閑話 ハッピーバレンタイン!
*
??:「ふふふ、そこのモテないや野郎共。今日が当然なんの日か知っているだろ
う?」
モブ:「呪いの日!忌まわしき日!リア充共の日!イエス、バレンタイン!」
??:「ああそうだ。今日はバレンタイン、当然我々がすることは?」
モブ:「全力でバレンタインを阻止することです!!誰一人としてチョコを渡すこと
は許しません。」
??:「そうだ!では行け。どんな方法でもいい、誰一人としてチョコを渡させる
な!!」
モブ:「サー!イエッサー!!」
*
町人A:「えっ、俺にくれるの?これチョコだよね。でもなんで?」
町娘A:「今日はばれんたいんでーっていう日なんだって。だからその、、。」
町人A:「ばれんたいんでー?それって冒険者の人が考案した日?確か女の人が男の
人にチョコを渡して気持ちを伝える、だっけ?って言うことはもしかして
君、俺の事、、、、?」
町娘:「う、うん。けど気持ちを伝えたかっただけだから、その、いらないなら大丈
夫だから気にしないで。」
町人A:「いらないだって⁉そんなことない、実は俺も前から君のことが、その実は
気になっていたんだ。その、だから素直にうれしい。ありがとう。」
モブ:「粛清対象発見!」
*
とまあこんな感じで本日、辺境の地メーゾルでは空間が桃色になるという現象が起きていたりする。
若干変なのがまじっているが。
どれもこれもリュースティアのせいなのだが、、、。
こっちの世界はとにかくイベントが少ない。
つまり、稼ぎ時というものがないのだ。
これはケーキ屋をやっていくうえで割と致命的だったりする。
だからというわけではないがバレンタインを領主さんに提案してみた。
ほんの雑談のつもりで。
そして、気が付いたらメーゾルにバレンタインデーができていた。
領主さん権限ってそんな簡単に行使していいのか?
そんなことも思ったがこっちの利になることなので黙っておこう。
町の人(主に女性)にも割とすんなり受け入れられ、初めてのバレンタインデーにしてはお店も盛況。
さっきみたいな場面があちこちで見受けられ桃色空間が広がっている。
思わず砂糖を吐き出しそうなくらい、甘い。
順応すんの早すぎじゃね⁉
「大盛況ですね。チョコ、もう完売しちゃいましたよ。」
「ああ、思ってたよりみんな新しいもの好きというか怖いもの知らずというか。まぁこっちにとってはありがたいけどさすがにみんなたくましいよ。」
苦笑い気味にそんなことを言う。
メーゾル恐ろしや、、、。
だってさ、余るくらいの計算でチョコを作ったのにすべて売れたんだよ?
さすがに初めてでそんなに売れるなんて想像できん、、、。
「そうですね。けどきっとこういうきっかけが女性には必要なんですよ。」
リズがリュースティアの隣に寄り添うように立っていた。
ボーっとしていたリュースティアにはリズがいつの間にこんな近くに来ていたのかがわからない。
距離の近さに驚いたが嫌ではない。
むしろこの距離感にはなんとも言えない安心感がある。
「きっかけ?」
「はい、女性の人が意中の方に想いを伝えるきっかけです。想いって伝えようと思ってもなかなかきっかけがないと伝えられないじゃないですか。だからこのばれんたいんでーは女性にとっていいきっかけになったんだと思いますよ。」
なるほど、そういう考えは確かに前の世界でもあったな。
バレンタインを告白の日にしたりとかな。
クリスマスマジックならぬバレンタインマジック。
そういうのってあんまり続かないってのは言わないほうがいいんだろうな。
「まぁそうだな。リズは?いいきっかけになったか?」
これが鈍感リュースティアの真骨頂。
リズがリュースティアに好意を抱いていることなど一目瞭然なのに当の本人には全く自覚がない。
「そうですね。けど、わりと私は日ごろから好意を伝えているので。みんなにはいいきっかけになったみたいですけど。」
リズの言う好意を伝えている、という言葉に皮肉が込められていることにも当然気が付かない。
積極的なんだなー、くらいにしか思わないのがリュースティアクオリティ。
「みんなって?シズたちのことか?」
リズほどではないにしろみんなから好意を受けているのはリュースティアだ。
当然そんなこと露ほども思わずみんなの意中の相手とやらに興味深々。
「はい。みんな気持ちを伝える順番待ちなんです。けどこの感じだと順番なんて意味なさそうですね。みんなで一緒に、どう?」
リュースティアにはよく意味の分からないことを言ったかと思うったらリズは後ろを振り返り、またもリュースティアには意味の分からないことを言った。
けれど次の瞬間リズの振り返った先からみんなが出てきた。
シズにスピネル、ルノティーナにシルフにディーネ、つまりこの屋敷に住んでいるみんな、だ。
「リュースティアってホントにもうなんなのかしら。なんか馬鹿らしくなるわね。」
「ホントホント。けどリューにぃらしいっていえばらしいんだけど。」
「・・・ん。」
「リューは最強なの!」
「うむ、しかしそれもそれでいいのじゃ。」
えーっと、よくわかんないけど俺のことディスってね?
そんな思いは目の前に差し出された包みを見た瞬間にどっかへ飛んで行った。
目の前に差し出されたのは可愛くラッピングされたバレンタイン用のプレゼントと思わしき物。
つまり、そういうことだろう。
義理だ!
「俺にくれるのか?サンキューな。」
完全に義理だと思っているリュースティアは軽くみんなからのチョコを受けとる。
(あっ、こいつ絶対意味わかってない。)
その場にいた全員がおそらくそう思ったはずだ。
この男を攻略するにはまだまだ道がながい、と。
しかしそんなことを思ったのもつかの間。
どこからか男の、リュースティアではない声が聞こえてきた。
??:「粛清対象を発見。これより速やかに対処に移る。」
「なんだ?」
突然の乱入者に戸惑っていると乱入者が何かを地面に投げつけた。
煙幕だ。
乱入者から悪意が感じられなかったリュースティアは油断しまくっていた。
つまり煙幕というこんな幼稚な手にいとも簡単に引っかかったのである。
「【微風】ごほごほ、みんな大丈夫か?」
風魔法で煙を吹き飛ばし、みんなの無事を確認する。
みんなせき込んではいるがけがはしていないようだ。
では一体あの乱入者の目的は何だったのか?
リュースティアの感知に何も反応していなかったところから考えても悪人ではない。
「もう!いったい何だったの?Sランク冒険者のティナ様に喧嘩売る気?あっ!リューにぃ大変!」
服についたすすを払いながらルノティーナが文句を言っている。
ん?
何かに気が付いたのか?
「リューにぃ!チョコがない!私たちがあげたチョコ!さっきのやつが持って行ったんだわ!」
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