第61話 二つ名ここに
「は?二つ名?」
部屋を出ていこうとしたら背後から不吉な単語が聞こえた。
二つ名、だと?
「うん。Bランク以上の冒険者になったら二つ名を名乗る決まりなの。与える者は領主様だったりギルドマスターだったり、いろいろね。Bランク以下でも二つ名は名乗れるけどBランク以上になって初めて公的なものになるの。だから二つの名の有無は冒険者としての格を示すものでもあるのよ。」
「俺、Eランクなんだけど?」
そうなんだよね、まだ登録したばっかでランク上がってないんだ。
だから二つ名とかいらん。
呼ばれるだけで確実にダメージを受ける。
体とは違って心の耐久値は低い。
ヘタレの心臓はガラスのハートなのだ!
「・・・・・・。さっ、二つ名決めましょう!」
おいっ!
まさか五代冒険者依頼に挑む奴がEランクなわけないよな。
うん、その驚きはわかる。
でもさ、流すなよ。
実力とランクは関係ないってさっき言ってなかったか?
自分が受け入れられないことをなかったことにするのはやめてくれ。
「・・・。俺Eランクなんで。まだ早いっす。」
助けて!
ギルドマスター!
「まぁいいじゃねぇか。どっちみち国に報告するのに必要なんだ。それにこの依頼が終わったらSランクに昇格だ。早いか遅いかの問題だろ?気にすんな。せいぜいEランクなのに二つ名を名乗ってる痛い奴って思われるくらいだ。」
き、貴様、裏切りおったな、、、、、。
というか待て。
それが一番キツイ。
厨二病はとうの昔に卒業したんだよ、俺。
二十歳すぎて厨二ネームは痛い、、、、、、。
「これ、どうやっても避けられない?」
「「イエス!」」
うわー初めて見たよ君たちのそんなシンクロ。
仲良しじゃん。
良い笑顔だこと。
お前らぜったい面白がってるだろ?
*
「はい!じゃあこれで決まり!リュースティアさんの二つ名は【
「ごめんなさい!」
無理、無理!
なにその名前、イタすぎる、、、、。
虚無の風ってなに⁉
寂しがりやか!
一人でたそがれてろ!
「えー、いいじゃない。私はカッコいいと思うわよ?少なくとも私の風来坊なんかより全然ましじゃない。」
なぜうらやましそうにそんなことを言われてしまった、、、。
風来坊、確かに嫌だな。
だがそれとこれとは話が別だ。
「もっと普通なのにしてくれ、、、、。俺のHPがもたない。」
「普通って言われても今のは割と良心的な方よ?」
えっ、これで?
やばい、こっちの人の感覚おかしい。
さすがファンタジーと言うべきか、、、、。
「んー、じゃあ【
「・・・・・・。」
えっと、まじの奴だよね?
彼女シラフ?
飲んでる訳じゃ、、、、ないね。
「さぁ、さっさと選んでよ。自分で決められるなんて贅沢。」
ルノティーナが若干怒りだしてるんだけど怒りたいのはこっちだ。
自分で決めるも何も選択しが4つしかないじゃないか。
しかも究極の選択だぞ?
「なぁ、ちなみにドゥランさんの二つ名はなんていうんだ?」
ちょっとでも時間を稼ぐんだ。
そして今のうちに何か打開案を考えよう。
頑張れ、俺!
「ん、俺か?俺は【
無限の嘘っておっさん、何したんだ、、、、、。
ていうかダメだこのおっさん。
こいつも敵だ。
「あーもう面倒だわ。最初の奴で良いわね?はい、決まり!」
ルノティーナがそう言うと持っていた紙が光る。
確かあれは五代冒険者依頼の契約書だった気がする。
というか、待て。
俺はまだそれでいいとは言ってない。
「ふう、とりあえずこれでクエストの前にやっとくことは終りね。じゃあ私は向こうの子達に連絡してこくるわ。ドゥランさんは悪いけどこの書類を国王まで届けてくれる?確かここにも
おい。
待て。
「ああ、その役目は引き受けよう。出発は1週間後で良いな?」
おい。
だから待てって。
「そうね、それくらいはかかると思うわ。じゃあ何かあったらしばらくはリュースティアさんのところにいるから。じゃあリュースティアさん、あとでね!」
おい。
だから待て。
というか人の話を聞け。
「小僧、俺もそろそろ行くぞ。いいか、1週間後までに共にクエストをこなすパーティを見つけておけよ?じゃあな。」
おい。
お前もだ、人の話を聞け。
そもそもパーティで挑むなんて聞いてない。
なんでいつも大事なことを言わないんだ、、、。
「そういや、1個言い忘れてた。旅に出る前に冒険者カード更新しておけ。ランクは上がらないがジョブは更新しておいた方がいい。」
ねぇ、それさたぶん結構大事なことだと思うんだ。
*
「お待たせしました。冒険者カードの更新という事でよろしいですか?」
ギルドマスターにカードがどうのこうの言われたけどよくわからなかったでラニアさんに直行した。
やっぱりあんなおっさんよりも百倍は頼りになる。
「はい、よくわからないんですけど更新すると何かいい事あるんですか?」
「そうですね、リュースティアさんはまだジョブがすべて仮の状態ですのでそれを本職にします。と言っても練度によっては仮のままだったりするんですけどね。仮がとれると適正ジョブの恩恵が受けられます。あとは
なるほど、さすがラニアさん。
わかりやすい。
貢献度とかはどうでもいいけど恩恵が得られるのはもうけもんだな。
「じゃあ、とりあえずお願いします。」
そしてラニアさんがしばらく石盤の上で操作しカードを返してくれた。
ステイタスを見られないリュースティアにとっては唯一自分の技能を見られるものだ。
わくわくしないわけがない。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
【名前:リュースティア〔
【レベル:1】
【所属:メーゾル】
【冒険者ランク:E】
【ジョブ:魔法使い〔風S⁺・水A⁻・精霊A⁺〕・錬金術師〔錬成A・調合A〕・剣士S⁺⁺・双剣士B・射手〔仮〕・召喚術師〔仮〕・聖者〔C〕】
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
えーっと。
まだ仮が付いて居るやつは取得してないからしょうがないとして聖者がCになってるのは何でだ?
神聖魔法も光魔法、治癒魔法は使えない。
あっ、もしかして前に瘴気に侵されてた森を浄化したからか?
あれ水魔法だけど浄化なら何でもいいのか。
ていうか精霊って召喚魔法には含まれないのな。
今度何か召喚してみよう。
「じゃあラニアさんありがとうございました。」
あれ、なんだろう。
ラニアさんの顔が、、、、、。
どっかで見た顔。
そうだ、最初にここで石を爆発させたときの顔だ。
また何かやらかしたか?
「あ、ありえません。ひと月ほどでジョブをここまで昇華させるなんて。しかもレベルは1のまま、ランクアップに必要な経験値も溜まっていません。リュースティアさん、何をしていたんですか?」
ラニアさん、そんな化け物を見るような目で見ないでください、、、、。
ガラスのハートなんです、俺。
「あっ、すみません!他人のプライバシーに踏み込むなんてギルド職員失格です。今のは忘れてください。」
リュースティアの微妙な顔を察してかラニアさんが慌てた様子で謝ってきた。
怒ってないんだけどさ、俺にもわからんのよ。
聞かんでくれ。
「大丈夫ですよ。それより五代冒険者依頼に一緒に行ってくれそうなパーティに心あたりありませんか?」
「ありません!」
うわー、即答だよ。
しかもいい笑顔だ。
でもそうだよね、難易度高すぎて挑もうとする奴いないのに参戦するとか言われたそいつの脳みそ疑うわ。
「で、ですが何名か有能な方はいらっしゃるので声をかけてみてもいいと思います。リスト作成しておきますか?」
「じゃあお願いします。今度取りに来ます。」
断るのも悪いのでお願いしておこう。
誘うかは別にしてこの街の強者を知っておけば後々面倒に巻き込まれなくて済みそうだ。
「ではお待ちしてますね。【
ぬおーーーーーーー!
ら、ラニアさんまで、、、、。
そんな悲痛な絶叫がギルド内に響いた後には白い灰と化したリュースティアがいたとさ。
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