第141話 長寿者の暇つぶし
*
「久しぶりね、幼子ちゃん。」
そんな第一声とともに三人の前にルナが現れた。
顔には意地の悪い笑みを浮かべて。
その表情を見たときリュースティアはおや?と思ったがもう遅い。
闘いの火ぶたは切って落とされたのだ。
「出たの!何しに来たの?リューはシルと話してるの。」
ルナの姿を視認した瞬間シルの纏う空気が一変した。
どす黒い。
精霊にあるまじ黒いオーラを全開にだし、ルナを全身全霊で拒んでいる。
初めてシルフのことを怖いと思った。
ここは変に何か言わない方がよさそうだ。
前に吹っ飛ばされた時の二の舞にはなりたくない。
「なぁに?なぜそんなに怒っているのか私にはわからないわ。それに私はリュ、、、。その子に呼ばれたからよ。」
ん、ルナさん?
もしかして、もしかしてだけど俺の名前忘れた?
まさかねー、さすがにさっきの今で忘れたりなんてしないでしょ。
そう思って念話でこっそり確認してみた。
万が一があるからね。
『・・・・・・。』
なんか言えよ⁉
*
「リューはシルのなの!光の精霊は必要ないの!わかったらさっさと帰るの。」
さぁここで機嫌最悪なシルフさん、直球勝負。
ストレートにルナさんを攻撃。
「帰らないわよ。だってこの子は私のものでもあるのだもの。幼子ちゃんこそ、こんな子を独り占めするなんて悪い子ね。」
おーっと、ルナさん、大人の余裕か⁉
全く動じず正論をぶつけてきました。
さぁ、シルフさんはどう出る?
子供は正論には弱いのが難点でしょうか。
「シルはいい子なの!リューをとってく光の精霊が悪い子なの!」
開始早々論点がずれてきました。
今後修正はあるのでしょうか。
「ルナよ。」
「?」
「だから、私の名前、ルナよ。その子がせっかくつけてくれたのだからルナと呼んでもらっていいかしら?光の精霊ではなくて。」
「嫌なの。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
えーっと、ここに来て冷戦ですか?
すこーし空気的にもつらいんでなんかしらはしゃべっていただきたいんすけど、、、。
「帰るの。」
「嫌よ。」
「光の精霊。」
「ルナ、よ。」
「シルの。」
「私の。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
おい、ルナさんや。
さっきまでみんなのとか言ってませんでした?
つか俺シルフのでもルナのでもないんだけど。
「シルのがリューのこといっぱい好きなの!知ってるの!」
んー、確かに付き合いは一番長いよな。
一緒にガラクタの山作ったこともあるし、死線も超えた仲だしな。
てか好いてくれるのは素直にうれしい。
「けれど私はあなたが知らないこの子を知っているわ。それにあんなことも、、、、。」
「の⁉」
は⁉
まてまてまてまて!
いきなり何言いだしてんのこの人。
いや、人じゃないけどさ、今は突っ込んでくんなよ。
「ほう?ご主人様もやりよるのぅ。まさかこやつに手を出すとは。」
うるせぇちょっと黙れ!
ってディーネいたんだ。。。。
「、、、、リュー?」
「まじでなんもないからな?」
「あら?アレをなかったことにするつもりなのかしら?私にあんなに詰め寄ってきて、しまいには、、、、。」
ストーーーーっプ!
ストップストップストップ!!!!
なに言いだしてんのこいつ⁉
マジで長生きしすぎて頭沸いてんじゃねぇの⁉
「リュー、、、?」
はっ、やばい。
シルフが泣く寸前だ。
どうにかして身の潔白を証明しなければ。
ええぃ、こうなってしまえばなりふり構っていられん。
シルフが怒り狂い泣いたら天変地異がおきるぞ。
それこそこのメーゾルくらいなら簡単に消し飛ぶだろう。
使命を前にしてこんなバットエンドだけはまじで笑えない。
「シルフ‼」
強く。
力強い声で相棒の名前を呼ぶ。
そして声に負けないほどの力でシルフを抱きしめる。
リュースティアの突然の行動にこの場から音が消えた。
リュースティアはそんな静寂を利用し、静かな優しい声でシルフの耳元に言葉をささやく。
「シルフ、よく聞いて。俺はシルフのものでも、ルナのものでもない。もちろんディーネのものでもない。」
ディーネが期待していたのでしっかりとくぎを刺しておくことも忘れない。
「けど俺はみんなと契約している。仲間、なんだよ。家族でもいい。だから俺にとってはみんな平等に大好きだし、大切なんだ。優劣なんてない。ルナが言ってることだって事故みたいなもんだしシルフが気にするようなこちは何もない。だからもう許してくれないか?みんなで家に帰ろ。」
はぁ、だれが悲しくてこんなシチュエーションでシルフにささやかなきゃならんのじゃ。
口説き文句なら幼女以外でお願いしたい。
「、、、、、ん。仕方ないの、リューもルナも許すの。仲間、なの。」
だが犠牲を払ったかいはあったようだ。
何とかなった。
これでとりあえずは一件落着か。
はぁ、早く家に帰りたい。
『ふふ、ずいぶんと楽しませてもらったわ。100年ぶんくらいの退屈しのぎにはなったかしら。今日は帰るけどまた暇になったら来るわ。幼子ちゃんによろしくね。』
一件落着、そう思ってたらルナがそれだけ言い残してしれーっとと聖域に帰りやがった。
二度と来んな馬鹿野郎、、、。
何千年も生きているだけあってルナの暇つぶし&娯楽への飢えはえげつない。
次回の強襲までにルナが夢中になれそうな遊び道具でも作っておこう。
心にそう強く決心するリュースティアなのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます