第84話 その頃、遊技場
*
「ほら!お姉ちゃん、そっち行ったよ。」
「任せて!」
「なんのこれしき!」
「・・・ん!」
遊技場の一角に
両者、一歩も譲らずに戦いは白熱している。
もっとも彼女たちが熱い戦いを繰り広げているのはエアーホッケーなのだが。
リズ&シズの双子コンビVS.ルノティーナ&スピネルの師弟コンビだ。
ルノティーナとスピネルの場合、きちんとした師弟関係ではなく、ルノティーナが一方的に剣技を教えているだけだ。
なぜかルノティーナはスピネルをひどく気に入っている。
スピネルはルノティーナの事が苦手だと言うのに、、、、。
スピネルよりも年上のくせにルノティーナはそこら辺を配慮するという優しさは持ち合わせていないらしい。
自己中か!
蛇足かもしれないが現在リュースティアは
目の前の
このことを本人が知ったらすねることは間違いないだろう。
(どうせ俺なんて、、、、。)
リュースティアのそんな声が聞こえてきそうだ。
だがそんなことなどいちいち考えている暇などない。
なにせ今ここで繰り広げられているのは決して負けることのできない女の闘いなのだから。
*
「うわー!負けたぁ。」
白熱の戦いが終了した。
あれだけ白熱し、どっちも譲らない戦いをしていたにも関わらず蓋を開けてみれば
リズ&シズの圧勝だった。
さすが双子、そのコンビネーションはSランクをも上回る。
「お姉ちゃん、やったわね!」
「ええ。さすがのティナも私たちのコンビには敵わなかったみたいですね。」
圧倒的勝利を収めた二人が得意そうに言う。
一方、敗者となった二人はと言うと、、、。
「いやだからやっぱりあの時スピちゃんが邪魔したからいけないのよ。」
「・・・違う。ティナが悪い。」
「あそこは絶対に私がいくところだったじゃない。それに私の事は可愛くて強い、お師匠様!とか美人で腕も立つ先生!って呼んでって言ったじゃない!」
「・・・あたま、悪い?」
あははー。
全く聞いていませんでした。
何だろう。
私たち、勝ったよね?
内心でそんなことを思うリズとシズでした。
*
「それにしてもほんとに見たことないものばっかよねー。」
白熱した戦いを終え、一時休戦中の4人。
メイドらしき人が持ってきてくれたお茶で喉を潤しつつ、リュースティアが持ってきたお菓子を口にする。
そして切り分けられたパウンドケーキを食べながらルノティーナがそんなことを言う。
いや、今更かよ!
リュースティアがこの場にいたらそんなツッコミを入れる事は間違いない。
だが幸か不幸かこの場にリュースティアはいない。
「そっか、ティナでも見たことないんだ。そりゃ私たちが見たことないのも無理ないわよねー。お姉ちゃんはどう?何かの本とかで見た事ないの?」
もちろんティナの発言にツッコミを入れる事なくシズが言う。
メーゾル領からほとんど出たことがない自分たちは当然としてSランク冒険者で世界各国を冒険してきたであろうルノティーナが知らないことが意外だった。
「私も見たことないわ。けどリュースティアさんなら知っているかもしれませんね。この遊具を見てもそんなに驚いていませんでしたし。」
リズがもっともな意見を言う。
リュースティアがそう驚かなかったのも無理はない。
なにせここにある遊具たちは元の世界のゲームセンターには必ずと言っていいほど置いてある遊具ばかりだったのだ。
せいぜい動力はどうしているんだろう、と不思議に思ったくらいだ。
「・・・面白いからいい。」
「それもそうねー。深く考えるのは性に合わないし、今は思いっきり楽しみましょう!」
スピネルの意見に同意するルノティーナ。
本来の目的は
ちらりとそんな言葉が脳内をよぎったリズだったが目の前の遊具の誘惑には勝てなかった。
しかもそのあとに続けられたルノティーナの一言が完全にリズの頭から冒険者依頼の事など吹き飛ばしてしまった。
「次は個人戦をしましょうか。景品はそうねー、リューにぃと1日好きなことができる、とかどう?」
「「「やる!!!」」」
勝手に景品にすんな!
リュースティアがこの場にいたら間違いなくそう言って言い出しっぺのルノティーナをきつくお仕置きする場面だが、何度も言うように彼はこの場にはいない。
ちなみにその彼、はというとヴァンとの闘いの最中である。
守りに徹しながらここにいる4人の避難を今か今かと待っている。
*
いきなり黒い影に囚われた。
あまりにも突然でSランクの冒険者であるルノティーナですら反応できなかったほどだ。
最悪な展開を想像した4人だったが彼女たちを捕らえたレヴァンとか言う人物の話を聞いてそうではないことが分かった。
ならば4人が考えることはただ一つ。
早く遊戯場に戻して!
女の闘いに決着を付けなければ、、、、、。
思っていたよりも早く遊技場に戻ることができた。
中庭から遊技場に向かう途中にぼろぼろのリュースティアが見えた気がしたが今は彼に構っている場合じゃない。
内心で詫びながら4人は遊技場へと急ぐ。
のちにそのことを死ぬほど後悔するのだが、、、、、。
彼女たちが次に彼を見たのはレヴァンたちの隠れ家。
そしてそこにいたのはベットに横たわり、生死の境を彷徨うぼろぼろになったリュースティアだった。
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