第144話 外堀を埋められたら、、、。
*
「まぁお主がそう言うのならこの件はいったん保留にしておこう。」
今すぐにはリュースティア決意を変えられないと悟ったのか保留、などという汚い手に出てきた。
保留のための一週間だったんですけどね⁉
「まあいいけど俺は暮らし始めて日も浅いこの街を守るとか責任を果たすとか無理っすからね。てかこの件はって他にもなんかありましたっけ?」
領主さんの言い方に引っ掛かりを覚える。
確か俺が今日結論を出さなければならない問題は養子&領主だけだったはずだ。
それ以外は心当たりがない。
まさかさすがにこの場でモフモフ同盟とかは言いださないだろうし。
「お主の婚姻の話だ。」
へぇー俺の婚姻の話ですか。
婚姻?
コンイン?
は⁉
なにそれ聞いてないんだけど⁉
「ちょ、どういうことですかそれ⁉俺結婚すんの⁉」
「む?聞いていなかったのか?てっきり私はすでに話が通っているものだと思っていたが。」
とかなんとかいって驚く領主さん。
いや、俺のが驚いてんだけど。
つか相手は誰だ。
「すいません、リュースティアさん。いろいろあってついうっかり。」
ってリズかーーーー!
やっぱり、いやいや違うだろ。
何がやっぱりなんだよ!
「俺の婚約者ってリズ?リズはそれでいいのかよ。」
「ええもちろん。家のことを気にしてどこの誰ともわからない方と結ばれるよりはリュースティアさんと結ばれたいです。それに私だけじゃないんですよ?」
確かに貴族だったら政略結婚とかありそうだけどさ。
だからって俺でいいわけ?
てかリズだけじゃないってどういうことだ?
たしかにこの国では一夫多妻が認められているんだっけか。
えっ、俺お嫁さん二人⁉
「な、なによ!私じゃ不満⁉」
「あははーリューにぃよろしくね!」
ってお前らかぁーーーー!
シズはいい、いや、よくはないけどさ。
リズほどではないかもしれないけどうすうす好意には気が付いていた。
けどルノティーナ、お前は違うだろ。
夫を戦闘相手と勘違いしてないか?
*
「で、どうするのだ?養子の件はともかく婚姻の話は先送りにはできないぞ。」
うるさいちょっと待てって。
いいから出したケーキ黙って食べてて。
領主さんが言うにはリズとシズに婚姻の話が来ているらしい。
それも相手は公爵家。
王位継承権こそないらしいがそれでも立派な王族の血筋だ。
けれど件の相手は典型的なくず男らしい。
今回リズとシズを同時に娶ることになったのもくず男だから。
何をするかなんて聞かなくても想像できるってもんだ。
いくら相手が公爵家の人間とは言え大事な娘をそんな男に嫁に出したくはない。
ポワロさんの気持ちはすごくわかる。
そこですでに婚約者がいる、ということにしてしまえとなったらしい。
それもそこらの貴族などではなく公爵家と同等の力のある貴族。
それがメーゾルの名を持つ辺境の地の領主だった。
これってさ俺断れなくね?
断ったらリズとシズはくず男の嫁になる。
あれ、なんかすごく嫌だ。
胸がたくさんチョコレートを食べたときみたいにもやもやする。
そのくず男を二度と見れないような顔にしてやりたいとかも思う。
けど結婚はしたくないくせにだれか他の男のものになるのは嫌だってわがままか!
「リュースティアさん、だめ、ですか?」
うわ、なにその顔ずるぃ!
うるっとした瞳で下から見上げてくるとかずるい。
計算だとわかっていてもそんな目されたら、、、、、。
「あーもうわかったよ!俺はみんなのことが好きだし大切だ。だからそんな男のところに二人をやりたくない。けど俺自身の気持ちが恋愛としてなのかそればっかりは俺にもわからない。だから今すぐに結婚とかっていう気持ちにはどうしてもなれそうにない。だからあくまで婚約者として。それでもいいか?」
断じてこれは逃げたのではない!
そして二人をキープとも思っていない!
あくまで真剣に二人のことを考えた結果だ。
中途半端に状況に流されるのは一番よくない。
そう思ったんだ。
だからこれは決して逃げではないのだ。
「はい!今はそれで充分です。リュースティアさんにしてはずいぶんと前進しましたから。」
「まぁしょうがないわね。好きになった方が負け、だしね。」
よかった、二人とも納得したかはわからないけど。
とりあえずは婚約者とういう形で話は丸く収まりそうだ。
「ね、ね!私は?わたしは?」
「ん?ああ、いたのかルノティーナ。」
完全に忘れてた。
その存在。
けどまあいいだろ、だって
「ちょっと私の扱いだけひどくない⁉未来の花嫁に向かってその存在を忘れるなんて!」
「いや、お前と婚約するとは一言も言ってないぞ?」
「、、、、、、?はっ、確かに!ならば今ここで言わせるのみ!」
おいなに1人で盛り上がってんだよ?
いいからまず座れ。
そして机に脚を乗せるな、たぶんその机高いぞ?
てかそういうことしているうちは俺がルノティーナにくらっとくることはない。
それはわかってんのか?
「はぁ、これからもにぎやかな日が続きそうだな。」
などと思ったことがつい口から出てしまった。
その一言はもう、それはまるでこの場が一件落着したかのように。
だがリュースティアは失念していた。
リズとシズの婚約者になるには必要なモノがあることを。
そしてそのことを思い出させたのは領主さんの一言だった。
「ふむ、ではリュースティアはわがメーゾル家に養子に入る、ということでいいのだな?」
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