第127話 命名は犬の名前から。


「あら?誰かと思えば、、、、。えっと名前なんだったかしら。」


リュースティアが一人で森を歩いているとふいに誰かに声をかけられた。

聞いたことのある声のような気はするが顔と名前までは出てこない。

多分顔見たことがあるレベルの知り合いだと思う。

だが相手が自分の事を知っている以上無視するわけにもいかない。

とはいっても相手も俺の名前を忘れてるから無視しても問題ないか?

そんなことを思ったが一応挨拶だけでもしておこうと思い声がした方を向く。


「こんにちわ。こんなところでなにされてるんです?、、、、ってあれ、いない?」


とりあえず挨拶して辺りさわりのない会話を振る。

しかし振り向いた先には森が広がるばかりで人の気配はない。


「おかしいな。確かに声かけられたと思ったんだけど。まっ、いっか。」


「私を無視していこうなんて良い神経してるわね。ここよ、ここ!」


声の主を見つけられなかったのでスルーして先に進もうとしたら再び声をかけられた。

声の主は、、、、、いない。


「やっぱり声は聞こえんだけどいないんだよな。」


「ちょっと!いい加減にしてくれないかしら。私はここよ目の前にいるでしょ。」


目の前?

目の前って言われても木しかないけど、、、、。

ん?

いや、なんかいるな。


「ああ、お前か。えっと、光の精霊だよな?こんなところでなにしてんの?」


リュースティアはようやく声の主を見つけた。

確かに目の前にはいたのだがサイズ的に気が付かなかった。

この前見たときはシルフたちと同じくらいの大きさだったんのに今は親指サイズになっている。

これが本来の姿なのかはしらないがこんな小さいやつをすぐに見つけられるわけがない。

だから見つけらんなかったのはしかたないと思うんだ。

悪かったとは思うし怒るのもわかる。

わかるんだ、けどさ、顔蹴るのはやめてくんない?

まったく痛くないし、反応に困るんだけど、、、、。


「別に私がどこで何をしていようがあなたには関係のないことよ。それに光の精霊って呼ぶのやめてくれないかしら?」


「じゃあなんて呼べばいいの?というか俺まだ名前あんたの名前聞いてないんだけど。」


なぜかはわからないが相当不機嫌な光の精霊の機嫌をなるべく損ねないようにする。

不機嫌になる心あたりがないだけにかなり気を使う作業だ。

作業とか言っているのがばれたらさらに機嫌が悪くなりそうだけどね。


「ないわ。」


「はい?」


「だから名前よ。ないの。」


名前がないなんてことあんのか?

シルフたちは自分で名乗ってたぞ。

もしかしてあいつら自分でつけたとかじゃないよな?


「風や水の精霊にはあるのに。もしかしてあいつらに名前があるのは四大精霊だからか?」


「言っておくけど精霊のランクなら私の方がずっと上よ。現存する精霊の中では私が一番上だし。そうじゃなくて、長く生きた分名前がありすぎて使うのをやめたのよ。セリア、リリー、ウィーシェ、ミリア、ラディー、カリュプソ、他にもあったけど忘れたわ。」


なんか一個ギリシャ神話混じってね?

とかはたぶん突っ込んだら負けなんだろうな。。。。

まあそれは置いといて、確かヴァンも名前忘れたとか言ってたな。

もしかして長く生きる弊害だったりする?

ってなると長く生きるってのは良いことばっかでもないってことだな。


「気に入ってる名前は?」


「べつに。何ならあなたがつけてくれたっていいのよ。」


うわ、出た。

難易度高いやつ。

急にそういうの振ってくんのやめてくんないかなー。

俺センスないんだよ。


「んー、じゃあルナとかは?確か月って意味の言葉だったと思う。なんとなく光っていえば太陽なんだけど、あんたは太陽みたいな光っていうより月みたいな優しい光の方があってる気がしたからさ。いやなら断ってくれてかまわないから。」


「ルナ、悪くないわね。私のことをルナと呼ぶことを許可してあげる。いい?ルナ、と呼びなさい。」


相変わらず上からというかツンというか。

どうせならデレてくれるとありがたい。

けど割と気に入ってる気がするからまあいいだろう。

これはあれだな、うん。

絶対に、口が裂けても実家で飼っていた犬の名前だなんていえない。

とっさに出てきた名前が犬の名前なんて。

うん、この秘密は墓場まで持っていくリストに加えよう。


あっちなみに月云々は本当だよ?

後付けの理由なのは否定しませんが。









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