第143話 思うつぼ

「領主さんの話は断らせてもらいます。俺は養子にも入らないし領主にもなりません。領主さんには申し訳ないけど、これが答えです。」


「、、、、。理由を聞かせてもらってもいいか?」


ん?

思っていたよりも取り乱していないな。

リズたちの反応は、、、、。

思った通りだ。

かつて自重しようと言った顔をしている、言えばどんな顔をしているかはわかるだろう。

ちなみに前回、領主さんと話したときに得たスキル、読心は封印、使用不可にしてある。

だってこうでもしないと人間不信に陥りそうだったんだもん。

人間って平気な顔して嘘つくよね、、、、、、。


「いや、理由って程でもないんですけど、冷静に考えてやっぱり俺がメーゾル家の養子になって領主の座を引き継ぐとかおかしくないっすか?」


「・・・・・・・・・。」


そう、タイムリミットが近づき、1週回って冷静になった俺は気が付いたんだ。

普通に考えたらこの話おかしくね?と。

王国の法とかそんなんは知らんけど前の世界に照らしあわせたらこんな勝手が許されるようなことはないと思うんだよね。

身元不明の男が上級貴族、しかも領主の養子に入るとか。


それについメリットとデメリットで考えてたけどそもそもそうじゃない。

俺が、とか関係ないんだよね。

望むとか望まないとか、そもそも決めるのは領民だし、王だ。

俺の意思とか希望とかたぶん関係ない。


「ラウス様だってわかっていますよね?こんな身元もわからない人物を王国、民が信用するわけないって。反乱でも起きたらこの地は簡単に他国に攻められてしまう。なんたってこの地は国の境目、防衛ラインでもあるんですから。」


「・・・・・・・・・。ちっ。」


ん、気のせいか?

舌打ちが聞こえた気がしたんだけど。

それも領主さんのほうから。


「なるほど、それがお主の答え。はぁ、領主になった時の利点を強く押し出していれば気が付かぬと踏んでいたが、わしの考えが甘かったか。」


うぉい!

てめぇ、確信犯かよ。

モフモフのこと考えすぎてとち狂ったか?

仮に俺がこの話を受けていたら王国を敵に回してたかもしれないんだぞ。


「王国を敵に回すようなことまでして何がしたいんです?」


「動機はこの前話した通りだ。」


つい気になって聞いてみたらそんなことを言われた。

この前の話、ということはつまりはモフモフ云々。

くだらな、、、、、。


「そんなことのために王国の反対を押し切ろうとしてたんすか?」


「王国のことは心配しなくてもよい。」


なんだその意味深発言は。

まるで王国に強い権力を持っているみたいな言い方だな。

うーん、気になる、、、。

よし、聞くのはやめよう。

気になるけど聞いたら更なる面倒事を引き起こす気が、というか巻き込まれる気がする。

だから何も気が付かなかったってことにしておこう。

領主さんの爵位とかステータスとか表示されてるから見ちゃったけど見なかったことにすればそれは見ていないのと同じだ。

うん、この世には知らない方が幸せなことがきっとある。


「しかしお主が養子にならないとするならばこちらとしてもお主をかばいたてすることはできなくなる。それは考えたのか?」


「まぁ、借金のことは何とかします。魔物狩ったりダンジョンに行けば何とかなるだろうし。お店はこっちが譲歩すれば商業ギルドもさすがに許可は出してくれますよ。」


こればっかりは何とかするしかない。

借金の返済なんてしたことないけど要はお金を稼げばいいんだ。

前に店を開くときも数日で結構なお金をためられたし、本気でやればすぐに返済できるさ。

なんたってこっちはSランク冒険者が2人がいるからな。


「お主には申し訳ないがそれは難しいかもしれん。先日ギルドからの申請がありSランク冒険者が通常の依頼を受けることができなくなった。そして商業ギルドに関しては以前よりも申請基準が厳しくなった。お主の店が再開できる可能性は低いだろう。」


「なっ⁉」


何それ、聞いてないんだけど。

冒険者としての活動もできない、店も開けない。

えっ、俺の収入源ゼロ?


「冒険者ギルドに関しては言いにくいがそこのルノティーナ嬢が近隣の魔物を狩りつくしたことが原因だ。そのせいで低ランクの冒険者たちの生活が脅かされてしまった。民の生活を守るためにも実力に見合った依頼を受けるというのは妥当なところだろう。」


てめぇ、ルノティーナ!!

お前のせいかよ、、、、。

借金のことといいどこまでも足引っ張りやがって。


「それにこの地からSランクが出た、ということも大きな原因だろう。国の切り札でもあるSランク冒険者たちは国が管理したいというのが本音であろう。」


あれー、俺のせいか⁉

ってなら仕方がない、、、、か?

そもそもSランク冒険者って国に何人いんだよ。

でもそれなら商業ギルドの方はなんで?


「そっちの方は弟の策略だろう。お主が私の養子になるという話を聞き裏でいろいろ工作をしたに違いない。お主の地位と金を奪うそんなところであろうな。」


ここで出てくんのかよ、あのくそやろう。

俺のことすんげー憎らしい顔で見てたもんな。

なんかされるとは思ってたけどさあ、ここでこうくんのか?

陰湿すぎる、、、。


「はっぁぁー。まじどうすんだよ。この際だし放浪の旅にでも、、、、。」


てかそもそもこれってほんとに弟の策略?

それにしては俺の意見次第で領主になれるってところは変わっていないんだよな。

いい具合に養子になる以外の道がどんどん断たれてる気がする。

というか俺がこの街で穏便に暮らすにはもうそれしかないってくらいに。

となると弟が犯人だとしてもそれをいいように領主さんに利用されたって方がしっくりくんだけど、、、、。


まさか、違うよね、、、?



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る