第155話 慢心フラグ回収
*
「って、あいついないじゃん。」
案内するとか言ってたからてっきり玄関の外で待ってるものだと思ってたのに普通にいなかったわ。
わっと?
うん、なんだろ、家の前の通りがこんなにさみしいと思ったことない。
「どうすればいいんだろ。探すべきか無視するべきか。」
どちらかといえば無視したい気持ちの方がつよい。
けどここで無視してもめんどいことになりそうだし、何より気配は感じないけど何となく視られてる気がするんだよね。
だからここで無視したらロイスってやつに嘲笑われそうだ。
「はぁ、しょうがない。っと、あっちか?」
ため息をつきつつマップと索敵魔法&スキルをフル稼働してロイスを探す。
どうやら彼は移動中のようだ。
さっきこの家から出たにしてはずいぶん遠くにいる。
けど走って追いつけない距離じゃないし領地内であれば転移魔法も使える。
なら彼が目的地に着いてから行けばいい。
それまではマップで捕捉しつつのんびり歩いていくことにする。
やっとくこともあるしな。
「うーん、どういうやつがいいかな。街中だし空飛べた方が便利だから鳥系か、、、、。
そう言ってリュースティアが呼び出したのは鳥の召喚獣。
フウク、という無駄に呼びにくい名前だが見た目はただの鳩。
ただ風属性を持った魔鳥、というだけである。
レベルが上がれば風切りなどの風魔法も使えるらしいが現時点では伝書鳩の代わりでしかない。
「久々なのはわかるけど落ち着けって。」
呼び出したのはいい。
だが、久々に呼ばれてうれしかったのか興奮し、囀りまくっていてなかなか用件を伝えさせてくれない。
これからは用事がなくても召喚獣は頻繁に呼び出した方がいいかもしれない。
自分の配下にいる呼び出したこともない数多の召喚獣たちのことを思い、そんなことを考えるリュースティアなのであった。
精霊とセットで動物がついてくるって有難迷惑かもしれない。
*
「ここが目的地?」
ロイスがある屋敷の前で止まったのでリュースティアは転移魔法を使い、彼の後ろに転移し、声をかけた。
ロイスからすればリュースティアが急に背後に現れたことになる。
それにもかかわらずロイスは全く驚いた様子はない。
それどころかようやくきたか、とでも言いたげな顔をしている。
「そうです。しかし思っていたよりも時間がかかったようですね。あなたの索敵スキルは存外精度が低いのかもしれない。認識を改めておきましょう。」
表情一つ変えることなく嫌味を言ってくるあたりたぶんこいつ嫌な奴だ。
「そこはやっぱもてなしの準備的な時間必要でしょ?」
だがリュースティアとて負けてはいない。
この程度の嫌味にいちいち心を乱されたりはしない。
しないと言ったらしないのだ。
なぜかって?
俺は大人だからな!
「その点はお気に召していただけるかと。もてなしの準備にはかなり力を入れましたからね。どうぞ、こちらへ。」
なんか妙に引っかかるような言い方するな。
まぁ仮になにかあったとしても俺一人だし何とかなるだろ。
そんな楽観的考えを持ち、促されるままロイスの後について屋敷の中へと入っていくリュースティア。
狭い廊下をロイスについて歩いていくと一番奥の扉の前で止まった。
そして自らは一歩下がりリュースティアに先を促す。
どうやらこの先にクラウドとか言うやつがいるらしくこっから先は1人で行け、ということなのだろう。
「ノックはいらないよな?」
そんなことを一応確認してからドアノブに手をかけ静かに扉を押し開け中へと足を踏み入れた。
部屋の中は薄暗く奥に人がいることはかろうじてわかるがその姿ははっきりとは見えない。
暗視スキルを持つリュースティアですら奥の人物が見えないということにわずかな違和感を覚えたが構わずに部屋の奥まで進んでいく。
もう少しで奥にいる人物を目視できる、というところまで歩いていくと突然、なんの前触れもなくまぶしいくらいの明かりがついた。
眩しさに目が慣れゆっくりと周囲を見渡すリュースティア。
そして自身の置かれている状況に気が付いた。
リュースティアは牢屋の中にいた。
「うそん。」
鉄の冷たい格子の中でそんな間の抜けたつぶやきがやけに大きく響いた。
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