羽根つきと凧上げ

「うおりゃ!」


「なんのこれしき!」


怒号が飛び交い周囲一帯は地獄絵図とかしていた。

地面が抉れ、草木は根こそぎ倒さされている。

火が燃え移った木々もあるようだ。

そんな中、周囲の様子などまったく気にせずに戦っている二人がいた。


ルノティーナとシズだ。

二人は周囲を地獄に変えながらも戦いをやめる気配はない。

それどころか次第にヒートアップしている様子だ。


この日、きっと世界は滅ぶのだろう。

そう、たったひとつの羽子板と羽によって、、、。

おわった。


リュースティアとリズはそんな二人を遠くから見つめそんな事を思うのだった。

そんな二人の傍らにはあちらの騒動を気にもせずせっせと凧上げをする幼女二人の姿があった。


なかなかうまく風に乗せられず苦労しているようだ。

うん、微笑ましい。

あちらとのギャップがひどいだけにとても心がなごむ。

というかもうずっと見ていたい。

そんな現実逃避をするリュースティアなのであった。




事の始まりは一時間ほど前。

おせちも食べ終わりこたつでミカンを食べていたときのことだった。


「ねぇ、リュースティア。このおせちは新年を祝う食べ物って言ってたけどもしかして他にもなにかあるの?」


シズの何気ない好奇心。

すべてはここから始まったのだ。


「まぁそうだな。行事には事欠かない国だったし祝い事は多かったな。」


なにせ色んな文化がごちゃ混ぜになっている国だからな。

神事だけでも多いしそれに食え西洋、東洋文化など数えたらそれこそキリがない。

第一に俺が知らない。


「へぇ、色んな所にいったと思ってたけどまだまだ知らないところもあるのね。」


うん、まぁ異世界ですから。


「ティナが知らないなんてリュースティアさんの国は相当遠い所にあるんですね。」


うん、まぁ異世界ですから。


「シルが連れてけるの!森さえあればシルはどこでもいけるの!」


ダメ!それ絶対ダメ!

ムリムリムリ。


「うむ、行くのであれば妾も協力するぞ。話に聞く限り水は豊富なようじゃし。」


「じゃあディーネも協力するの。二人でやれば皆で行けるの。」


はいちょっと待て、変態と馬鹿!

なんでこんなときだけ精霊っぽくなってんの!?

いつもの残念さを見せてくれよ。


「あー、悪い。俺の国には行けないと思うぞ?俺の国はもうないんだ。」


皆から期待の眼差しを受けつも咄嗟に思い付いた言い訳を使う。

魔眼もちのリズに見抜かれてしまうかはもはやかけだ。

だが嘘は言っていない。


「そう、なんですね。なんだかすみません。悪いことを聞いてししまいました。」


あれー?

ちょっ、そんなに申し訳なさそうにしなくても。

まさか滅ぼされたとか思ってんのか?

まぁ確かにそう思われても仕方がない言い方しちゃったけどさ。

この空気どうしたらいいわけ?


「き、気にすんなって。それよりせっかくだし正月の遊びでもしないか?」


こうなれば他の事で気を紛らわせるしかない。

そう考えて提案したのが羽根つきと凧上げだった。

今では百人一首とかにしておけばよかったと後悔している。

だがその時のリュースティアは未来に何が待ち受けているかなど露ほども考えず道具を作り、遊び方を説明していくのであった。



「面白そうね!」


「ええ、訓練にもなりそうだしね。」


羽根つきにはまったのは言うまでもなくルノティーナとシズ。

スピネルとシルフには難しかったようだ。

戦闘スタイルが後衛で魔法を使うリズは予想通りというか身体を使うことは得意ではないらしい。

ディーネに関しては興味なし、観戦に回るらしい。


「じゃあスピネルは凧上げだな。よく見てろよ?こうして走る!」


楽しそうに遊び始めた二人を放置し幼女二人に凧上げのやり方を見せる。

するとすぐにスピネルの無表情に変化が現れた。

目を大きく開きキラキラさせている。

どうやら気に入ったらしい。


「・・・・・風魔法?」


「違うよ。これは自然の風であの高さまで上がってるんだ。だからスピネルにもできるよ。魔法は必要ないからな?」


最後の言葉は風魔法を使おうとしていた幼女に向けてはなつ。

いくら風の精霊とは言え遊びで魔法はなしだろ。


「・・・・やる。」


「シルもやるの!」


我先にと凧をあげるために走る二人を手伝ってやる。

そして二人ともなんとか凧をあげることに成功し、嬉しそうに空を見上げていた。


「リュースティアさん、あれは大丈夫なのでしょうか?」


するといつの間にか隣に来ていたリズに声をかけられた。

そしてリズが指差すあれをみて一気に血の気が失せた。


そう、そこには地獄が広がっていた。



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