第63話 モテる男はつらい
*
「ふぁぁ。暇だな。」
馬車から外を眺めながらそんなことを言うのは
本人がこの二つ名を聞いたら床を転げまわることは間違いない。
ちなみにこのイタイ二つ名の事はリズたちには話していない。
自分の口からこの二つ名を言うだけでリュースティアは屍と化すだろう。
いい大人は厨二に免疫がないのだ。
「なら一緒に修行しますか?」
暇そうにしているとリズが声をかけてきた。
リズは精霊魔法の修行中らしい。
修行とは言っても精霊と戯れているだけにしか見えないんだよね。
だけどシルフ曰く精霊魔法とは精霊との信頼が絶対らしく日々のコミュニケーションは大切らしい。
「そうだな。リズは氷の精霊だっけ?」
「はい、精霊と言っても微精霊なのでシルフちゃんやディーネちゃんとは比べ物にもなりませんが。可愛いですよ。」
可愛いってそれでいいのか?
仮にも自分を守る精霊だぞ。
「でも精霊魔法の修行って他にはどんなことするんだ?」
「私が契約している子は微精霊なのであまり大きな力をもっていないんです。だから精霊との
なるほど、道理で風魔法を使う時に魔力をほとんど消費しないわけだ。
シルフに感謝しないとな。
「でもリュースティアさんには必要ない事かもしれませんね。」
ん?
どういうことだろう?
「だってリュースティアさんほど精霊に好かれている人見たことありません。」
「そうなのか?」
精霊に好かれてると言われても実感はない。
まあシルフやディーネに好かれてる実感は十二分にある。
むしろこっちが引くくらいには好かれている、と思う。
ちなみに今あの二人は何か用事があるとかでどっかに出かけている。
念話が届かないことからも考えてかなり遠くまで出かけているらしい。
馬鹿と変態だけに心配だ、、、。
「もしかして自覚ないんですか?リュースティアさんも精霊視のスキル持ってましたよね?」
持ってるけどそれがどうした?
精霊視のスキルってあんまり、というかほぼ使わないんだよね。
こんな事言うとアレだけどさ、精霊を視るだけのスキルだよね?
戦闘中に使うと視界に光が入ってきて邪魔なんだ。
「精霊視のスキルを使ってちゃんと視たらわかります。」
ここはおとなしく精霊視を使った方がよさそうだ。
なんかリズがヤバイ。
「うわ、なんだこれ!」
リュースティアが精霊視を使って周囲を見渡すとリュースティアの周りに群がっているたくさんの精霊を視ることになった。
リュースティアの体が見えないくらいの精霊たちが集まっている。
ほとんどが微精霊たちだが中にはそれなりに力のある精霊たちもいるようだ。
「わかりましたか?リュースティアさんはすごく精霊たちに好かれてるんです。だからリュースティアさんが戦う時はこの子達がサポートしてくれているんですよ。もしかして、それも気づいていなかったんですか?」
「そ、そんなわけないだろ。ちゃんとこいつらが手伝ってくれてたのは知ってたさ。」
はい、嘘です。
「リュースティアさん?嘘は、よくないですよ。」
忘れてた、、、、。
リズは魔眼持ち、嘘は通じないんだった。
「すんませんでしたー!まったく知らなかったです。」
潔く頭を下げるリュースティア。
相変わらずヘタレは健在である。
「リュースティアって馬鹿ね。」
そんな二人のやり取りを見ていたシズが呆れた様子でそんなことを言っている。
そんなこと言うけどさ、実際知らなかったんだよ。
俺がこんなにモテるなんて。
まあ精霊限定なんだけど。
というか精霊視で視た後だとちょっと動きにくい。
あれだけの精霊が自分の体にまとわりついているって考えたら結構怖いな。
「なあ精霊たちを体から離すのはどうしたらいいのか分かるか?」
「それは私にもわかりません。精霊に好かれようとする人はいますけど逆はいないですからね。まあ普段の生活に影響があるわけでもありませんし精霊視のスキルを使わなければ見えませんから。気にすることないと思いますよ。」
いや、まあそれはそうなんだけどさ。
一回見ちゃうと気になって仕方がない。
気にしすぎかもしれないけどなんか精霊の気配を感じてきた。
ヤバイ、ざわざわしてる。
えっと、モテてるんだよね?
喜んでいいことなんだよね?
無理!
恐いわ!
「シルフたちが帰って来たら聞いてみるか、、、、。」
モテるのもいい事ばっかじゃないんだな。
また一つ学んだよ。
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