第123話 外堀から埋めましょう


「さてと、それでは本題に入ろう。」


リュースティアが城から追い出されたあと領主さんの執務室に呼ばれたのはリズたち一行とリズの父ポワロ伯爵。

これからリュースティアには内密である話し合いが行われる。


「最後にもう一度確認するけどリズとシズはそれでいいんだよね?」


ポワロ伯爵がリズとシズに問いかける。

2人は少し緊張きた面持ちながらも意思を固めた様子で慎重に頷いた。


「ねぇ、なんのことなの?勝手に話すすめないで。全くついていけないんだけど。」


そんな中、口を挟んできたのはルノティーナだ。

伯爵家とラウス家だけで話が進んでいるらしく状況が掴めていないらしい。

それはスピネルも同じなのだがスピネルは特に気にしている様子はない。

場の空気に遠慮しているのか、興味がないのかはわからないが。


「えっとそれは、その、、、。」


そんなルノティーナの疑問に口を開いたのはシズだった。

だが、口を開いたものの言いにくそうに言葉を濁すばかりでその先までは続かない。

そしてポワロ伯爵はそんなシズを微笑ましそうに見ているだけで説明をするつもりはないらしい。


「私たちとリュースティアさんはこれから婚約者になるんです。」


「へぇー、婚約者か。、、、、ってはぁ!?」


そんな様子のシズに痺れを切らしたのかリズが簡潔に答える。

リズのあまりにも平然とした態度につい聞き流してしまったルノティーナ。

だが、自分で声に出したことによって内容のおかしさに気が付いたらしい。

声がでかい。


「なななななに言ってんの!?こここここここん、婚約者!リューにぃと結婚!?いやいやいや!急展開すぎるって。はっ、これがもしかして噂に聞く政略結婚!?いや、それよりももっとだいじなことがあるわ。愛、そう愛よ!愛に勝るものなんてないんだから!でも待って、もしかしたら、、、、、?」


どうやらルノティーナの頭はキャパを越えたらしい。

完全に壊れた。

わかるようなわからないような、、、。

意味のない言葉を繰り返すばかりだ。


「ちょっとティナ、しっかりしなさいよ。私もおねえちゃんも伯爵家の娘、むしろこの歳で婚約なんて遅いくらい。まぁそれが嫌で嫁がなくていいように冒険者になったわけなんだけど。」


どんなに緊張してようがパニクっていようが自分よりパニクっている人を見れば落ち着く、それはやはりどの世界でも同じらしい。

ルノティーナのパニクり具合をみて冷静さを取り戻したシズがもっともな事を言う。


「そうですよ。相手がたまたま次期領主のリュースティアさんだっただけです。」


「それにラウス様は公爵でありながらも地方領主であるため他の上級貴族からは下に見られているんだよ。だからここに嫁ぎたいと言ってくる家はまずない。だからと言って公爵家に男爵や子爵の家の者を嫁がせる訳にもいかないのが貴族のめんどくさいところなんだ。だから、こうしてラウス様と個人的にも交遊があってなおかつ上級貴族である私たちに白羽の矢が立った。大体こんなところかな?」


そう言ってここまでの成り行きを説明してくれたのはポワロ伯爵。

まさかの娘たちの会話に割って入るという、高等技術を見せてきた。

ここまでの成り行きを全て知っているのは領主を除けば彼だけというのも理由の1つ。

まぁ若干娘と絡みたい父親感が出てしまっておるのでなんとも言えないが。

それにどうやらこの場にいるものたちの中ではリュースティアが次期領主になることは確定事項のようだ。

リズが次期領主と言ったことに対して誰も反応しない。





「フッ、ふっふふーん。いいこと思い付いちゃった。その婚約、ちょっと待ちなさい!」



そしてこの空気を破るのもルノティーナたただひとりであった。

場の空気を読まないところを長所と取るべきか短所と取るべきか。

判断が難しい。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る