第58話 スキル再び、そして一人増えました。

なんだかんだで日が暮れてきてしまったので早い所作業を終わらせたいと思う。

そうしないと明日の営業に実害が出そうなんだよね。


「おーい、そろそろいいかー?もしもーし。」


うん、誰も聞いてくれない。

おかしいな俺の周辺にだけ雨が降ってきた、、、、。

ていうかさ、見たいって言ったのルノティーナだよね?

すっかりそのこと忘れてるよな、あの顔は。

もういいです、、、。


「【風壁ふうへき】」


リュースティアはこっそりと風の結界をリズたちの周囲に張る。

これでリュースティアがスキルを使っても気づかれることはないだろうし、スキルの影響を受けることはないだろう。

幸いみんながいるところは裏庭らへんだし、そこは後で別に直せばいい。


「スピネル。」


リュースティアは聴力に優れた狼人族のスピネルだけに聞こえるように名前を呼ぶ。

スピネルは暇そうにしてたからこっち側で少し手伝ってもらおう。

呼んだ瞬間にスピネルの耳がピクって動いた。

やっぱり耳は良いね。

目が合ったので手招きをしてこっちに呼ぶ。

体の後ろに見える尻尾が揺れているところを見ると嬉しいみたいだ。

うん、尻尾は素直だ。


「スピネル、今から家直しちゃうから手伝ってくれるか?」


「・・・ん。なにする?」


スピネルがこっちに来ても誰も気が付かない。

良いんだ、俺なんてどうせ、、、。


「リュー?」


スピネルが心配そうな顔で下から顔を覗いていた。

いかんいかん、子供を心配させるなんて親失格だ。


「大丈夫だよ。それよりさ、暮らしてみてなんかこんなのあったらいいなとかこっちの方が便利だなって思うところなかったか?」


スピネルに手伝ってもらいたいこととは家の改善案を出してもらう事だ。

なんだかんだでリュースティアは家にいないことが多かったので使い勝手という部分はいまいちわかっていない。

何で一番家にいるスピネルに聞いてみようと思ったわけだ。


「・・・お店狭い?」


そう言ってスピネルは言葉足らずながらも改善案を述べていってくれた。

しっかりしているとは思っていたけどここまでちゃんと見ているとは思わなかった。

すごく頼りになるな、さすが俺の娘!


もうすっかり親ばかなリュースティアであった。

だがリュースティアの評価も決して親ばかなものだけではない。

スピネルは読書好きが功を奏してか尋常ならざるスピードで知識をつけていた。

その知識量はそろそろギルド職員のレベルに達しそうであった。

もっとも本人は知識よりも戦う術を身に着けたいようだが。


「なるほどな、さんきゅ。参考になった。今度お礼になんでもしてやるよ。なんでもいいからなんか考えておけよな。」


そう言ってスピネルの頭をなでてやりながら脳内で今聞いた意見を参考に設計図を作成する。

設計図など書いたことはないが創造の派生スキル想像補助で抽象的なイメージでもきちんと具現化してくれる。

ほんと、スキル様様だね。


「取りえずこれくらいあれば新しい分も足りるだろ。でもそろそろエルからもらった魔鋼が少なくなってきたな。どっかで売ってるのか?」


リュースティアは誰に言うでもなくそんなこをつぶやくとストレージから木材などの資材を取り出していった。

あくまで新しく作る部分のものだけなのでその量は決して多くはない。

ちなみに他のメンバーは相変わらず結界内で仲良くおしゃべりに興じております。

そしてバカと馬はどこかに行きましたとさ。

お前らもうこの家に住まわせないぞ?


「てかまたこんなふうに全壊されても困るし強度上げておくか。【家創造ハウスクリエイト】・【硬化ハーディング】・」


リュースティアが言い終わと同時に周囲ア青い光で包まれる。

そして立て続けにかけた硬化の魔法。

これは雷の硬化という性質を使って資材の強度を上げたのだ。

これで風太がいくら暴れようとも吹き飛ぶことはないはずだ。


「うん、いい感じだ。スピネル、どうだ?」


「・・・ぐっじょぶ?」


予想外のスピネルの言葉にがっくりとうなだれるリュースティア。

どこで覚えたんだそんな言葉、、、。


そして青い閃光がほとばしったにも関わらず、いっこうに気付かない3人。

これが噂に聞くガールズトークとかいうやつか。

恐ろしい。

というかそろそろ俺は部屋に戻りたいんだがさすがになにも言わないで去ると後あと面倒なことになりそうなので一応声をかけてからにしよう。

それもそれでめんどくさいんだけどな。




結局リュースティアが3人に部屋に引き上げることを伝えたのは1時間たってからだった。

なんだかんだで言い出す勇気が持てず、夜食を作ってそれをスピネルと一緒に食べていた。

お腹いっぱいになったら眠くなったのかスピネルは早々に部屋に引き上げてしまった。

3人は相変わらず話に夢中だ。

さすがにそろそろ部屋に戻りたい。

リュースティアは意を決して3人の周囲にかけた結界を解き、声をかける。


「楽しそうなところ悪いけど、俺そろそろ部屋に戻るけどいいか?」


「あれ、リュースティアさんいたんですか?」


「リュースティア、そんなところでなにしてるの?」


うっ、ぐさ。

双子からの容赦ない攻撃に俺のHPはすごい勢いで減っている。

これはまずい、早々に戦線離脱せねば!


「3人とも風邪ひかないうちに家に上がれよ?じゃあまた明日。」


双子の言葉には一切触れず、気丈に振舞う。

そうだ、俺は大人なんだから、こんなことで取り乱すわけないのだ。


「部屋に戻るって、まだ修理してないじゃない。リュースティアさんってもしかしてバカなの?」


と、ルノティーナが一言。


はい!

こいつ殺します!

えっ、大人?

何の事でしょうか?


「馬鹿はお前だこの大馬鹿!少しは周りを見てから物を言え。」


俺は基本的に女の子のには優しいはずなんだけどなぁ。

うん、こいつは別だ。

エルの妹だし、それにバカだし。;


「えっ、いつの間に⁉っていうか私に見せてくれるっていったじゃない。」


周囲を見渡し、ようやく家の修繕が終わっていることに気が付いたみたいだ。

リズたちはとっくに気づいてるって言うのに間抜けな奴め。

まぁリズたちの俺を見る目が若干冷たいけど、、、、。

ていうかそもそもルノティーナに見せる約束などしていない。


「誰も見せるなんて言ってないだろ。さ、家の修理も終わったしもう帰れ。」


「嫌よ。まだスキル見てないもの。それにもうすっかり夜だし。こんな夜道に女の子を放り出す気?」


いや、お前らが時間も気にせず勝手に盛り上がっただけだろ。

それに女の子って言うけどSランクの冒険者を襲える奴がいたら見てみたいもんだ。

そう、実はこの女、Sランク冒険者だったりする。

ランク的にはエルランドの上だ。

実力はエルの方が上みたいだけどランクは単純な力で決まるものじゃないのか?

まあそこらへんは今度ラニアさんにでも聞こう。


「Sランク冒険者がなに言ってんだ?さっさと宿に帰れ。」


「宿?取ってないわよ。」


は?

宿取ってないってどういう事?

最初からうちに泊るつもりだった、、、、みたいではなさそうだな。

さすがに野宿させるのも忍びないしなぁ。


「はぁ、仕方ないな。今晩だけだぞ?」


「やった!リュースティアさんってなんだかんだでやさしいのね。お兄ちゃんみたい。えへへ、じゃあ早速部屋に行きましょうか!まだまだ話したい事たくさんあるし。」


おい、調子に乗るなよ?

てかまだ話すことあんのか。

ガールズトーク恐るべし、、、、。


「もういいよ、勝手にしてくれ。じゃあリズ、あとは頼んだぞ。」


なんだか頭痛がしてきたよ。

こいつと話していると疲れる。


「はい、任せてください。じゃあゆっくり休んでくださいね。」


「ああ、おやすみ。明日は2人とも遅番で良いから好きなだけ夜更かししてくれ。」


俺は基本的に女の子には優しいのだ。


「うふふ、これで私も居候の仲間入りね。」


とか聞こえてきたがさせないよ?

リズとシズ、それにスピネルだけで十分だ。

これ以上、しかもこんなめんどくさいやつ絶対にいらない。

だから頼む、今日だけにしてくれ。



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