第129話 年の功 うん千年は強し

「神様に会ったことあるでしょ?」


いきなり核心を突くような質問をされ、とっさに言葉が出なかった。

無言の肯定とはよく言ったものだ。

それだけでルナにはリュースティアが神様に会ったことがあることが分かったのだろう。


「別にそのことでどうこういうつもりはないわ。神代には神様たちが地上に降りてくることは多々あったし、現に私も何回か会ったことはあるもの。今でこそ降りてくることはなくなったけど神様からの恩恵を受けている人がいなくはないわ。」


神代って確か今よりも神との交流が盛んで魔法文明が栄えてたって聞いたな。

始まりの魔法とかもその時のものだったし。

わりとこの世界の核心に迫るようなこと言ってる気がするけど俺的にはもっと重大なことがある。


「神代ってもしかしてルナ、かなりの歳?」


「マナー違反。女性に年齢を聞くなんて紳士失格よ。」


「うっす、すいませんでした!!」


聞いた瞬間にヘビーブローが飛んできやがった。

さっき顔を蹴っていたのは何だったんだってくらいに重い一撃でした。

ちゃんと腰が入ってました、とだけ追記したい。

けどこういう反応をするってことはたぶんルナは神代からずっと生きている。

つまりは数千年、下手すれば万にいくかもしれない。

うん、年寄りはいたわろう。


「人のことを年寄り扱いしないでもらえる?」


ヘビーブローパート2。


だからさ、心読むのは反則だよ、、、、。


二度目のヘビーブローを先ほどと寸分たがわぬ場所に打ち込まれる。

あまりの重さにさすがのリュースティアも意識を手放す。

最後に反則だよ、という非難の目を向けて。



「起きた?どうやら大丈夫そうね。一応回復魔法はかけておいたけど。」


ヘビーブローを二回くらい、気を失っていたリュースティアは少女の膝の上で目が覚めた。

どうやら自分の行動に非を感じたらしいルナが介抱していてくれたらしい。

介抱するにあたって親指サイズでは不便だと思ったのか少女サイズになっていた。

ありがたいと言えばありがたいのだがあいにく俺は幼女趣味ロリコンじゃない。

誤解を招きそうなので早々に膝枕を辞退させていただく。


「ありがと、もう大丈夫だ。なぁ、さっきの話なんだけどさ。恩恵がどうとかいうやつ。それまったく心あたりがないんだけど。」


ルナの正面に胡坐をかいて座り直しながら訪ねる。

洋服のサイズが合っていないのか肩からずり落ちかけていて目のやり場に困る。

何となく視線をそらし、神様からの恩恵をいうものに考えを巡らせるがやはり心当たりはない。


「心あたりがないって自分のステータスで確認できるはずでしょ?心あたりがなくなって自分がどんな加護を持っているかくらいはわかると思うけど。」


「いや、俺見れないんだよ。自分のステータス。」


「は?」


「いや、だからERRORになってんだって。」


「は?」


そういえばこの事はまだ誰にも話してなかったな。

なるほど、ステータスがERRORって言うとそういう反応になるんだな。

勉強になったよ。

そしてこれからは口が裂けても言わないようにしよう。

女の子のそんな顔、見たくない。


「えっと、ERROR?ERRORってどういうこと?初めて聞いたわ、そんな話。じゃあギルドにある鑑定石は?鑑定スキルは?魔眼は?けどこうなると気になるわ。リュースティアのステータスってどれほどなのかしら。人間としては強いことは確かだろうけど。まさか魔族や魔王より強いはずはないし。いや、でもクドラクを倒したんだったかしら?あれはハリストスがたおしたんだっけ。まあいいわ見ればわかることよ。」


うん。

何千年も生きてる精霊でも知らないことあるんだな、などとどこか他人事のように動揺しまくりのルナを眺める。

とりあえず俺はイレギュラーってことだけはわかった。

前からうすうす感づいていたけど、これで確定したわ。

俺って異常枠だったのね。


「俺のステータスを一番知りたいのは俺なんだけどな。何回やってもERRORって出てくるだけだし、鑑定石は壊れて使えなかったんだ。鑑定スキルでも全部は見れなさそうだったな。」


そういえばこの前魔族相手にルノティーナが鑑定スキルを使っていた理由を聞くの忘れてたな。

ルノティーナは鑑定スキル持っていないはずなんだけどな。

でもその時に俺に関しては何も言ってなかったしたぶん見れなかったのかな?

カイザやヴァン、アルと戦った時も特にみられた感じはしなかったし、もしかしなくても鑑定スキルじゃ見れないんじゃないか?


「見れない?ううん、そんなことはないはずよ。見れなかったってことは抵抗レジストされたってことかしら?つまりレベルの差?それとも無意識に妨害魔法でも使っているっていうの?」


うわーこわい。

なんかとてつもない勢いでぶつぶつ言いだしたんだけど。

口をはさむ隙すらねぇ。

なぁ、俺さ、帰りたいんだけど。


「リュースティア!」


「は、はい!」


ぶつくさ言い出したルナを若干引きながら見ていたら急に名前を呼ばれた。

思わず直立不動で敬礼してしまったよ。



「今から私が鑑定を使ってあなたのステータスを見るわ。だからあなたは全力で無抵抗をしなさい。」


はい?

全力で無抵抗って意味わかんないんですけど。

抵抗すんなってのはわかるんだけどどうやって?


「限りなく無になりなさい。いいわね?行くわよ。」


ちょ、待って待って。

まだ心の準備が、、、ってもうやってるし。


「【鑑定ジャッチメント】んん?なかなか抵抗が強いわね、けどもう少し。あとちょっと。んっん。リュースティア、もう少し力抜いて。もう少し、もう少し。っつ、見えた‼」


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