第65話 スキルの有能性

「ふう、リュー兄ぃってほんとに規格外ね。」


世界の終焉、縮小版を片付けたあと、定番のティータイムになった。

丁度よさそうな木陰があったのでテーブルとイスを並べた本格的なものとなった。

机の上に本日のメイン、紅茶とケーキを乗せる。

今回は乾燥させたフルーツを紅茶に浮かべたフルーツティーとスコーンの組み合わせである。

スコーンはプレーンにはちみつ、ナッツ、フルーツなどいろいろと用意してある。

もちろんつけて食べられるように生クリームやジャムはもちろん、チーズクリームやあんこなども用意してみた。


「ティナ、気にしたら負けよ。これがリュースティアなんだから。」


「そうですね。ここまで来るともう諦めるしかありませんよ。」


「・・・ん、最強。」


もういいよ、慣れたから。

なんとでも言え。

それよりこのスコーン上手いな。

ジャムとよく合う。


「そんな事よりこのすこーんって言うの?すっごく美味しいわね。」


出たよ、またそんなこと呼ばわり。

でもスコーンのおいしさに気付くとはなかなかやるな。


「作り方はシンプル、手間もいらない。だけどいくらでもバリエーションが作れる。家庭菓子の定番だな。ジャムもフルーツに配合、煮詰める時間までこだわっているから上手くないわけがない。」


って、聞いてる?

うん、聞いていないね。

お菓子に夢中だ。


「はいはい、じゃあ俺は一回屋敷に帰るからのんびりしててくれ。」


「行ってらっしゃいませ。余計なお世話かもしれませんがくれぐれも気を付けてください。」


リズだけだ。

そうやって心配してくれるのも、送りだしてくれるのも。


というか少しくらい屋敷に帰ることに対して反応してくれてもいいと思う。

慣れって怖い。




「ただいま。うん、やっぱり自宅はいいな。」


転移魔法でサクッと自宅に帰って来た。

やる事はただ一つ、お菓子を作る。

実はお菓子は創造のスキルで作ることができたりする。

だけどパティシエとしてそれだけはスキルに頼っちゃいけないと思う。

だから旅に出てからもこうして帰ってきてはティータイム用のお菓子を作っている。


厨房の器具に魔力を流し、準備をする。

そして気づいた。

たしか空気中には魔素があるって言っていた。

そして俺のスキルはあるものから別の物を創りだすこと。

それなら空気中の魔素から魔力を創造することもできんじゃね?


「えーっと、いつもと同じように魔素を手に収める感じで魔力を流せばいいのか?」


魔力を流しリュースティアの手が青く光る。

よし、成功。

って駄目だ。

魔力が創造できたことは何となくだけど感覚で分かる。

でも肝心のその魔力を入れる容器がない。


「いや。問題ない、かな?」


魔素について学んだおかげか、想像補助のスキルのおかげか何とな魔力は何にためるべきかわかった気がする。

リュースティアはストレージから魔鋼を取りだす。

そして創造スキルで中を空洞にし、小さく分ける。


「よし、もう一回。」


そしてさっきと同じように創造で魔素から魔力を創り魔鋼に詰めていく。

よし、これで簡易電池の完成だ。

と言うかこれなら魔鋼じゃなくても魔力と相性のいい鉱石なら電池になる気がする。

なんなら魔石でもいんじゃね?


まあそんな事を思ったがあとで試せばいい。

今はお菓子を作らないと。

ついでに何日か分のご飯も作り置きしておかないとね。

あいつら食事にはうるさいんだよな。


「よし、完成!これであいつらも満足するだろう。」


お菓子を作り終えたリュースティアは転移魔法でみんなが休憩している場所に戻る。



「ただいまー。」


って、寝てるし。

えっと、食後のお昼寝、かな?

ぐっすりと眠ってるこった。

いいんだ別に、寂しくなんかないもんね。


「まあいいや、今の内にさっき思いついたことを試しておくか。」


リュースティアがさっき思いついたこととはルノティーナが言っていたことだ。

スキルで魔法が作れるか試そうと思う。

魔素から魔力が作れることが分かったしだったらそこから魔法だって作れるはずだ、と思う。


「よし、まずはさっきと同じように魔力を創造、そして魔力が消える前にもう一回創造っと。」

 


うん、無理。

魔法の創造はできないみたいだ。

リュースティアは荒れ地と化した森を見下ろしながらそう結論を下す。

魔法を創造しようとしたら暴発した。

咄嗟に飛行フライで上に逃げていなかったら危うく巻き込まれるところだったよ。

馬車を止めているところで実験をしなくて良かった。


普通に考えて無理だと思っていたし落胆はしていない。

暴発するのは予想外だったけど。

まあ仮にうまくいったとしても多分普通に無詠唱で放つ方が早い。

創造の方が魔力消費が少なく済むけどそもそも魔力量に困ったことはない。


「じゃあ次。無機物から有機物の創造だな。」


これは自信がある。

だって無機物から有機物を創ることは科学知識を用いれば不可能じゃない。

水素と酸素さえあれば水が作れる。

逆に水さえあれば酸素と水素が作れる。

できないわけがない。


この実験はリュースティアの予想通り苦も無く成功した。

無から有も、有から無も創る事ができた。

ものの試しでストレージに創った酸素をしまってみたらこれも普通にできた。

ちなみに100ℓごとを1単位として収納されている。

これは水や他の気体も同じだった。


そして最後は魔方陣の創造。

これが簡単にできればリズたちの身を守る手段の一つとなる。

できれば成功させたい。


そもそも魔方陣を作るのに手間とお金がかかるのは陣を書くことができないる人が少ないからだ。

ただ陣を書けばいいと言うものでもないらしいく特別なペンとスキルが必要らしい。

ちなみに出発の時に魔方陣を見たがおそらく特別なペンと言うの純度の高い魔石を砕いて、魔力を流し、インクにしたものだ。

備考欄のおかげで魔方陣に関しては知識ばっちり、スキルを行使するうえではありがたい。

肝心のスキルというのは魔方陣に起こす魔法を行使できるかどうか。

まあ使えない魔法の陣なんてかけるわけないから当然か。

それに時間をかけすぎると陣が完成する前に魔石の粉末から魔力が抜けきって陣が完成しても魔法が発動しない。


と言う感じでかなり色々とややこしい。

だけどそんなのリュースティアには関係ない。

早速ストレージから純度の高い魔石を取り出し、インクを創る。

そして劣化しないようにストレージにいったん戻したら次はさっき街に戻った時に勝ってきた魔方陣一覧を取り出す。

これは陣を勉強するもの向けの図解集。

これで陣を覚えて創造すれば魔方陣は創れるはず。


「うわ、想像以上に魔力持っていかれるな。」


魔方陣の創造はできた。

ただ全部がうまくできるわけではなく、上級魔法は陣にすることができなかった。

風と水魔法は最上級まで陣にできたからリュースティアの魔法スキルがそこまで達していないのだろう。

ちなみに図解集に乗っていない魔法も何となくでやったら魔法陣にできた。

と言うか普通の魔法陣は使い捨てなのだがなぜかリュースティアが作った魔方陣は3回使用可だった。


その原因が精霊の加護のおかげとリュースティアの魔力量だという事に気付くことはいつものごとく、ないだろう。


そしてその大量生産した魔方陣をリズたちに見せてドン引きされたことも言うまでもないだろう。


ちなみに、リュースティアの作ったご飯は大変美味であったらしい。。
























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