第128話 Le'ts Go 聖域
*
「で、結局光の精霊がこんなとこでなにしてんの?」
「光の精霊じゃなくてルナよ。そう呼びなさいとさっき言ったばかりでしょう。」
割と、じゃなくてかなり気に入ってるっぽい。
読んでほしくてうずうずしちゃってるよ。
というか俺が呼ぶと犬を呼ぶみたいになりそうだからあんまり呼びたくないんだけど。
「わかったよ、ルナ。これでいいか?」
めちゃめちゃ普通を意識して呼んでみた。
「ええいいわ。で、私が何をしてたかというと暇だったからぶらぶらしていただけよ。」
よかった、どうやら違和感はなかったらしい。
普通に呼べた。
というか精霊って暇なんだな。
まあ時間がありすぎてやることももうないのかもしれないな。
「ふーん、じゃっ俺はこれで。」
とにかく俺に用があるわけじゃなさそうだしさっさと退散しよう。
そうじゃなくても領主のことを考えないといけないってのにさ。
それに城から帰ってきてからリズたちもなんかよそよそしいし、家だと気まずいんだよなー。
俺、なんかしたっけ?
「待ちなさい、人間!ちょうどいいわ、あなたに聞きたいことがあったの。少し私に付き合いなさい。」
人間って、、、、。
俺の名前絶対忘れてんだろ。
それに結局こうなるのかよ。
捕まらないように早々に退散しようとしてたのに意味ねぇじゃん。
別に行くとこもないし用事があるわけでもないんだけどさ。
めんどくさそうなんだよな。
「はぁ、しゃーないか。で、俺に聞きたい事って?」
「溜息をつくなら心でつくのがマナーでしょ。まあいいわ。とりあえず名前、あなたの名前は?前に幼子ちゃんから聞いたのだけど忘れたわ。話はそれからね。」
他人の名前を忘れるような奴にマナーについてとやかく言われたくない。
「リュースティアだ。親しい人はリューって呼ぶけど好きに呼んでくれてかまわない。」
「リュースティアね、たぶん覚えたわ。」
たぶんかよ⁉
そこはしっかり覚えてくれよ。
仮にも命を救った相手だぞ?
知らない仲じゃないだろ。
「仕方ないじゃない。名前なんてしょせん他人にとってはただの判別記号でしかないわ。」
「あのさ、しれっと心読むのやめてくんない?」
*
「で?聞きたいことがあるって言ってたけどなんで俺はこんなところに連れて来られてるわけ?つかここどこだよ!マップは機能しないし気配感知もろくに使えないんですけど。あー、帰りたい。」
リュースティアが愚痴るのも無理はない。
いきなりルナに触れられたと思ったら次の瞬間にはここに来ていたのだ。
転移した際には習慣でマップ検索をし、念のために気配感知で周辺に敵がいないかなどを調べるのだがそれらはうんともすんとも言わない。
つまりここはマップの範囲外に存在する空間、ということだろう。
そんなところになんの説明もなしにいきなり連れて来られたともあれば多少愚痴っぽくなるのも仕方がない。
「あら、あなた生きているのね。ということはやっぱり間違いないのかしら?」
リュースティアをここに連れてきた当の本人はリュースティアが普通にここにいることが不思議で仕方がないというふうに首を傾げリュースティアのことを見つめている。
というかスルーできない言葉が出てきたんですけど。
「生きているのねってどういうこと⁉」
「そうね、ここは人間たちが聖域と呼ぶ場所。精霊たちやそれに属するもの達のみが入ることを許されているわ。」
聖域ねぇ。
まぁうん、それは何となく想像してた。
だってこんな美しい風景見たことがない。
川も木も輝いているし。
比喩じゃなくて実際に、だ。
それにあちこちに光の粒が浮かんでる。
なにより奏でられている音楽がこの世のモノとは思えない。
「精霊たちの住まう森、か。ってそれよりも許されてない人が入ったらどうなんだよ?」
「この地に人が迷いこむことは稀ではあるけどあるにはあるのよ。だから故意に侵入してきたのでなければここでの記憶を消して元居た場所へ帰しているわ。」
思ったよりも寛大な対応なんだな。
まあ精霊の稀とかはたぶん数百年に一回あるかないかくらいなんだろう。
けどちょっと待て。
故意に入ったらどうなんだ?
「死ぬ。」
うぉおおおい!
てめぇ人になにさせとんじゃ!
殺す気か!
「こればっかりは不可侵条約みたいなものだからこの地ができたときから存在するルールなの。だからそのことを知っている人はまずここには来ないわ。といっても来ようと思って来られるような場所にはないんだけど。」
いやいや、そんなこと聞いてないから。
危うく死ぬとこだったんだよ?
勝手にどっか連れてかれたと思ったら死んでるとか笑えないから。
「あなたは人間、けれど聖域に連れてきても死ななかった。つまりあなたは精霊よりも高位の存在、またはその恩恵にあずかってる。ねぇリュースティア、あなた神様にあったことあるでしょ?」
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