おせちの前にダイエット


「リューお腹すいたの!」


お昼に年越しそばを食べてから数時間、シルフが騒ぎだした。

確かにそろそろおやつの時間。

だけどひとつだけ言いたいことがある。


シルフ、君年越しそばのおかわりしたよね?


「シルフちゃん太るわよ?」


「うっ。」


シズがすかさず聞き咎めた。

同じ女性として思うところがあるらしい。

まぁ異性であるリュースティアですらさすがにどうかと思うしな。


「さすがに最近のシルフちゃんは食べ過ぎですね。お腹出てきたんじゃない?」


「うっ。」


シズに指摘され言葉をつまらせるリズ。

そしてそれに更なる追い討ちをかけるリズ。


お腹が出ている、だと?

精霊なのに?

幼女なのに?

まさかねー、そんなことある訳がないと思いながらシルフのお腹を確認する。


チラ。


リュースティアの視線が自らのお腹に動いたのを確認したのかシルフは急いで着ていた洋服で隠そうとする。

しかしSランク冒険者であるリュースティアにその早さで敵うわけがない。


「・・・・・・シルフ?」


リュースティアはバッチリ見た。

その小さい身体に似つかわしくない中年おっさんのようなお腹を。


男の子の夢を壊すなー!

えっ、なになに?

精霊なのにぽっこりお腹ってなに!?

幼女でしょ!?

明らかにそのお腹は幼女特有のお腹じゃない。

というかそんなに食べてたのか、、、、


「ち、違うの!これはえっと、そう、夢!夢なの!精霊たちの夢がつまってるの!」


おい、お前はどこのド◯◯◯ンだ。

そんな言い訳通じるとでも思ってるのか?


「・・・・ふっ。」


今まで静観していたスピネルにまで鼻で笑われる始末。

ちなみにスピネルは幼女らしく慎ましい身体をしている。

ディーネも右に同じ。

ただディーネはシルフやスピネルに比べ年の功か多少の色香が出てはいるが。

まぁ、その色香にリュースティアがやられることはないのだが。

だって変態だもの。


「はぅ、そんな目で見るでない、、、。」


現に今も蔑まれた表情でリュースティアに見つめられているにも関わらずはぁはぁしだした。

そんなディーネを極力司会に入れずシルフを見つめる。


「シルフ。ダイエット、しような?」


それはもう優しい笑顔で言う。

だからシルフ、そんな死を宣告された受刑者みたいな顔しないでくれ。

これでも心を鬼にしているんだから。

ダメだ。

そう思ったのかシルフは期待顔で双子の方を見る。


「「シルフちゃん、がんばってね。」」


だがそんな期待は二人の笑顔とともに裏切られるのであった。

双子のシンクロ応援がシルフの心に刺さる。


この二人が助けてくれないとなるともはや希望はない。

現にスピネルはシルフのことなど関心がないというふうにすでに本を読んでいた。

ディーネは言う必要はないだろう。


「シルフちゃん、身体を動かすなら手伝うわよ。私も最近動いてなかったし。」


そして脳筋が更なる追い討ちをかける。

ルノティーナは加減と言うものを知らない。

彼女に付き合えば死を見ることは間違いない。


おわった。


冷たい汗が幼女の背中をつたる、

どうやら今年1年は世知辛い1年になりそうだ。

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