第125話 1週間の過ごし方 双子ver.
「おはよー。ってみんなは?」
普段よりいくぶん遅く起きてきてそんなことを聞くのはシズだ。
リビングには机で作業をしているリズしかいなかった。
寝坊はルノティーナとシルフの専売特許かと思えば意外とそうでもないらしい。
「シルちゃんとディーネちゃんはエント?っていう精霊に会いに行ってスピネルちゃんは図書館。ティナは借金返済のために魔物を狩りに行くって早朝から出掛けたわ。」
「そう、みんな好きなようにやってるのね。もうすぐ期限の日なのに、、、、、。」
そう言いながらT-falもどきのスイッチをいれ、ティーパックで紅茶をいれる。
そしてそのカップを手にリズの正面に座る。
その光景はもはや現代のOLそのまんまである。
異世界でまで家電製品の恩恵を受けてるとはなんとも言いがたい。
「朝ごはん食べる?」
作業していた手を止めシズに問いかける。
朝食もリュースティアお手製の保温器に入っているのでお昼くらいまでなら温かいまま食べられる。
リュースティアと暮らすようになってから自らの堕落ぶりを改めて実感する双子。
便利だしまっいっか。
結局はそう納得するのがオチ。
「もうお昼だしいいわ。」
時間も微妙なので朝食を食べる気にはならなかった。
ちなみにこのT-falもどきとティーパックもリュースティアが作ったものである。
魔力を注いだ魔石を電池がわりにつけているので魔力を注がなくてもスイッチ1つで操作が可能な優れものである。
しかもスキルで作れて手間いらず。
材料も廃材などを使っているので原価も安い。
リュースティアは割りと本気でこれらを商売にしようとしたが技術の出所やスキルについて詮索されてもめんどうなのでやめた。
これが売れればかなりの儲けが期待できる。
つまりは借金返済も遠くない!?
そんなことを考えていた借金まみれの屋敷の住人がリュースティアの売らないという決断に落胆したのは言うまでもない。
「精霊たちは森、スピちゃんは図書館、ティナは魔物狩り。じゃあリュースティアは?厨房にはいなかったみたいだけど。」
そういえばリュースティアがどこに言ったのか聞いていない。
リビングに来るまでにも見かけていないので外にでもでているのだろうか?
「私が朝起きたときにはもういなかったの。朝食と夕飯までには戻るって書き置きがあっただけ。」
「ふーん。リュースティアも悩んでるのね。」
さして興味もない風を装いそんなことを呟く。
だがそんな装いが双子の姉であるリズにバレないわけがなく。
リズは口元をあげた。
「そっか、だから今日は遅かったのね。シズ、昨日寝れなかったんでしょ?リュースティアさんのこと考えて。」
「なっ。ち、違うわよ!誰がリュースティアのことなんか。だいたいそれはおねえちゃんのことでしょ!」
予想外に放たれた攻撃に飲んでいた紅茶をつい口から吹き出してしまった。
汚い、、、。
本来ならそんなことを気にするべきなのだか動揺しまくりのシズにはそんなことなど眼中にない。
「シズったら汚いじゃない。それに図星だからってそんなに赤くならなくても。」
「う、うるさいわね!そういうおねえちゃんはどうなのよ!?」
「私?もちろん毎日、毎晩リュースティアさんのことで頭が一杯よ。」
恥じるでもなく言う。
若干ストーカーというかやばい感じの発言だがシズは聞かなかったことにする。
「おねえちゃんはすごいよね。普段はうじうじ悩むくせにこういう時だけきっぱり。」
「シズは昔っからそうね。大事なことになればなるほど自分では決められない。結局最後も私と同じにするかお父様やお母様に決めてもらってもんね。」
「だって大事なことじゃない。私はおねえちゃんみたいに自分の意見に自信が持てないし。」
「私だって自信なんかないよ。」
予想外の言葉に驚くシズ。
自分の行動にいつも自信満々な姉を見ていただけに意外だった。
「そうなの?だっていつも自信満々にこうしたい、こうするって突っ走るじゃない。」
「うーん、逆かな。自信がないから自分がやりたいことにはまっすぐ進む。だって不安だもの。だから回りは気にしない、自分の気持ちだけを信じるの。」
「自分の気持ちを信じる、ね。」
遠い目をしながらそんなことを呟く。
彼女の中でもなにか答が見えたのかもしれない。
「そう、シズがどうしたいか、それが大切よ。それがどんな答えでも私は絶対に否定しない。だから自分の気持ちを大切にね。」
「ほんとこういう時おねえちゃんはおねえちゃんなのよね。」
「いつもシズに頼りっぱなしだからね。たまにはおねえちゃんらしいところも見せないと。」
そう言って双子はお互いに笑いあう。
姉と妹、常に助け合い支えあってきた。
そこにこれからはリュースティアにスピネル、ルノティーナが加わる。
そうか。
姉との関係の延長線上にみんながいるのか。
確かにそう考えれば家族ってそういうものなのかもしれない。
ならきっとうまくできる。
自分の気持ちを伝えられる相手がいるのなら自分の気持ちを大切にできるはずだ。
決めた。
私も私を大事にする。
それがきっとみんなの幸せにも繋がるから。
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