第46話 魔族?それはピ〇〇ュ〇です。
「魔族なの!」
ふざけているとしか思えない魔族の容姿に戸惑っていたリュースティアだがシルフの一言で我に返る。
やっぱりあれが魔族なのか、、、。
黄色いウサギの着ぐるみ?
角が生えていたり爪が長かったりと微妙な違いはあるがあれは紛れもなく前の世界にいたピ○○ュ〇だ。
何となく魔族と言うか神様とか言う人達の悪ふざけ意図を感じる。
「えーっと。初めまして魔族さん。悪いけどここはウンディーネの家だから帰ってくれないか?」
会話ができるっぽいから意思の疎通も可能なはずだ。
正直戦うとかめんどくさいからできれば話し合いで解決したいと思うリュースティア。
いくら慣れたとは言っても戦闘は苦手だ。
「ほう、オモシロイことを言うな。ニンゲン。私がなにもしないまま帰るとオモッタカ?」
魔族が話しているのもおそらく共通語だから意味は分かるんだけど変な訛りがあるせいか聞き取りずらい。
現に精霊の二人には訛りのせいか魔族の言っている事をほとんど理解できないみたいだ。
アレ、おかしいな?
「いや、そこは話し合いで何とかならないか?できる範囲で交渉には応じるし。」
「ナント!私たちの言葉を理解できるものがイルとは。会話が成立するのは実にナンネン振りか。お前はオモシロイ。」
ん?
もしかして魔族が話していたのは共通語じゃなかったのか?
なんか魔族と話がかみ合っていない気がする。
なので何となくログを確認してみたら創造特権の派生スキル
そのおかげで魔族の言語も理解できているらしい。
つまりシルフたちがおかしいんじゃなくておかしいのはリュースティアの方だった。
「まあそれは置いといて、言葉が通じてるならそのまま帰ってくれ。」
魔族がなかなか重い腰を上げそうになかったので後半の言葉には一緒に威圧スキルを使う。
「オモシロイ。だが答えは否。私はコノ源泉を支配しなければナラナイ。新たな魔王、新たなハメツの為にもな。」
普段ならそれなりに効果のある威圧も魔族相手だとあまり効果は得られな見たいだ。
まあ力を抑えて常人でも死なない程度の威圧なんだけどさ。
「見過ごせないような物騒ワード出すなよ。ってか支配しないとってまだ支配できてないのか?」
リュースティアは引っ掛かる。
今この源泉には支配者はいないはずだ。
ならば誰でも簡単に支配者になれそうなのにこの魔族がいつまでも手こずっている理由がわからない。
「カンタンな事。支配するには前の支配者を屈服させ
ピ○○ュ〇魔族は言うが早いが縮地で一気にウンディーネまでの間合いを詰めるとそのまま短い腕の先から伸びた鋭い爪を振り下ろす。
一瞬の出来事に誰もが最悪の事態を想像してしまう。
そしてウンディーネ自身も自らに振り下ろされる凶器に目を瞑る事しかできなかった。
*
「おい、いくらなんでも目の前でスプラッタはやめろよ。」
そんな事を言うのはピ○○ュ〇魔族の前方数メートルの位置にいるリュースティアだ。
腕には目を瞑たままのウンディーネを抱えている。
誰一人として反応できなかったピ○○ュ〇魔族の攻撃にリュースティアは反応し、なおかつそれを上回る速度でウンディーネを助け出したのだ。
使用したスキルは縮地の派生スキル、瞬雷だ。
文字のごとく雷のように早く移動することが可能なのだが機動力にかけるので実践では使い方が難しい。
「な、なんだと⁉ニンゲンごときが私のスピードを上回るだと?オモシロイ。お主を倒して次代の魔王にするのも一興。」
待て待て待て!
なんだ次代の魔王って!
そういうヤバそうなのは勇者に話してくれ。
「改めて名乗ろう、ニンゲン!私の名はカイザ、魔族九鬼門の一席に腰を据える者である。お主も名を名乗れ、ニンゲン!」
なに、魔族九鬼門って?
また物騒ワード出ましたよ。
しかも戦いの前に名乗りを上げるとか恥ずっ!
いや恥ずかしいっていうよりむしろイタイ奴だよ。
むりむり、絶対無理。
なんでそんな意気揚々と名乗ってんの?
厨二病ですか?
「えっと、はい。ゴチソウサマデス。」
場の空気に居たたまれなくなりわけのわからない事を言ってしまった。
まあしょうがないよね。
いきなりはちょっと、、、ね?
「ゴチソウサマデスか。では行くぞゴチソウサマデス!」
うぉい!
名前になっちゃったよ、ゴチソウサマデス。
でも今更違うとも言いずらいし別に今回はいっか。
どうせ二度と会う事もないだろうしね。
「【風壁】」
正面から突っ込んでくるカイザが接近するタイミングで魔法を放つ。
そして壁に衝突するのを避け、壁の手前で静止したところを無数の雷魔法で狙い撃ちにする。
「南無阿弥陀仏っと。」
さすがにアレだけの攻撃を受けて無事なはずがない。
信仰心など欠片もないが適当に念仏を唱える。
だが念仏を唱え終わる前にリュースティアの危機感知に反応がある。
それも致死レベルのものだ。
嫌な予感がする。
「なんだ⁉っつ、二人とも安全なとこに転移してくれ!この感じだとかばいきれない。」
「はいなの!リュー、頑張るの!」
「何を言うておる⁉お主では勝てぬと言う事がわからぬか!お主が強く稀なスキルをもっていようがレベル1に何ができると言うのじゃ!」
リュースティアの実力を身をもって知っているシルフは素直に指示に従ってくれるがウンディーネはそうはいかないみたいだ。
おそらく精霊視を使ってカイザのレベルやスキル構成でも見たのだろう。
確かにレベル1ではどう頑張ってもレベル89の魔族に勝てるはずがない。
だがなぜかリュースティアは勝てないと絶望する事もレベル差に恐怖することもなかった。
むしろ勝てるだろ、とすら思っていた。
「ウンディーネ、心配すんな。すぐにお前の家取り戻してやるからシルフと一緒に行ってくれ。シルフ、無理やりでも何でもいいからウンディーネと一緒に行ってくれ。そろそろ奴が来るぞ。」
「わかったの!ここにいたらリューの邪魔になるの。ディーネはこっちなの。」
ウンディーネが少し抵抗するようなそぶりを見せていたがシルフが無理やり転移をしたみたいだ。
よかった。
これで守りはいらない。
*
「ずいぶん簡単に2人を見逃したな。」
背後からの攻撃を事前に張っておいた風の防壁魔法がはじく。
エルですらこの防壁を一回の攻撃では破れなかったのに、カイザはいとも簡単に防壁を破壊した。
単純な攻撃力ならエルよりも上、それとも何か仕掛けがあるか、だな。
余裕こいてたら一撃もらいそうだ。
まあそんな事にはならないだろうけどさ。
「私の興味はもうゴチソウサマデスだけだからな。この戦いに部外者はいらないだろう。」
無事に2人を避難できたのは良いんだけど、ゴチソウサマデス、かぁ、、、。
なんか気が抜けるから戦闘中は呼ばないでほしい。
それよりも、カイザが持っているスキルが気になる。
彼の持つスキルは強制支配、誘惑、魔法無効化、範囲魔法、憑依、その他にも対人系や耐性系のスキルの計13個のスキルを持っていた。
リュースティアの持つスキルと比べれば少ないがこの世界の基準からすれば十分驚かれるレベルだと思う。
強制支配とか誘惑、憑依は何となくわかるけど魔法無効化と範囲魔法ってなんだ?
文字通りなら魔法は聞かないってことか?
物は試しだ、魔法で攻撃したらわかるだろ。
「【
リュースティアは込める魔力の量を変えて魔法の矢を発動する。
そしてそれをタイミングよく二本ずつ放つ。
「最上級の雷魔法まで使えるとはますますオモシロイ。だが相手が悪かったな。私に魔法攻撃はきかん。」
余裕そうな表情を浮かべながら飛んでくる矢を一本ずつ処理していくカイザ。
彼の言う通り魔法攻撃はカイザの半径2メートルに入ると自動で消滅してしまう。
だがカイザの死角から放たれた二本目の矢はオートで消滅することはなく目視することで消滅させている。
ならば!
そう思って、速度を変えたり、先の矢の死角に隠したりと様々な方法を試したが全て消されてしまった。
おそらく感知系の魔法も併用しているのだろう。
「うわーこれまためんどくさそうなやつだ。こっちに来てから運は悪くないんだけど貧乏くじ引いてるきがする、、、、、。」
「そろそろ諦めたらどうだ?ゴチソウサマデスとて魔力は無限ではなかろう。」
優勢なはずなのになぜかしんどそうなカイザがそんな事を言ってくる。
親切心か知らないが魔力の心配をしてくれたので一応、魔力残量を確認する。
・ERROR・ERROR・ERROR・ERROR・ERROR・ERROR・
ですよねー。
相変わらずステータスチェックはできないみたいだ。
でも感覚的な判断だとまだ半分も使ってない気がする。
まあ仮に魔力切れを起こしてもシルフを呼んで魔力の供給をしてもらえばいいだけなので大した問題ではない。
俺の場合、魔力がなくても動けなくなるわけじゃないしね。
「心配してくれなくてもまだ余裕だな。ってことで第二ラウンドいくか。【
カイザに比べてまだまだ余裕のあるリュースティアは軽い調子で再び無詠唱で最上級魔法を行使する。
しかも最上級の合わせ技まで使って、だ。
リュースティアは平然とやっているが魔法の合わせ技など新呪文開発と同じくらい高度なものだ。
故に、そんなことをできる者は魔法に特化したエルフか精霊、召喚された勇者くらいだろう。
「なんだ、その魔法は⁉くそ、範囲対象外だと?ならばっ!」
なるほど。
範囲魔法で範囲を指定し、そこの範囲内であれば魔法が無力化できるってことか。
で、範囲魔法の範囲であれば感知もできるって?
いいなそのスキル。
カイザを範囲魔法の範囲ごと覆い、さっきよりも本数と速度を上げた矢で攻撃をしている。
魔法での戦いだと見てるだけだから正直言って暇だ。
まあ接近戦みたいな怖さはないからいいけどね。
「なんの、これしき!ぐはっ、まだ、うぐっ。 うぎゃーーーーー!」
瘴気に侵された祠にピ○○ュ〇魔族の絶叫が響き渡る。
それをBGMになにか考え事をしているリュースティアはどこか楽しそうだった。
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