第115話 積み重なる借金

「じゃあこれから第一回家族会議をはじめるぞー。」


屋敷の応接室にみんなに集まってもらった。

もちろんギルドの処分云々のことを話しあうためのもの。

家族会議と題したが特に深い意味はない。

何となく一緒に暮らしているし仲間と言うよりは家族に感覚が近かったのでそう命名しただけだ。

本当に深い意味はない。

だからさ、みんなして照れたような顔すんのやめてくんない?


「ふふふ、家族ですか。ついにリュースティアさんも私たちのことを妻だと認めてくれたんですね。」


リズさん?

聞こえてますから。

そしてそれは勘違いです。


「えっと、と、とりあえずこれからどうするかだよな。お金を稼ぐことは必然としてなんかいい考えあったりするか?」


だが不覚にもこの前のデートでリズにときめいてしまい今更ながら異性として意識してしまったためにあまり強く否定もできない。

実際リュースティア自身もリズたちに対する気持ちがわからなくなっていた。

それにいくらなんでも複数人に想いを寄せるのは人としてどうかと思う。

漢としての株は上がるかもしれないが社会的価値は暴落しそうだ。

とまあそんなわけでリュースティアは聞こえなかったことにした。

どのみち聞き耳スキルがなければ聞こえないような声だ。

今日もスルースキルには頑張ってもらうとしよう。


「そんなに差し迫った問題でもないと思うけど。2か月くらいならリュースティアが収納魔法で保管している物資で何とかなるし。それになんならギルドで依頼を受ければいいじゃない。今なら高額の依頼とかでも受けられるはずよ。」


とリズが最もなことを言ってくる。

そう言えば忘れてたけど冒険者ギルドに行けばふつうに依頼って受けれるんだったな。

そこで割のいい仕事を見つけてくればいいわけか。

久しく依頼なんて受けていないからすっかり忘れてたよ。

とりあえず収入元になりそうなものを見つけられたしひとまずは安心だと胸をなでおろす。


「あっ!」


なでおろした胸を逆なでするかのごとく一音が響く。

音の発生源、そこには何ともバツの悪そうな顔をした彼女が居心地悪そうに座っていた。


「えーっと、ギルドで依頼を受けるのは無理、かも。。。。」


みんなに見つめられたままそんな事を言う。

その場にいた全員が彼女の言葉の意味を理解できなかった。

そしてそんな状況をみてルノティーナが再び説明の為に口を開く。


「実はギルドで受けられるのは最低ランクの依頼だけなのよね。だから報酬は見込めないとおもうの。」


「それはどういう意味ですか?以前私がいったときには他にもたくさん依頼はあったと思いますが。」


確か俺が前にギルドの二回に泊った時もそれなりに依頼はあったはず。

なにせ多くの冒険者が依頼板の前でうろうろしていたくらいだ。


「うーん、なんていうか。暇だったから。」


バツの悪そうな顔をしながらも少しだけ誇らしそうなルノティーナ。

空をつかみ剣を振る真似をしている。

はっきり言ってうざい。


「暇だったからっていくつ依頼こなしたんだよ、、。てかじゃあその報酬は?

お前は居候なら少しくらい金払え。」


まぁいいか。

わざわざ働く必要がなくなったと考えればむしろありがたいし。

それにSランク冒険者に任せておけば面倒な事にもならないだろう。

意外といい事したんじゃないのか?

この馬鹿にしては珍しく。


「えっ?依頼板にあった依頼全部だけど?」


「は⁉あの量を一人で⁉やっぱりなんだかんだでルノティーナって強いんだな。で、金は?」


「ふふふ、そうよ!私は強くて美人!何をやらせても完璧にこなしちゃう天才なのよ!」


「うん。で、金は?」


「ふっふふ!私は天才!美しき女双剣士。敬い恐れ崇めなさい!」


「うん。で、金は?」


「・・・・・・。」


「で、お・か・ね・は?」


「・・・・・・。」


おい、顔を逸らすな。

自称美しき天才女双剣士。


「じーーーー。」


なおもかたくなに顔を背けるルノティーナ。

そしてそんな彼女を熱い眼差しでみつめるリュースティア。

これがロマンティックなシチュエーションでないことはだんだんと青ざめていく彼女の顔を見れば一目瞭然。

リュースティアはその視線に情景などではなく威圧を込める。

そしてこれでもかとだんだん圧を高めていく。

そんなリュースティアの威圧と比例するかのごとくルノティーナの顔からあふれ出す汗、汗、汗、あせーーーーーー。


「すいませんでしたぁ!全部使いました!」


ついに女がその視線に負け、落ちる。

もちろん恋愛的な意味でなく尋問的な意味で。


「使ったってそうとうな額になったはずだろ⁉どうやったら数日でなくなんだよ。」


彼女の言う通りギルドの討伐依頼をすべてこなしたとなれば相当な額になる。

いくらこの馬鹿でもそんな大金を一気に使うはずない。

落としたとでも言われた方がまだ納得できる。


「実は魔物の一体が森から街の方まで逃げまして、、、、。」


も、もしかして。

まさか、そんなことが?

いやまさか現実でそんないかにもな展開になるなんて、、、ねぇ?


「倒したのは良いけど勢い余って外壁まで破壊しちゃったのよ。だから報酬は全部修理代に天引き、それでも足りなかったくらいなんだから!」


はい、きたーー!

ナニコレ、えっ、こいつ馬鹿なの?


やっぱり馬鹿だよね?

普通魔物を一体仕留めるのに外壁破壊できるような魔法使わないよね?

それとも何か、俺がおかしいのか?

しかも足りないとかなぜおまえが怒る。


「もういい、お前の馬鹿さ加減には付き合う方が疲れる。それより足りない分ってどうしたんだ?」


「もちろん私個人のお金で払ったわ。それでも足りなかったからこのお店に建て替えてもらったけど。」


そうだよな。

Sランク冒険者っていうくらいなんだ、金はあるよな。

うんうん。

・・・・・・?


「って待て!このボケがぁ!何で勝手にうちの店で建て替えてんの⁉お前アホだろ、アホだよな!」


「うるさいわね、借金の建て替えくらいでガタガタ言うんじゃないわよ!このお店なら繁盛してるしすぐ返済できると思ったのよ!」


「いや、何でお前がキレてんだよ!今の状況わかってんの⁉ただでさえ金ないのに借金増やしてどうすんの⁉あーもうお前ひとりで全部返せよ!」


「ちょっとー!リューにぃは私のお兄ちゃんでしょ⁉妹のしでかした事くらい責任取りなさいよ!」


「誰がお前の兄だ!誰が!つか兄って言うならエルにでも面倒見てもらえよ!」


「お兄ちゃんになんて頼れるワケないじゃない!しかもお金貸してなんて、かっこ悪すぎだし、さすがに悪いわよ!」


「俺には悪いと思わないのかよ⁉」


「あっ、うん。だってリューにぃだし。」


「・・・・・・。」

「・・・・・・。」


気まずい沈黙が流れる。



「じゃあ借金も増えたことでどうするか話し合いましょう、か?」



*現在の私財 マイナス白金貨3枚と金貨67枚*


商業ギルドに支払った分のあまりを外壁の修理代にあてたが、足りなかった。

これで本当に所持金0。


どんだけ広範囲を壊したんだよ。





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