第116話 困ったときの領主さん
*
「そう言えばちょっと話変わるけどいい?」
巨額の借金と言う前世では縁のなかった問題に直面し、どうしていいかわからず途方に暮れていた。
片っ端から売れそうなものを質に入れお金に換えたがそれでもまだ足りない。
ストレージはほぼ空になってしまった。
これで2か月間、食つなぐことも難しくなってしまった。
とまぁそんな感じで放心状態でソファーに座っていたらシズから声がかけられた。
「んー?あー?」
心ここにあらず、と言った形でから返事をするリュースティア。
そしてそんなリュースティアを見ながら申し訳そうな表情をしているのはルノティーナだ。
当初は強気に出ていた彼女もリュースティアの魂が抜けたかのような状態を目にし、さすがにいたたまれなくなったらしい。
そしてお金を稼いでこようにもめぼしい依頼は全て自分が終わらせてしまった。
新しい依頼も待てば出てくるだろうがここは辺境の地であるメーゾル領。
期待はしない方がいいだろう。
「リュースティアとおねえちゃんがデートしてる時の話なんだけど、ラウス様と会ったのよ。それで何かリュースティアに話があるらしくて都合が付いたら城まで来てくれって。」
全く反応を見せないリュースティアに呆れながらもとりあえず要件だけは伝える。
ラウス様にも営業停止処分を貰ってしまったことは伝えてあるのであまり日にちを開けるわけにもいかない。
ラウス様は寛大な方だが普通は領主様に頼まれれば何をおいても優先しなければならない。
本当なら真っ先に伝えるべき内容なのだがあえてシズは伝えなかった。
理由は簡単。
要件があまりにも私的な事だったから。
そしてその内容に自分たちも関係していたから。
まぁ簡単に言えば気が進まなかったのだ。
だがいくら気が進まないとは言え領主様からの頼みだ。
いつまでも引き伸ばすわけにもいかず、気分転換にでもなればと思いこのタイミングで声をかけた。
「おー、じゃあ明日あたりにでも行くか。」
相変わらず心ここにあらずと言った状態で言う。
この分じゃ要件を言ったところで聞いてはくれないだろう。
シズは諦めてもう一つリュースティアが反応しそうな方の要件を伝える。
「あともう一つラウス様とお父様からの伝言ね。何か困った事があれば言いなさい、金銭面でも人脈面でも組合関係でもなんでも。限界はあるかもしれないけどなるべくならリュースティアの力にあなりたいって言ってたわよ。」
予想通り力になるという言葉に反応するリュースティア。
しかも金銭面という言葉を聞いたときの反応はすごかった。
それはもう首がもげそうなくらいの反応のよさだった。
いくらなんでも現金すぎる。
「マジ⁉助かるわー。やっぱり持つべきものは金を持った友達だな。」
金銭を都合してもらえるかもしれないという言葉に希望を見出し、完全にいつもの調子に戻ったリュースティア。
そしてそれと同時にこの場にいる全員が思った。
”いつから領主様はあんたの友達になった⁉”
*
「よく来た、リュースティア。まぁ座るがよい。」
翌日リュースティアは領主様の城に来ていた。
なぜかラウス様は屋敷に住んでいる者は全員連れてこいと言ったらしいので任務についてもらっているレヴァンさん以外は連れてきた。
もちろん残念精霊ズも一緒だ。
今は隣の部屋で待っていてもらっている。
いや、だっていくらなんでも金銭の支援を頼むのにみんながいるってさすがにかっこ悪すぎない?
なぜか変なところで体裁を気にするリュースティアなのであった。
「ラウス様の用事ってなんなんですか?」
いきなりお金を頼むのはさすがに不味いのでまずはラウス様の要件を聞こう。
ラウス様に満足してもらえればそのあと何かと頼みやすくなりそうな気がする。
「私の要件は皆がいるところで話したい。それよりも商業ギルドの兼、聞いたぞ。災難だったな。」
おっ、まさかそっちから話を振ってくれるとは有り難い。
この流れで何とか頼んでみよう。
「ええまぁ。こっちが悪いから強く反論できないのが痛いっすね。それでその、実はラウス様にお願いが、、、、、。」
「何となくはわかるが言って見なさい。」
平民であるリュースティアからの頼みと聞いても嫌な顔はしない。
さすがは領主様、人格ができてらっしゃる。
っても何かあれば頼れっていったのもこの人だっけ?
「実は、〚バーン‼〛」
リュースティアのお願いが口元まで出かかった時、部屋の扉が勢いよく開かれた。
そしていかにも偉そうな、態度のでかそうな男が挨拶もなしに部屋へと入って来る。
「ラウス!先の書状はいったいどういう事か説明してもらおう。いくら領主と言えどお前にそれを決める権利まではないはずだ。」
偉そうな男は口調も偉そうだ。
ノックもせずに部屋に押しかけ領主であるラウス様を呼び捨て。
挙句お前呼ばわりだ。
キレていいと思う。
というか不敬罪で処分じゃね?
「来客中だぞ。」
ラウス様は驚くほど感情のない声でそれだけを言う。
威圧等のスキルは使っていないはずなのに場の空気が一気に重くなる。
偉そうな男も無意識のうちにラウス様から一歩下がってしまったらしい。
これが領主の威厳、というやつだろうか。
「っっつ。ま、まぁいい。来客とやらが帰るまで待っていてやろう。その時にじっくりと話を聞かせてもらおう。いいな?」
額に汗を浮かべながらも威張るようにそんなことを言う。
声は上ずっているし冷や汗をかきながら言っている時点強がれても威張れてもいない。
初対面だがこの男の底の朝さが見えた気がした。。
「いいな、忙しいなどという言い訳は聞かんぞ。ん?お前は、、、。フン。」
あたかも三下みたいな捨て台詞を残し部屋を出ていこうとする男。
ナントなく成り行きを見守っていたリュースティアは男が扉に手をかけた時、目が合った。
どうやらリュースティアのことを知っているらしい。
リュースティアは男のことなど全く知らないが。
そして頭の先からつま先までたっぷりと見られたあと、鼻で笑われた。
なんだこのおっちゃん、ウザ。
大した感想もなくそれだけしか思わなかった。
うん、関わらないようにしよう。
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