第118話 突拍子もないお話

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「はい?」


領主さんの思わぬ言葉につい聞き返してしまった。

聞いていなかった訳ではない。

むしろ逆だ。

一言も聞き漏らさないよう集中に集中を重ね、全神経を耳に集め聞いていた。

それゆえに聞きすぎてしまったのだ。

もちろん領主さんの言葉は聞こえた。

到底理解したくない内容だったが。


だが問題はその他だ。

集中しすぎたせいで無意識に聞き耳スキルを使っていた。

そしてさらに集中してそのスキルを使っていたたために派生スキル読心スキルを手にいれてしまっていた。

読心スキル、読んで字のごとくつまりは心を読むスキルである。

とすれば当然領主さんの心の声が聞こえてしまったわけで、、、。


「もう一度言う。私の養子になり、この地の次期領主となるのだ。(そろそろわたしも楽したいし?というか子供いないしさ、弟の子供なんかに継がせるくらいならリュースティアのほうが全然いいわ!。)」


スー

ハー


吸ってぇ、吐いてぇ。

深呼吸。


よし。

領主さんは全然人格者なんかじゃなかった!

完全に内面と外面が異なっとるやんけ、、、。

本音が小さい、小さいよ領主さん。

さっきまで身内の恥はどうのこうの言ってたのに。

リュースティアの中でも領主さんが一気にただのおっさんになった。


「お断りします!」


尊敬できる人格者→ただのおっさん。

ならば出す答えなど1つしかない。

誰が領主なんてやるか。

というかさっきの弟はそれで怒ってたのか。

なんであんなに睨まれてたのかようやくわかったよ。


ん?

ってことはもしかして俺、逆恨みとかされてないよね?

夜道で急に暗殺、とかまじ勘弁。

簡単にやられるとは思わないけどビックリするからやめてほしいね。

俺地味にお化け屋敷とか苦手なんだよ。


いつものごとく、誰も、神様ですら頼んでいないのに自らフラグを建築するリュースティア。

そして自分でフラグを立てたくせに原因が自分にあるとは思ってはいない。

しかしこれもいつものごとく。

なぜなら本人にフラグを立てている自覚はないのだ。

そしてこのフラグが回収されるのはもう少し先のお話。



「そんな即答しなくてもいいではないか。少しは私の話も聞きなさい。(即答とかまじなくね?俺領主なんだけど?偉いんだけど、さすがにそんなあしらいされると傷つくわ。)」


速攻で断ったリュースティアに対して領主さんは落ち着いた様子でそんなことを言ってくる。

さすが領主、そう簡単には動揺しないらしい。


実際、内面では動揺しまくりだったりするので動揺しないと言うよりは動揺を見せないと言った方が正しいかもしれない。


はぁ、領主さんって絶対ポーカーフェイス系のスキル持ってるよな。

というかこれで聞かなかったら泣きまくるんじゃね?

こころが、だけど。

それは無理だ。

こんな威厳たっぷりの領主さんが心の中で泣く声なんて聞きたくない。

かなり幻滅しそうだ。

ということはこれも聞くしか選択肢がない。


「断ることに変わりはないと思いますけどとりあえず話だけなら聞きます。それでもいいですか?」


「かまわない。話を聞けばリュースティアも考えが変わるかもしれんしな。(よっしゃー、きた!これで話聞いてもらえるわ。)」


まさに二重人格。

内面と外面の差に辟易しながらも領主さんの話を聞こうと襟元を正すリュースティアなのであった。




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