第69話 VS.伯爵?

「なんかあったのか?」


「うわ!って、なんだリュースティアか。脅かさないでよ。」


リズたちからのSOSが届いたから急いで転移してきたんだけど。

怒られた。

えっと、さすがにそれはひどくない?

すごく優雅にお茶飲んでくつろいでるし。

ホントにSOS?

俺、貴族とかあんまり関わりたくないんだよ。


「ほう。お前がリュースティアか。ノックもなしに領主の間まで入ってくるとは礼儀がなっていないのではないか?しかも城に張られていた結界も破るとは。」


ん、誰だこの人?

備考様ーっと。

ああ、この人がプトン伯爵なんだ。

なんか貴族よりも冒険者の方が似合うような風貌してるね。


っていうか結界があったのか。

だから転移するときに少し抵抗を感じたんだな。

まぁ魔力増やしたらすんなり転移できたんだけどさ。

そもそも壊されたくないなら看板でも立てておいてほしいよ。

たかが一人に破られる結界もどうかと思うけど。


「あんたが呼べって言ったんじゃない。結界の一つや二つ多めに見なさいよ。」


謝ろうとしたらシズに先を越された。

なんか、もしかしてかなり不機嫌なのではないだろうか?

仮にも領主だぞ。

そんな態度でいいのか?

少しハラハラするので視線でどういうことなのかリズに問う。


「シズはというか私もなんですけどあの人が嫌いなんです。以前に無理な縁談をまとめられそうになったことがあって。シズはその時のことを根に持っているんです。」


無理な縁談だと?

シズたちが嫌うのも無理ない。

どんなことをしたのかは知らないけど男の風上にも置けない奴だ。


「まったく可愛げのない奴らだ。だがそこがまたいい。今からでも遅くない俺に嫁げ。」


そう言って近くにいたリズの腕を掴み

抱き寄せようとする。


「嫌っ!」

「お姉ちゃん!」


なんだこいつ。

自己中すぎるだろ。

本人の意思も聞かず。

と言うかその汚い手でリズに触れるな。


そう思うよりも先に体が動いていた。


「おい、リズが嫌がってるだろ。離せ。というかあんたなんかが2人を貰うだなんて100万年早い。身の程を弁えた方がいいぞ。」


瞬動で二人の間に割り込むとリズの腕から力技で伯爵の手を振りほどきリズを自身の体に引き寄せる。

抱き寄せたみたいな形になっちゃったけど仕方ないよね?

不可抗力だ。

だからそんなにキラキラした目で俺を見るのはやめてください。


「いいなぁ、お姉ちゃん、、。」


っておい!

聞こえてるから!

俺の聞き耳スキルそう言うの全部拾っちゃうからさぁ。

うらやましがるな。

不可抗力だ。


「き、貴様。俺を愚弄するか!冒険者の頂にまでたどり着いたこの俺を。よかろう。元から貴様とは手合わせをするつもりだったのだ。ついてこい。そこで貴様を完膚なきまでに叩き潰し二人を我がものとしようではないか。」


は?

いや待て。

誰が戦うなんて言った?

というか二人をかけるみたいな空気になってるんだけど。

リズ、シズ、何とかしてくれ。


2人に助けを求めるが無理だった。

なんせ二人とも目を輝かせリュースティアが勝ち、自分たちを娶ってくれることを期待していたから。


あのー、お二人さん?

俺別に勝っても2人と結婚しないよ?

とはとてもじゃないけど言えない雰囲気だ。

まぁ、二人の為にも負ける気はないんだけどさ。


「ここだ。準備は良いか?武器も魔法も何でも使っていいが相手を死に至らしめるような行為は禁止だ。大けがくらいなら後ろに控えている魔術師が何とかしてくれる。思いっきりでいいぞ。ではアニア、審判を頼めるか?」


アニアと言う人物を呼び、にやりと意地の悪い笑みを浮かべる伯爵。

絶対なんか企んでるだろ?

そんな奴に審判なんてやらせたくないなぁ。

どうしよう。

まぁ、何もできないくらいの瞬殺にすればいいか。


「待ってください。審判が伯爵様の者とは公平ではないのでは?伯爵様に有利な審判を下すかもしれません。」


「そうよ、汚いあんたの家臣ですもの。変なこと考えてるに決まってるわ。」


リュースティアがなにか言う前に2人が異議を申し立てる。

いやー、俺は別にそれでも問題ないんだけどなぁ。

って言おうとしたらリズに笑顔で、そうあの笑顔で黙ってろと目で言われた。

はい、黙ります。


「ふん、戯言を。そんなことするわけないではないか。」


「じゃあ誓える?神に誓いなさいよ。公平に戦うって。」


神に誓うってもしかしてここ宗教国家?

こわい、かも。

というかこのままだと平行線になりそうだ。

もう少しこの街の観光しておきたかったんだけどなぁ。


「ちょっといいかな?僕が代わりに審判を務めよう。それじゃあだめかい?」


まさかの第三者登場。

というかこの声、、、。

あいつどっから来たんだ?

俺あいつのこと巻いたと思ったんだけどな。


「アル?よく俺の後を追えたな。」


何となく俺についてきた気がするのでかまをかけてみる。

皆が誰こいつ?みたいな視線を向けてくるがもう少し我慢してもらおう。


「うん、大変だったよ。だってリュースティア君ってば急に転移魔法使っちゃうんだもん。探すだけで一苦労だった。」


転移しことがわかっていたのか?

というか転移した人間をってマジか。

俺のマップと同等、もしくはそれ以上のスキルを持っているのかもしれない。


「さすがは現役の勇者ってとこか?」


「あれ?なんだ気づいてたの?あっちゃー、じゃあ僕すごい恥ずかしい人じゃん。気づいてたならもっと早くに言ってくれよ。」


どうやら隠す気はないみたいだ。

勇者と言う単語を聞いてこの場にいた者の動きが止まる。


「じゃあ改めて自己紹介しようか。僕はアルフリック。今代の勇者を務めている。」


そう言って腕から金属のわっかを外す。

どうやらあれが認識阻害の魔法付与が施された魔道具だったらしい。

周りの人間も彼が勇者であること信じる気になったようだ。


「勇者が何の用だ?この街には勇者が満足できるようなものは何一つない。」


勇者が現れたことに若干ばつが悪そうな領主。

なんか後ろめたい事でもあるのかな?


「それは後で。まずは君たちの立ち合いだ。僕が審判をすることに異論がある人はいるかい?」


そう言って周囲を見渡す。

もちろん反対するものなどいない。

と言うよりできるわけがない。

それは領主といえども例外ではなく、悔しそうに顔をゆがめつつも何も言わない。



「勝敗は相手が戦闘不能になるか負けを認めるか。相手を死に至らしめる攻撃は禁止。その時は僕が全力で止めにかかるから。じゃあ、いいね?はじめ!」


対峙するリュースティアと伯爵の間にアルだ立つ。

そしてついに戦いの火ぶたが切られた。


「そこまで。」


勝敗は実にあっけなくついた。

リュースティアの圧勝だ。

伯爵の戦い方はいたってシンプル。

剣技のみの特攻型だ。


となれば当然リュースティアも剣技で対応するわけで、、、、。

エルランドに仕込まれた剣技、ルノティーナにも劣らないスピード。

それらを持っているリュースティアが負けるわけない。


手ごたえなさすぎだろ。

この強さでこいつは何を勘違いしてるんだ?

これならリズやシズのほうが多分強い。


「はぁ、異世界でも馬鹿な奴っているんだな。」


脳天に重い一撃をくらい意識を飛ばしている伯爵を見ながら誰にとでもなくそんなことをつぶやくのであった。

前途多難。

南無~。




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