第150話 襲撃者
*
「では、私はこれで失礼させていただきます。リュースティア様、お教えしたことをお忘れなきように。何かありましたら王都の私宛に手紙を出せばこちらに伺いますので。」
鬼のような先生にしごかれること結局3日間。
地獄のような日々でした、とだけ言っておこう。
ついにリュースティアの所作に納得したのか悪魔、もとい鬼。
あっ、違った、先生だった。
帰るらしい。
もともとあいさつのために来ただけで長居するつもりはなかったらしい。
それなら早く帰ればよかったのに、、、、、、。
「ええ、肝に銘じておきます。先生も道中お気をつけください。」
誰だよ⁉
ばりに見違えたリュースティア。
その所作は貴族そのもの。
若干頑張っている感が見え隠れしているのがほほえましいが。
リズもそんなリュースティアをみて少し笑ってしまった。
「くす。先生、ありがとうございました。今度はもっとゆっくりしていってくださいね。次シズもちゃんとつれてきますから。」
「それはあまり期待しないでおきましょうか。それではお元気で。」
シズ、君はどれだけ信用されていないんだ、、、、。
*
「ふぅぅーーーー。おわったぁー。」
玄関の扉が閉まった瞬間その場に崩れ落ちるリュースティア。
かなり無理をしていたらしい。
「お疲れ様でした。リュースティアさんかっこよかったですよ?」
床に座ったままのリュースティアに手を差し出しながらリズが声をかける。
違和感しかなかったがきっちりしたリュースティアもかっこよかったことは事実だとリズは思う。
もっともルノティーナやシズ辺りは大笑いしそうだが。
「かっこよかったって馬鹿にしてない?それにしてもあの先生おっかないな。」
リズの言葉が不満だったのか若干口をすぼめつつリズの手を取る。
そして二人で応接室に戻る。
なんだかんだで3日もたってしまっているのでそろそろ屋敷に帰らないとまずい。
家事とかがじゃなくてリズ以外の子たちの機嫌的に。
「シズが逃げるのもうなずけますか?それにしても先生の指導を3日ぶっ続けでしかもほとんどマスターしてしまうなんてリュースティアさんはやっぱりさすがですね!」
「シズの気持ちもわからないでもない、とだけ言っておく。すごいったってほんとに基本的な事しかやってないから難しくもなんともなかったぞ?」
これ謙遜とかじゃなくて事実なんだよね。
ほんとに基本中の基本。
小学生がやるようなことばっか。
だからそれをすごいって言われてもばかにされてる気しかしない。
「確かに基本的な事ですが普通は貴族の家に生まれてそこで生活をしていくにつれて少しずつ覚えていくものなんです。」
「ふーん。そういうもんか。まっ、そうそう披露する機会なんてないだろうしいっか。んじゃ帰るか、そろそろルノティーナたちがキレそうだし。」
「はい!(私的にはもう少し二人っきりでも。。。)」
リズさん、そういうのこの体ばっちり拾っちゃうからさ、声に出さないでよ。
*
『リュー!』
リズと二人で夜道を歩いているとシルフから切羽詰まったような声が聞こえてきた。
たぶん後ろのストーカの事だと思う。
『シルフか。さっきから後ろをついてきてるやつらのことか?』
『なの!さっきから入れ替わりながらついてきてるの。』
うーん、やっぱりか。
さっきからつけられてるのは気が付いてたしマップで相手の名前、レベル、スキルもろもろは調べてある。
所属がかなり黒に近いグレーなんだけど目的が俺じゃないならスルーしようと思っていた。
けどやっぱりというべきか奴らの狙いは俺らしい。
「リュースティアさん、どうかしましたか?」
隣で歩いているリュースティアが急に黙り込んだのを不思議に思ったのかリズが顔を覗き込んできた。
リズさん、近いっす。
「んーちょっとな。」
「もしかして後ろの方たちの事ですか?」
「なんだ、気が付いてたの?」
「これでも冒険者ですから。それよりもどうしますか?リュースティアさんが相手にするほどでもないと思いますけど。」
なんだかんだでリズも成長してんだよな。
お父さんうれしい!
「・・・・・リュースティアさん?」
「うっす、すいやせんでした!」
危ない危ない、あのモード発動しちゃったよ。
魔眼おそるべし。
「めんどいし一網打尽でいきますか。走るぞ。」
そういってリズの手を取り急に走り出すリュースティア。
隣でいきなりの出来事にドギマギしているリズの事などいざ知らず。
そしてリュースティアは走りつつも地面に水を創造し霧を発生させる。
それもかなり水分を含んだ霧を。
当然この中を走り抜けようものならびちょびちょになる。
そしてリュースティアは追手がびちょびちょになったのを見計らい一言。
「【
「「「あばばばばばば」」」
水は電気をよく通す、これ常識だよね。
皆さん仲良く感電して気を失っております。
ってことで帰ろうか。
こいつらの目的を調べた方がいいって?
知るかそんなもん。
「けどリュースティアさん、本当にいいんですか?せめて詰め所に連れて行った方がいいんじゃないですか?」
隣でリズがもっともな意見を言ってくるがリュースティアは取り付く島もない。
すでにこの場を後に、歩き出している。
はぁ、リズはため息をつきリュースティアの後を追う。
「リュースティアさん、次期領主として悪党を放置するのはどうかと思いますよ。」
「あーいいんだよ、そんなんしなくて。俺たちがなんもしなくたって屋根の上から見てたやつらが処理するから。」
事もなげにそんなことを言う。
まさか尾行していたものが他にもいたなんてリズは全く気が付いていなかった。
敵対しない、ということは後者は知り合いかそれに近い誰かの差し金ということだろう。
先ほどの襲撃といい、いったい何が起ころうとしているのか。
「ちっ、あのネコかぶりのくそ領主。俺になにさせる気だ?」
一歩前を歩くリュースティアの口からそんな愚痴が聞こえてきたがリズはあえてこの言葉をスルーした。
何かとんでもなく嫌な予感がしたから。
口にしてしまえばそれが最悪な形として現実のものとなりそうで怖かった。
だからリズは黙ったままリュースティアの後をついていく。
背後にはどこまでも深い闇が広がっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます