第145話 戦略勝負は完敗でした。

「なんでそうなんの?」


わっつ?

なぜ俺が二人との婚約を受け入れる=>養子になる。

という式が完成するんだ?


「なんでってお主、忘れておるのか?2人が公爵家との婚約を破棄するための必然的条件は相手の立場が公爵家と同等かそれ以上でなければならないということを。Sランクになりかろうじて貴族の末席に加わったお主ではとうてい釣り合わん。つまり2人を取られるのが嫌ならメーゾルに養子に入るしかないのだ。」


忘れてたーーーー!!!!!

確かに!

そうじゃん、そうだよ!

誰でもいいわけじゃなかった。

ってことはあれか。

2人をくず男の嫁に出せば養子にもならないし領主にもならない。

逆に2人と婚約するなら養子も領主ももれなくついてくる、と。

えっこれって究極の選択じゃね?

といっても俺の中に2人を見放すなんて選択肢ないし、、、、、。


「ラウスさん、、、、。はじめっからこうするつもりだったんじゃ?」


ギロリ。

つい領主さんを睨まずにはいられなかった。

こんなのすでに詰んでる。


「さて、なんのことやら。」


てめえ確信犯か⁉


けどどこからどこまでが計算だったんだ?

もしかして初めから計算だったとか、、、、?

そんなんもしかしなくても絶対そうじゃん!

え、なに?

領主さんってめちゃくちゃ頭キレる人?

やばすぎないか?

なんでこんな人が辺境の地なんかで領主やってんの?

王都にいればそれなりの役職なんじゃ、、、、。

というかそもそも公爵家とタメ張れるメーゾル家ってなんなん。

やばい今更ながらにツッコミどころがたくさんあったことに気づいた。

過去の俺よ。

どんだけスルーしてんねん!


ふぅ。

まあいい。

これは完全に俺の負けだ。

リズとシズっていう外堀まで完全に埋められてしまえば回避のしようがない。

それにこの街のことは嫌いじゃないしな。

ここまで完敗しておいてあがくのはダサいし素直に受け入れるか。

けど1つ、1つだけ言わせてほしい。


「迷いに迷ってた俺の1週間ってなんだったの⁉」





「はぁ、なんだかラウスさんにいいようにやられた気がすんなー。」


とりあえず養子云々の詳しい取り決め、領民への告知等は後日、今日は時間も遅いしいろいろと整理する時間も必要だろうから帰ってゆくっりしてくれと言われた。

ほんとにその通りだよ。

この小一時間ですでにエルランドとの修行一週間分くらい疲労している。

なのでお言葉に甘え、ひとまず屋敷へと引き返してきたリュースティアたち。

リビングで紅茶飲みながら一息つく。

なんだかんだで時間も遅い。

屋敷についた時点でシルフ&スピネルの幼女コンビはすでに半分夢の世界へと足を踏み入れていた。

なので幼女コンビは寝室へ運びこみ済。


「そうですね、あの方に知恵比べで勝てる方はいないと思いますよ。」


ちゃっかりリュースティアの隣に腰を下ろしたリズがそんなことを言う。

その話は交渉に入られる前に聞きたかった、、、。

てかリズさん、距離近くないっすかね?


「そうね。なんたってああいう前歴の持ち主だし。悪い人ではないんだけど敵に回したくはない人物かな。」


こちらもちゃっかりリュースティアの隣に座ってきたシズ。

ああいう前歴って何⁉

めっちゃ気になるワード来たよ、聞くべきか否か、、、。

というかシズさん、距離近くないっすかね?

一応正式に婚約者?にはなったけどまだ一線超える勇気はないんでお手柔らかにお願いします、、、、。


「あっ!二人ともずるい!」


トイレに行っていたルノティーナが部屋に入るなり大声で騒ぎだした。

そして何を思ったのかリュースティアの膝の上にダイブ!

、、、、、撃墜された。


「ちょ、なんで私だけ!二人ともずるい!」


リュースティアに撃墜されたもののすぐに起き上がり文句を言いだした。

なんだろ、君って打たれ強いよね。


「早いもの勝ちです。」

「あきらめて。」


ルノティーナの怒りなど全くいに返さない様子で平然と答える二人。

これが正妻の余裕なのだろうか?


「リューにぃ!」


ちょっとこれ、どういうことなの⁉見たいな視線を送るのはやめてくれ。

第一、隣に座れないからって膝の上を選択するか?

そもそもこういう配置になったのは俺の責任ではない。


「いや、俺に言われても。というか俺ルノティーナとの婚約は認めてないぞ?」


ガビビーン。

そんな効果音が見えるような表情をされた。

こいつ絶対背後に効果音のパネル背負っていやがる。

けどそんな顔されても、、、、、ねぇ?


「ふっふふ。それで私があきらめるとでも思った?そんなのNOよ!見てなさい、絶対にリューにぃと婚約して見せるんだから!」


なんだその宣戦布告みたいな言い方は。

ルノティーナの恋愛観とか気になるけど聞くのは怖い。

間違っても殺り合える相手、とかじゃないよね?


いやまあね、嫌いじゃないんだよ。

普通に好きなんだけどさ、ルノティーナに対する好きだけは絶対に恋愛じゃないって断言できるんだよな。

本人には絶対言えんけど。


「はいはい、頑張って。」


「むっきー!今にメロメロにしてやるんだから!」


むっきーって口で言うなよ。


まぁいろいろあったけどとりあえずはなんとかなったのかな。

先のことはわからんけど、今はみんなと一緒にいられる。

それだけで充分だ。

完敗したけど。

そう悪いようにはならないだろ。


例のごとくの楽観主義。

それが今後どのように利用されていくかも知らず、今の幸せを享受しているリュースティアなのであった。

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