危機を感じていた。
誰も助けには来ない。
手紙を受け取っているであろうラウスも。
リュースティアが帰ってこないことを知っている屋敷のみんなも。
連絡が取れなくなっていると気が付いている精霊たちも。
誰も助けには来なかった。
「いい面になったな。」
ふいに声が聞こえた。
すでに空腹で顔を上げる気力すらないが声だけでわかる。
ロイスだ。
「そろそろ我々との話し合いに応じる気にもなっただろ。それともこのままここで果てるか?」
うつむいたままのリュースティアを見おろしながらロイスは話す。
結界に捕らわれてからリュースティアはクラウドとの話し合いに応じないと言い続けていたのだ。
すぐに救援が来る、そう思っていたからこその判断。
だが救援が来ないとなるとその判断は間違っていたかもしれない。
しかし今更だ。
ここまで来てしまったらなんかもう意地だ。
「気なんて使ってくれるなよ。ダイエット中なんだ。」
聞き取るのもやっとな声量でそれだけを言う。
無理をして皮肉を言っていることなどロイスでなくともわかる。
だがそれでもここは意地を通さねばならない。
男として。
「減らず口は相変わらずか。まぁお前がここで死ぬのも一興だろう。好きにしろ。」
そんな捨て台詞とともに部屋を後にした。
再び部屋は静寂と闇に包まれた。
「、、、、暗い。レヴァンさんならこの影使って助けに来てくれたのか、な、、、。」
ふと自身の忠実な配下だと公言する気のいい吸血鬼の青年を思いだした。
彼は1人である任務についている。
その任務上こちらから連絡はできないのでしていない。
むこうから連絡も来ないので彼が今どこで何をしているのかは彼のみぞ知る、だ。
「レヴァンさん、元気かな、、、。」
「はい。体調は全く問題ないな。」
ついに幻聴が聞こえだした。
自分以外に誰もいないはずなのにレヴァンさんの声が聞こえた。
「これマジ死ぬ、、。レヴァンさんの声が聞こえてきた。いるわけないのに。」
「いますよ、ここに。」
幻聴であるはずのレヴァンさんからの返事。
今度はさすがにリュースティアもおかしいと気付いた。
そしてゆっくりと周囲を見渡す。
そしてある一点で目が留まった。
足元の影。
その中に懐かしい顔があった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます