第142話 決断の日

ルナは聖域に帰ってしまったのでシルフとついでにディーネを連れて屋敷に帰る。

なんだかんだで結構な時間がたってしまっていた。

それはつまり領主さんとの約束の時間がもう目の前に、それこそ今目の前にある屋敷よりも迫ってきているということだ。

そしてリュースティアはまだ答えを決めかねている。


「ただいま。」


「おかえりなさい、リュースティアさん。」

「おかえり、その感じだと一件落着ってとこかしら?」

「だいぶお疲れのようだけどねー。」

「・・・おかえり。」


わぉ。

屋敷に帰るとみんなが出迎えてくれた。

それも白いエプロン姿で。

くっ、可愛いな。

しかし、、、、。


「どうしたんだその恰好?ルノティーナ以外はすげえ似合ってる。」


そう、ただ一人、ルノティーナだけめちゃくちゃ似合っていない。

なぜだ?

あ、そうか。

彼女は脳筋だからか。

うんうん、納得だ。


「ぐふぉ!」


とか考えていたらリュースティアの脳内思考を読んだのかルノティーナの顔面ブローが飛んできました。

顔面はやめてよ、、、。


「まったく、リューにぃってほんとにデリカシーがないんだから。そういうところって本当にお兄ちゃんにそっくり。」


お兄ちゃんってエルランドか?

それは嫌だ。


「それはそうとリュースティア、あなたが聖域に行っている間にラウス様の使者が来てたわよ。」


シズ、そういうことはもっと早く言えって。


「俺が聖域にいたときって約束の日よりずいぶん早いな。なんかあったのか?」


「いえ、ただリュースティアさんが前にラウス様に差し上げたチョコが欲しかったみたいです。それとリュースティアさんの様子を見に。」


俺の様子見はついでかよ。

なんか釈然としない。


「それよりもどうするの?答えは決まったの?」


「、、、、、、、。まぁな。」


実はまだ何にも決まっていない。

けどさすがに正直に言ったら怒られそうだ。

1週間何してたんだ、って。

だからここは決まっている風にしておいてあとは城までの道中で考えよう。

うん、俺に残された道はもうそれしかない。


「・・・リューどっか行っちゃうの?」


リュースティアの返答を不安に思ったのかスピネルがそんなことを聞いてきた。

何それずるい!

そんなことそんな顔で言われたらもう俺どこにも行けないよ。

まぁスピネルをおいてどっか行くなんてことぜったいないんだけどさ。


「心配すんなって。俺はどこにも行かないし、スピネルを独りにはしないって約束したろ?」




「ほう、来たか。」


そりゃ来るよ。

約束しちゃったしさすがの俺でも領主さんとの約束すっぽかせない。

そんなこと領主さんだってわかってるくせになんでそういう言い方すんのかねぇ。

肩こりそ。

モフモフとか言ってた時の方が楽そうだった、とは言わない方がいいんだろうなー。


「まぁそりゃ来ますよ。」


「では早速だが答えを聞かせてもらおうか。」


いきなり本題っすか。

まぁ二人しかいないからな。

リズたちは別室で待機、ということになっていた。

なんで過去形なのかっていうとまぁ、それは想像の通り。

はい、みんな扉の前にいます。

俺の感知スキルが教えてくれてるんだが耳を扉にくっつけて盗み聞きする気満々。

はぁ、もういいよ。

どうせ後でわかることなんだし。


「そうっすね。けどその前に聞き手が増えそうですよ。」


そういって部屋の扉を開く。

うち開きになっている扉は当然部屋の中へ開くわけで。

そうして当然、扉に耳をくっつけていた婦人たちは部屋の中へ倒れこんでくるわけで。


「いたたた、リューにぃ気づいてたのね。誤算だったわ。」


肘をさすりながらルノティーナが起き上がりそんなことを言ってきた。

逆の立場だったらルノティーナだって気が付くくせに。

なぜ俺が気が付かないと思ったんだ?


「ったく、盗み聞きするくらいなら普通に入ってくればいいのに。それにみんなだって部外者じゃないんだ。まぁ後で言うつもりではあったんだけど。ラウス様、いいですよね?」


そういって机の前でかたまっている領主さんに声をかける。

どうやら盗み聞きに気が付いていなかったらしい。

それと伯爵令嬢が盗み聞きなんてはしたない真似をしていたことが信じられないのかな?

リズとシズを驚愕の表情で見つめ目をしばたかせている。


ハイ無視。

ということでみんなを椅子に座らせる。


「じゃあとりあえず、なんだっけ?ああそうそう、ラウス様の話でしたね。養子になって領主になれって話。俺からの返答は決まりました。それをまずはお伝えします。」


ごくり。

リュースティアのその一言で場が息をのむように静寂に包まれた。

その場にいるみんなの呼吸音までも聞こえてきそうだ。

空気までが痛い。

みんなの緊張が伝わってくるようだ。



「領主さんへの返答、それは、、、、、、、。」




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