第86話 再び神界へ

「ここは、、、。」


リュースティアが目を覚ますとそこにリズたちはいなかった。

レヴァンさんやシルフの姿もない。


おかしいな?

確かにみんなの顔を見たし、シルフの声も聞こえたはずなんだけど。

それにここはすごく見たことがある。

いい思い出は一切ない。

できれば二度と来たくない、そう思っていた場所だ。


古臭いちゃぶ台。

昭和時代のような家具の数々。

そうだ、この時代遅れのせこい造りの場所はあのくそじじいかみさまのところだ。


「うん?なんじゃ、誰かと思ったらお主ではないか。えっと、名前は何じゃったかな。確かリックとかじゃったかの?」


そしてタイミングを見計らったかのように声をかけてくる神様くそじじい

つか誰だよ、そいつ!

俺の名前ってあんたが付けたんだろ!

勝手に付けときながら忘れてんじゃねぇよ、、、。


まあそんな事はいいません。

内心で盛大にツッコむだけですよ、はい。

なにせ俺は大人なんでね。


「お主、神であるワシに対してものすごーく失礼な事考えておるじゃろ?」


ぐはっ!

な、なぜバレた、、、。

俺のスルースキルは完璧に働いていたはずなのに。

これが神か!


「そんなことない。それより何で俺はまたここにいるんだ?」


動揺がなるべく顔に出ないように気を付けながらあたかも何もなかったかのように話す。

もちろん今更敬語なんて使わない。

なにせ恨みはあれど敬意を示すような事は一切ないからな。


「さあの。わしにもわからん。」


っておい!

神様だろうが!

わからん、とか言ってそっぽ向いても可愛くないからさぁ!

おっと、平常心、平常心。


「前にここに来たときは死んだときだからもしかして俺また死んだ?」


「いや、死んではおらんよ。と言うか転生した者が再び同じようにここに来ることはないのじゃ。それにお主は賭けの負債だしのぅ。」


「死んでない?じゃあ俺はまたあの世界に帰れるのか?」


ちょっと眉根がぴくってなる発言があったがスルーだ。

頑張れ、レベルMax俺のスルースキル。


「さぁのー。お主が死にかけているのは事実じゃし。そもそも普通の人間にはここ神界にはこれぬはずじゃ。これはもしかすると大物を負債にあててしまったかもしれん。惜しい事をしたのぅ。」


「っざけんなー!さっきから黙って聞いてれば負債、負債、あんたのせいで俺は勝手に転生させられてんだぞ!それになんだよ、あのバグ!結局治ってないのにとばしやがって。はい、もうキレた。神様だろうと知るか。覚悟は良いな?いいよな?今までの腹いせに一発くらい許されるよな?罰当たりじゃないよな?な?な?そうだよな?」


無理でした。

だって神様こいつムカつくんだもん。

俺がどれだけ苦労したかも知らないでさ。

今は死んでるか生きてるかとかどうやって帰るかとかの方が大事だけどここは欲望にち忠実に生きよう。

俺は今、神様こいつをぶん殴りたい。



「はぁはぁ、はー。じじいのくせに足腰頑丈すぎんだろ、、、。」


あれから30分。

神様と2人でひたすら追いかけっこをしていた。

だが結局リュースティアは一発も神様を捕らえることができなかった。

さすが神様と言うだけある。


「ぜー、はー。お主、年寄りはもう少しいたわらぬか。はぁはぁ。しかしお主、人のくせに神をここまで追い詰めるとは。はぁはぁ。」


息も絶え絶えな神様。

うん、少しはすっきりした。

ってことでそろそろ本題に入ろう。

あんまりここに長いしてみんなに心配かけるわけにもいかないしね。


「もういいからさ、戻る方法教えてくれよ。」


ちゃぶ台の前に腰かけ、湯呑に入れられたお茶で喉を潤す。

おっ、茶柱、、、、、立ってない。

どうした、神様パワーは。


「だからさっきも言うたであろう。わしは知らん。そもそも勝手に来たのはお主だしのぅ。」


「は?マジで知らなかったの?嫌がらせじゃなくて?」


「嘘などつくわけなかろう。わしがそんなせこい神に見えるのか!」


「ごめん、めちゃくちゃ見える。」


おお、漫画で見るようなずっこけ具合。

さすが神様だ、笑いを熟知していらっしゃる。

てかそんなことに関心している場合じゃないって!


「えっ⁉じゃあ俺どうすればいいわけ?もしかしてずっとここにいんの?こんな何もないような空間で、こんなバカじじいと一緒に、ずっと?」


「おい、後半はせめて心の中で言わぬか。まぁ心で言うたところでわしには分かるのじゃが面と向かって言われるよりは、、、。せっかく少しくらいなら協力してやろうと思ったのにやめじゃ。お主、ちいとも可愛くない。」


プイ。


そんな効果音が聞こえてきそうなほど大げさに後ろを向く神様。

お前いくつだよ。

そうツッコミを入れようと思ったがやめた。

なぜならこういう事をやる知り合いが数百年生きている精霊だと言う事を思い出したから。

けど幼稚園児並みのシルフと同レベルでいいのか、神様よ、、、。


「ごめん、ごめんって。これで機嫌なおしてくれよ。」


そう言ってすとストレージに入れておいた焼き菓子を取り出す。

どうやらこの空間でも魔法の類は使えるみたいだ。

と言う事はこっちに俺の実体があると言うことだろうか?

魔法が使えるなら転移魔法が使えるかもしれない。

そう思い、魔力を為魔法を発動しようとしたが無理だった。

そう言えば俺の転移魔法は空間魔法とかいうものの一種じゃなくて精霊魔法の一種だったな、、、、。

魔法が発動しないという事はここは精霊の力が及ばないことなんだろう。

シルフとの念話も繋がらないし外界との連絡手段はないのか。

さて、どうやって帰るか。


ちら。

ちらちら。


そんな事を考えていたためここにいる神様は完全にスルーしてたんだが。

さっきから神様がちらちら見てくるのがうっとうしい。

食べたいなら食べればいいのになぜ意地を張っている?

そんなに拗ねてるアピールがしたかったのか?

それともただかまってほしいだけとかだったらまじでうざいんだが。


「だから神様、ごめんって。これほんとに美味しいからさ、機嫌直して一緒に食べようぜ。な?」


面倒だったから声をかけた。

もちろん悪いとは思っていない。


「ふん、お、お主がそこまで言うなら一緒に食べてやらんこともない!」


うわ、めんどくさ。

なに、ツンデレ?

神様やって何百年も人と関わらないとここまでこじれちゃうわけ?

これがいわゆる老害とかいうものではないだろうか、、、。


「でさ、どうやったら帰れるのか見当ついたりしてんの?」


「一つだけな。しかしそれはお主だけの力ではどうしようもならん。下界を少し覗いてみたがお主は確かに死にかけておる。そしてお主を救う手立てはないようじゃ。当然ながら肉体が死んでしまっては帰る方法があったとしても帰ることはできぬ。」


まあそれはそうだよな。

普通に死んだ人が生き返るようなもんだし、それはわかる。

かといってこのまま死ぬ気もないけどさ。


「じゃあ取り合えず俺の体が無事だったとしてそっからは?」


「なに、簡単じゃよ。神の力でお主を再び転生と言う形であちらに送りこむのじゃ。お主は死んでおらん。それならばあの体と繋がっておるから問題なく帰れるはずじゃ。」


なんだ、けっこう簡単じゃん。

要するにあれだろ、前みたいにピッカーンってのをやってもらえばいいわけだ。

神様頼りってのに不安は残るが。

まぁ仮にも神様だし、そこは大丈夫だろ。


とりあえず無事に帰れそうな算段を見つけほっと胸をなでおろすリュースティア。

だがそこでなぜか浮かない顔をしている神様を見てしまった。

そして目が合った。

うわ、嫌な予感がする。


「えっと、なに?なんか問題でもあんの?」


おそるおそる尋ねる。

本当は聞く気などなかったがあの視線に耐え切れなかった。

くそ、あれは絶対になんかの魔法使ってやがる。


「実はの、とーっても言いにくいのじゃがの。わし賭け事好きじゃん?」


いや、知らんよ。

と言うか神様が賭け事好きって色々ダメだろ。

それより早く続きを話せ。


「それがついこの前も賭け事で大損をしてしまってのぅ。」


また魂でも負債として取られたか?

ほんとにダメだなこの神様。


「ついうっかり、ほんとにうっかりじゃよ?お主の事を話してしまったのじゃ。」


うんうん、うん?

まて、雲行が限りなく怪しいぞ。


「そしたら他の神もお主に興味を持っての。お主で賭けをすることになったのじゃ!」


じゃ!じぇねえよ!

えっ、何この神様。

勝手に魂を負債に取られて転生させただけじゃ飽き足らず人を賭け事の対象にしてんの?

馬鹿なのこいつ?

馬鹿だよね?


「それでの、わしは今までの負債を取り戻すべく大穴狙いをしたのじゃ!それもお主が途中で死ぬことなく、これからあの世界に降りかかる最悪を退け、世界の英雄となることにかけたのじゃ!」


そしてリュースティアが何か言い返す前に神様はピッカーンとやってしまった。


神様くそじじ、いつか絶対殺してやる。


そんな思考を最後にーリュースティアの意識は再び深い闇へと落ちていった。






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